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祝!第77回ベネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)獲得!『スパイの妻』栗田善太郎レビュー

祝!第77回ベネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)獲得!『スパイの妻』栗田善太郎レビュー

今年のベネチア国際映画祭で見事監督賞を獲得した黒沢清監督作品『スパイの妻』

ベネチアの監督賞は北野武監督の座頭市以来だそうで、

一報を聞いた時は、97年の金獅子賞『HANA-BI』と混同してしまった。

黒沢清監督はそもそも海外評価も高い方なので、カンヌなどでは受賞歴もあるが、

初のコンペティション部門選出から監督賞はやはり凄いと言わざるを得ない。

ワタシ的には『アカルイミライ』(02)がTHE BACK HORNの主題歌「未来」と共に印象深い。


オリジナル脚本で初の歴史モノとなった今作『スパイの妻』は

タイトルとは裏腹にアクションも派手な演出もない。

太平洋戦争前夜、1940年(昭和15年)の神戸はまだ豊かで美しく、黒澤監督自身の出身地への想いも描かれている。

映画は美しい風景・建物・衣装・言葉で彩られ、

登場する主人公、蒼井優演じる福原聡子と夫、高橋一生演じる福原優作の二人の芝居を中心に進む。

脇を他作などで印象がある役者をほとんど配さず、二人の芝居に集中させる演出。

その中でも東出昌大の特高警察役と笹野高史は素晴らしきアクセントになっている。


兎にも角にも映画に出演する毎に磨きがかかるばかりの、当代きっての女優になった蒼井優の芝居であろう。

ワタシはどうしても声に意識が行って芝居を見てしまうのだが、リズム・響き・強弱・表現とすべてが見事。

引っ張られるのではなく、クールにすすめる高橋一生とのやり取りは観てて飽きない。

音でいけば、ペトロールズ長岡亮介が担当した音楽も見事。

初の映画音楽ということだが、作品の世界観に沿った内容に好感が持てた。


監督自身の日本映画へのオマージュ、山中貞雄や溝口健二といった名匠の引用。

奇しくも溝口健二は1952年に同じベネチアで監督賞を受賞している。

このこともベネチアの審査員にはうけたのかもしれないと勘ぐってしまった。


「スパイではなくコスモポリタンである」と言った優作とそれを受け入れる聡子。

いつの時代にも必要な夫婦であろう。


【STORY】

太平洋戦争前夜。時代の嵐が二人の運命を変えていく━━ 

1940年。満州で偶然、恐ろしい国家機密を知ってしまった優作は、正義のため、事の顛末を世に知らしめようとする。

聡子は反逆者と疑われる夫を信じ、スパイの妻と罵られようとも、その身が破滅することも厭わず、ただ愛する夫とともに生きることを心に誓う。

太平洋戦争開戦間近の日本で、夫婦の運命は時代の荒波に飲まれていく……


『スパイの妻』

蒼井優 高橋一生/東出昌大 坂東龍汰 恒松祐里 笹野高史

監督:黒沢清 脚本:濱口竜介 野原位 黒沢清

音楽:長岡亮介 

配給:ビターズ・エンド/2020/日本/115 分/©2020 NHK, NEP, Incline, C&I 

10月16日(金)KBCシネマ他全国ロードショー

映画 スパイの妻 公式WEB   

栗田 善太郎
栗田 善太郎

栗田 善太郎 ZENTARO KURITA

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1971年福岡市生まれ。大学時代からラジオ制作に携わる。
2015年 cross fm特別番組『HAPPY HOUSE 〜 The Family's Starting Point〜』で民間放送連盟賞 第11回日本放送文化大賞グランプリ受賞
2018年 CROSS FM特別番組『Let the Good Times Roll!!』が平成30年日本民間放送連盟賞 ラジオエンターテインメント番組部門で、最優秀賞を獲得。
現在はCROSS FM URBAN DUSK、CROSS FM MUSIC AMP、NHK 六本松サテライトを担当。
BIGMOUTH WEB MAGAZINE編集長
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