文化CULTURE

その映画、星いくつ? 第36回 2026年1月 『ウォーフェア 戦地最前線』『おくびょう鳥が歌うほうへ』

「月に2本」という限られた枠のなかで、いい映画を見極め劇場に足を運び、観た作品をレヴューするという企画。


新年一発目ということで、20262月終盤以降に公開される注目作を集めてみました。


⚫︎ レンタル・ファミリー 2026227日(金)

似たようなタイトルの日本映画が昨年公開されたけど、こちらはブレンダン・フレイザー主演のアメリカ映画。舞台が日本というのがおもしろい。共演には、おなじみの日本俳優が名を連ねているけど、なかでも柄本明の演技はブレンダンも絶賛。


⚫︎ ウィキッド 永遠の約束 202636日(金)

多様性を力強く肯定した大ヒット・ミュージカル映画の続編。前作が公開された2024年よりも、明らかに世界は悪くなっている。そんな2026年にどんなメッセージを投げかけてくるんだろう。アメリカでは昨年11月に公開され、前作以上のヒットとなっている。


⚫︎ しあわせな選択 202636日(金)

韓国の鬼才、パク・チャヌク監督がイ・ビョンホンを主演に迎え制作したブラック・コメディ。突然リストラされ、追い詰められたサラリーマンが、新たな職を手に入れるために大胆な行動(たぶん殺人)に訴える。数々の国際映画祭でも高く評価された一作。


⚫︎ マーティ・シュプリーム 世界をつかめ 2026313日(金)

ティモシー・シャラメ主演のコメディ(?)。彼が演じるのは、世界制覇を目指す卓球選手。実在した人物にインスパイアされたらしいけど、アメリカで卓球に人生を賭けてる時点でヤバい感じ。主人公の友人役でタイラー・ザ・クリエイターも出演!!



なぜか映画とNBAがタイアップしたコマーシャル。


⚫︎ プロジェクト・ヘイル・メアリー 2026320日(金)

ベストセラーSF小説の映画化。原作は図書館で借りて読んだんですが、スケールがデカ過ぎて、ちゃんと映像化できるのか若干の不安が。キモは、ライアン・ゴズリング演じる主人公が宇宙で遭遇する宇宙人の造形かな。もし観るとしたらIMAXでしょう。


⚫︎ ザ・ブライド! 202643日(金)

昨年、ギルモア・デル・トロ監督が映画化した『フランケンシュタイン』(未見)が絶賛されたけど、今作は『フランケンシュタインの花嫁』をモチーフにした一作。予告編を観た限りでは、プロットも映像もぶっ飛んでいて見応えありそう。


⚫︎ ハムネット 2026410日(金)

83回ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門作品賞を獲得したクロエ・ジャオ監督作。シェイクスピアが『ハムレット』を執筆するに至る出来事を描く。主人公はシェイクスピアの妻なのかな。ゴールデン・グローブ賞では、妻役のジェシー・バックリーが主演女優賞も受賞。


⚫︎ Michael マイケル 2026612日(金)

マイケル・ジャクソンの伝記映画は、『ボヘミアン・ラプソディ』を大ヒットに導いたGKフィルムズが制作。幼少期からのマイケルの半生を描くわけだけど、マイケル・ジャクソン財団が絡んでいるので、穏便な内容になりそう。『This Is It』の高揚感を超えられるか?


⚫︎ ゴジラ -0.0 2026113日(金)

山崎貴監督によるゴジラ第2弾。公開日とタイトル以外はまだ発表されていないけど、「-0.0」ってことは、1954年公開の第1作に準じたものになるのかな。前作でめっちゃ不自然な感じで生き残った典子(演:浜辺美波)は、きっと登場するでしょう。


以下は公開日未定だけど、日本公開が確定している作品。


⚫︎ Resurrection(狂野時代) 20265月公開予定

87回カンヌ国際映画祭で特別賞を受賞した中国映画。主演は傑作『少年の君』のイー・ヤンチェンシー(英語名:ジャクソン・イー)。人間が、不死と引き換えに夢を見る能力を放棄した未来が舞台というSF映画? かなり独特の世界観です。





本編は中国語なのかな。予告編を観ても、ストーリーはようわからん。


⚫︎ ヌーヴェルヴァーグ 20267月公開予定

リチャード・リンクレイター監督が、大傑作『勝手にしやがれ』撮影中のジャン=リュック・ゴダール監督を主役に据えて、当時のフランス映画界の熱気を再現する。白黒映画かつ全編フランス語と、監督としてはチャレンジングな作品だっだけど、評判は上々。


⚫︎ スーパーガール 2026年夏公開予定

2025年に公開されたジェームズ・ガン監督の『スーパーマン』はクリティカルな傑作だった。そのスピンアウト作品は、なんだかB級の香りが漂う。主人公はスーパーマンの従姉妹でZ世代の女性。監督はガンじゃないし、一抹の不安は拭いきれない。


Blue Moon』『The Secret Agent』といった、昨年、各国の映画祭で評判をとった作品は公開未定。スクリーンではかからない可能性もありますね。せつない。



1月の獲れ高】


では、新年最初のおさらいを。実はレオス・カラックス監督の『ポンヌフの恋人』4Kレストアも観たんだけど、リバイバル作品はノーカウントってことで。期待度と獲れ高は5点満点/ネタバレあり!


