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映画『長いお別れ』を観て

映画『長いお別れ』を観て

C2019『長いお別れ』製作委員会 (C)中島京子/文藝春秋


2016年の映画『湯を沸かすほどの熱い愛』('16)の中野量太監督の最新作と聞けば、

観たいと思って当然だろう。

認知症を患った父を山﨑努が演じ、その妻を松原智恵子、長女を竹内結子、次女を蒼井優という

贅沢なキャストである。


山﨑努は私の中では伊丹作品『お葬式』の時の年齢が48歳、

脂が乗りきった男を『たんぽぽ』『マルサの女』でも演じていたイメージが強い。

その山﨑努が70代の認知症患者で少しずつ記憶を失う数年間を見事に演じている。

やはり盛りを知っているからこそ、老いる芝居に見入ってしまうのだ。


主演の蒼井優は白石和彌監督作品『彼女がその名を知らない鳥たち』('17)が本当に見事だった。

今作では30代で仕事も恋もあまり上手く行かない30代の女性を演じているのだが、

そんなありきたりな設定などあまり関係なく、とても良い。


中野量太監督の『湯を沸かすほどの熱い愛』でも

宮沢りえと杉咲花に引っ張られたように、今作でもこの2人が物語を作る。

それを周りが見事に支えている事は言うまでもない。


主題歌を優河が描き下ろした『めぐる』がまた素晴しい。

石橋凌・原田美枝子夫妻の長女である事はご存知の方もいらっしゃるだろうが、

次女石橋静河と共に勝手に福岡から熱く応援してしまいます。


劇中、重要なペーソスとして登場する夏目漱石の『こころ』

漱石47歳の作品である。


48歳になった私はそろそろ、『お葬式』と『こころ』を見直すタイミングなのかもしれない。

伊丹十三は51歳で『お葬式』を撮ったのか、、


『たんぽぽ』を観たことがある方には嬉しいネタが今作で見つけられるでしょう。


『長いお別れ』

◆公開日:5月31日(金)

◆劇場:T・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマ福岡ももち、中洲大洋ほか全国にて


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栗田 善太郎
栗田 善太郎

栗田 善太郎 ZENTARO KURITA

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1971年福岡市生まれ。大学時代からラジオ制作に携わる。
2015年 cross fm特別番組『HAPPY HOUSE 〜 The Family's Starting Point〜』で民間放送連盟賞 第11回日本放送文化大賞グランプリ受賞
2018年 CROSS FM特別番組『Let the Good Times Roll!!』が平成30年日本民間放送連盟賞 ラジオエンターテインメント番組部門で、最優秀賞を獲得。
現在はCROSS FM URBAN DUSK、CROSS FM MUSIC AMP、NHK TV 六本松サテライトを担当。
BIGMOUTH WEB MAGAZINE編集長
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