Bigmouth WEB MAGAZINE

文化CULTURE

わたしの偏愛シネマ Vol.1

わたしの偏愛シネマ Vol.1

(C) 2017 Universal Studios. All Rights Reserved.

「本コラムでは長年、九州TSUTAYAの本部で映画に携わってきたバイヤーが独断と偏愛で、今最もプッシュしたい劇場公開作品やDVDをご紹介します!」


第1回目は昨年
10月に劇場公開されました、『ピッチ・パーフェクト ラストステージ』です。

本作は2015年に1作目が公開されまして、同じ年に『2』が立て続けに公開となった、シリーズの3作目にして完結編となります。お話は、大学のガールズアカペラグループ、「バーデン・ベラーズ」のメンバーである、ベッカという主人公(アナ・ケンドリック)を通じて、ベラーズの仲間たちとの成長や活躍などをコミカルに描いたシリーズです。

まず1では、大学に入学したベッカがとあるきっかけから消極的にアカペラグループのベラーズに入部したところからはじまり、葛藤しながらも、魅力的な仲間たちとともに大学内のアカペラ大会で活躍する様を描いています。続編の2では、ベラーズたちはアカペラの世界大会に参戦しまして、そこで世界中の猛者たちと戦っていく様を描いています。このように、ベッカとベラーズの活躍はシリーズを追うごとにステージが上がっていくんですが、完結編の本作、3ではどうかというと、ベラーズのメンバーは大学を卒業して、みな社会人になっていまして、冒頭はそこでの理想と現実に苦しんでいる様が出てくるんですね。大学のころの栄光と比較するとより残酷な現実がそこにはあるわけですが、彼女たちは同窓会で再会しまして、そこで世界的に有名なDJのツアーでパフォーマンスできる権利をゲットすべく、ベラーズを再結成する、という展開になります。これ、下手すると、過去の栄光にすがった痛々しい大人たち、という構図になりがちで、正直こんな姿は観たくない!という気持ちもあったんですが、そこはさすがのシリーズ、ここから見事にモードが切り替わっていくんですね。決して過去にとらわれるのではなく、現実を見据えながら、それでも自分たちの好きなことや、大切にすべきことは尊重して前に進むべきだよね、という、とても大人で、かつ偽善的でない最良な展開が描かれています。

このシリーズは1,2ともに、クライマックスのベラーズのステージが「そう来たか!」という意外性をもったステージ演出で、物語の感動を最大化してくれるんですが、3作目の本作でも、ラストのステージはほんとうに感動的!そこで歌われる楽曲の歌詞が、ベッカをはじめ登場人物たちのセリフを代弁するかたちになっていまして、1,2のラスト同様、涙を搾り取られます

そんな本作で完結となるシリーズですが、3作通して洋楽の新旧問わずたくさんの名曲がアカペラで登場する点が見どころのひとつなんですが、登場する楽曲のミュージシャンの例を挙げますと、ブルーノ・マーズやリアーナ、テイラー・スウィフト、マイリー・サイラスといった近年の大ヒット曲から、ブリトニー・スピアーズや、デスチャ、ローリン・ヒル、ハンソンといった90’sの楽曲、そしてシカゴやマドンナ、シュープリームスなどのベテランから往年の名曲までしっかりカバーしまして、はてはピットブルやフロー・ライダーまで、ジャンル不問の本当に幅の広い楽曲が歌われています。ちなみに1では映画『ブレックファスト・クラブ』の名曲Simple Mindsの「Don’t You」が素晴らしい使い方をされていたり、今回はジョージ・マイケルの某楽曲が絶妙なタイミングで登場したりと、洋楽好きの方はさらに楽しめること間違いなしです!

このような、アカペラで歌われる楽曲の魅力に加えて、ベラーズの個性豊かなメンバーたちのやり取りや成長を楽しむというのもシリーズを通した魅力の一つでして、この3作目も、おなじみのベラーズのメンバーがいきいきと活躍する様を楽しめるわけですが、彼女たちのキャスティングも例えば、ふとっちょエイミーという役を演じているのがレベル・ウィルソンでして、彼女は渡辺直美さん的なコメディエンヌでして、本作でも体型を活かした爆笑シーンや、女性版ジャック・ブラックとも言えるような顔芸で盛り上げてくれます。また、『2』からベラーズに参加した後輩キャラ、エミリーを演じているのはヘイリー・スタインフェルドでして、明日から公開する『バンブルビー』の主演でもありますが、彼女自身の女優として、そしてミュージシャンとしての魅力をフルに発揮しています。

楽曲、キャラともに素晴らしい、シリーズものとして理想的な完結を迎えた本作、ぜひシリーズ一気にご覧いただきたい傑作です!


Artwork (C) 2019 Universal Studios. All Rights Reserved.



今須 勝地
今須 勝地

今須 勝地 KATSUZI IMASU

1982年千葉県生まれ。
映画の年間鑑賞本数400本以上。通算では5,000本弱の映画好きおじさん。
2006年カルチュア・コンビニエンス・クラブ入社。
2010年より九州のTSUTAYA本部にて
映像レンタルのマーチャンダイザーとして商品企画を担当。
九州ウォーカーや九州各県のタウン誌、フリーペーパーなどで映画の連載担当を経て、
現在は毎週木曜、cross fm『URBAN DUSK』内にてオススメ映画をレコメンド中。
2019年からカルチュア・パブリッシャーズにて洋画の買い付け、配給を担当。
好きなミュージシャンは岡村靖幸、RHYMESTER。