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変わるものと変わらぬもの都市型音楽フェスの出自〜MUSIC CITY TENJINが歩んだ17年

変わるものと変わらぬもの都市型音楽フェスの出自〜MUSIC CITY TENJINが歩んだ17年

MUSIC CITY TENJIN(以下MCT)は天神のまちの活性化と福岡の音楽的環境の向上を目指して2002年からスタートした九州最大級の都市型音楽フェス。

毎年10万人以上を動員し、九州一の商業集積地・福岡天神エリア一帯をまるごとフェス会場にするイベントである。


博多どんたくに代表されるように、大勢の人前で芸を披露することに寛容なまち福岡。ご存知の通り芸能人や音楽家などを数多く輩出しているまさに「芸どころ」である。その「土地柄」をアドバンテージとして、音楽でまちを盛り上げられないかとある日ふと思った。時代は21世紀に突入し、数年前からフジロックなど日本にフェスカルチャーの萌芽がちらほらとしてきた頃。それを山の中や海辺などではなく、買い物などで日頃何気に利用しているまち中でやったら非日常の空間ができて面白いのではないか。真夏の夜に行われるNYのセントラル・パークのフリーコンサートなど、海外の都市は公園や広場など公共空間の使い方が実にうまい。まさに市民の財産を共有している欧米の事例が、その時にいくつか頭の中にあったのは確かだ。


そこから企画書を書きあげて上司に相談、それを持ってイベンターやレコード会社などの音楽関係者に見せたら皆一様に「おもしろい!」と言う。ラジオ局や新聞社そして行政などトントン拍子に協力体制が出来上がり、準備もそこそこ、あれよあれよと言う間になんとか開催にこぎつけた。

そして2002年の9月28日・29日に、第1回目のミュージックシティ天神が行われた。天神のまちのあちらこちら、ライブハウスを貸り切っての有料ライブや、公園や広場など8箇所に仮設のステージを設けてのフリーライブなど同時多発的にライブをやったのは良いけれど、まち中でどれくらいの音を出したらどうなるのか、誰もやったことがないがないので分からず、まさに手探り状態でやったしまったから、後ににとんでもないことになる。まさに知らない者の強みであり、知らないからやれた。いや知っていたらやれなかっただろう…。




初回のMCTのなかでも特に知られているのがNUMBER GIRLの福岡ラストとなった警固公園でのフリーライブ。旧知だったNUMBER GIRL向井秀徳氏が出演を快諾してくれたのはいいけれど、開催まで1ヶ月を切ったある日、NUMBER GIRLは解散を突然発表、その日から事務局の電話は鳴りっぱなしとなる。「何時から並べるのか?」「ケイコ公園?の入口はどこか?」「整理券は配らないの?」など、全国津々浦々からの問い合わせに追われる日々。さて迎えた当日、とにかく地面が全く見えない、まさに立錐の余地も無い状態。翌日の新聞を改めて調べたら「九州だけでなく、東京などからやってきたファンら4500人が楽しんだ」とある。(あの公園に4500人…)彼らの鬼気迫るパフォーマンスは素晴らしく、解散を決めているバンドと興奮したファンが囲む異様な空間が独特の緊張感を醸し出していたと記憶している。だがライブへの賞賛と引き換えに残ったものはゴミの山と荒れた花壇。しばらくはクレームの事後処理に追われる日々が続く。謝罪に次ぐ謝罪でなんとか奇跡的に許していただけたのは、それこそこのまちが持っている芸事への寛容さという土地柄ゆえか。やはり芸能の神様でもある天神様に祝福されている街なのだ。



MCTが17年も続けてこられたのは、趣旨に賛同していただいた会場周辺の天神の方々や協賛していた方々、プロアマ問わない多くの出演者や何より会場に足を運んでいただ方々の賜物に他ならない。この17年間で音楽業界を取り巻く環境は大きく変化し、まち中でのフリーライブ自体もそう珍しくなくなった。福岡・天神ではまちの機能を大きく更新する「天神ビッグバン」がスタートし、まちそのものがきくまれ変わろうとしている。 MCTも単にライブだけでなく、他の企業・団体やコミュニティなどと連携しながら「楽で未来の天神をより豊かにする」ことを指し、まれ変わりつつありる。18回目の今年はスガシカオなどが登場する福岡市役所前のメインステージでをはじめとして、天神エリアの11ヶ所にフリーライブのステージができるほか、ソラリアプラザゼファではスペースシャワーによるライブ+ワークショップ+マルシェ、天神コア屋上では松隈ケンタ氏のプロデュースイベントや坂見 誠二氏(BE BOP CREW)らによるダンスイベント、また警固公園ではどもたちが楽を創ることができるグルーヴノーツによるキッズプログラムなど、単にライブを観るだけではない天神のまち中で様々な楽体験ができるイベントが目白押しである。またMCTは新しい音楽に出会うきっかとなる都市型の音楽見本市としての側面も持つ。今年もMCTが自信を持っておススメする期待のニューカマーが数多く登場。数年前に出演したあいみょんやOfficial髭男dismに続くネクストブレイクを狙う。



今年NUMBER GIRLが17年ぶりに復活した。そのニュースが流れた日、NUMBER GIRLはMCTに出るべきだと多くの人から連絡をもらい、あの警固公園でのライブが伝説になっていることを改めて認識させられた。たまたま先日のCIRCLE'19の楽屋で、久しぶりに向井氏と会いその事を本人に伝えた。しばらくNUMBER GIRLは続けると言っていたので、そのうち彼らがMCTに帰ってきてくれる日が来るかもしれない。その日を迎えるためにも、MCTはまちと共に変わり続けるだろう。


MUSIC CITY TENJIN 2019

福岡・天神の中心部で毎年9月に 行われる九州最大級の音楽イベント

【 MUSIC CITY TENJIN 】 2019年は9月28日(土)・29日(日)の2日間開催。

全会場入場無料/雨天決行/荒天中止

【公式サイト】https://www.musiccitytenjin.com


ミュージックシティ天神運営委員会 委員長 

松尾伸也


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