1本目

ウォーフェア 戦地最前線

公式サイト:https://a24jp.com/films/warfare/

20260117日(土)ユナイテッド・シネマズ キャナルシティ13

事前期待度 ★★★

獲れ高   ★★★★


ジョン・レノンのアルバム『イマジン』に「兵隊にはなりたくない」という辛気臭いナンバーが収録されている。





兵隊にはなりたくないんだよ、母ちゃん。オレ、死にたくないし


メインのリリックはこんな感じなんだけど、反戦歌というわけではなくて、その証拠に、金持ちにはなりたくないよ、母ちゃん。泣くのはまっぴらだ(意味不明)なんてフレーズも出てくる。


要は、「なんにもなりたくないんだよ~」というジョンのモラトリアムダメ男宣言なのでした。それはわかっちゃいるんだけど、今作を観ている間、何度もこの曲を思い出した。


背景には、アメリカが無理筋で始めたイラク戦争があるわけだけど、そんな国際情勢や個人のイデオロギーはすべて傍に置いておいて、素のまま作品と対峙するのが正解でしょう。


「交戦状態」なんていう無愛想なタイトルだけど、すごくパーソナルな映画だもの。アメリカ兵を肯定も否定もせず、レイ・メンドーサ監督と彼が属した部隊が実際に体験した「戦場」をそのままスクリーンで再現する。


で、「戦場」ってどんな感じ?


そんなの実際にそこに身を置かないとわからないんだけど、安全地帯にいる観客にも伝わってくるのは、間違いなく人間が毀損される場所であるということ。身体的にも、内面的にも。


弾が飛び交い、爆弾は炸裂し、肉体は破壊され、血が噴き出る。一瞬にして事態は暗転し、阿鼻叫喚に包まれる。助けは来ない。仲間は死にかけている。出口は見つからない。


これらは、レイ・メンドーサ監督たちが実際に戦場で遭遇した、実に「個人的な」体験だ。だから、「反戦」とか「反帝国主義」とか、もしくは「アメリカ万歳」とか、そんなメッセージは読み取れない。


メンドーサ監督は、ただ、「俺たちはこの苛酷な戦場にいた。そして、生き残った」としか述べていない。


だからこそのリアル。


なんでこんなキッツイ体験を映画にしようと思ったのか? エンドロールで、この戦闘で取り返しのつかない重傷を負った実際の人物が登場し、笑顔で彼を演じた俳優と握手している。PTSDに苛まれてもおかしくないのに。


鑑賞後にググったら監督のインタビュー記事が出てきた。これが非常に興味深かったので、おすすめ。彼が本当にパーソナルな理由からこの映画を制作したことがよくわかります。


鑑賞後、なんとも言えない虚しい気持ちになったけど、貴重な映画体験であったことは間違いない。





エンディングで流れたLow。あぁ、嫌な感じ。



2本目

おくびょう鳥が歌うほうへ

公式サイト:https://www.outrun2026.com

20260110日(土)KBCシネマ

事前期待度 ★★★

獲れ高   ★★★


昨年の暮れ、思い立ってある病院のアルコール外来を受診した。まぁ、薄々はわかっていたのだけど、晴れて「アルコール依存症」との診断が下りました。


初診ということもあって、それから2時間近く、アルコール依存症がどんな病気なのかを、お医者さんが説明してくれた。要は、コントロール障害ということ。アルコールを摂取したいという気持ちを脳がコントロールできない状態で、一旦、依存症になったら、快癒することはないと。


克服するには断酒しかない!・・・・・・と言われたんだけど、「まずは減酒に挑戦します!」と逃げて、初診は終了しました。


さて、本作を観に行こうと思ったきっかけは、主人公がアルコール依存症だからというわけではなかったんだけど、上記のような経緯があったので、興味津々だったわけです。


序盤では、主人公、ロナがアルコール依存症に陥った理由や、依存症がいかにロナを蝕み、周囲や自分自身を傷つけていく様を、丁寧に描く。ロナの登場シーンから強烈。アル中ビッチ。依存症はかなり重い。ワタクシごときでは太刀打ちできない重さ。


そこからロナのバックグラウンドか明かされるに連れ、彼女がアルコールによってなにを埋めようとしていたかが、明かされていく。

それを彼女の「弱さ」と切り捨てられないことも。


そんなこんなで、中盤以降は、失敗を乗り越えて依存症をなんとか克服しようとするロナを応援することに。あるパーティに顔を出そうとするロナに、思わず「そういうとこにはアルコールがあんじゃないの? 気をつけて!!」と思うなど。


ここに至る、ロナを演じるシアーシャ・ローナンの演技がすばらしい。ついアルコールを求めてしまう心の渇きのようなものが、表情から伝わる。断酒が続いていても、「いつか自分は飲むんじゃないか」と不安に駆られる。それを鎮めてくれるのは悲しいことにアルコールだけ。だからと言って口にすると、自身の尊厳をかなぐり捨てて踏みにじることになってしまう。


やっぱ、断酒厳しいわ。





ロナはクラブ好きなので、田舎に行ってもこんな感じの音楽ばっか聴いている。


ここまでは、ロナの苦闘に手に汗を握っていたわけだけど、問題は物語の終盤だ。結局のところ、ロナがいかにして依存症から抜け出したのかがよくわからないのだ。やけにダラダラと時間だけが過ぎていくけど、インパクトがある出来事は起こらない。それでも、ラストではなんだか清々しい表情を浮かべている。


こじつけると・・・・・・


「自然とダイレクトにつながることで神(らしきもの)の存在を感じ、生きる意欲が蘇った」


とか? 


母との関係も意味深。母は明らかに宗教に依存している。ロナは、ずっとそれに対し反発していたはずなのに、ラスト近く母と対話を交わした際には、宗教に対しての依存を吐露する母に拒否反応を示すことはない。


これって、結局は、依存の対象がアルコール(+元カレ)から、宗教に移行したってこと? 波打ち際でのロナのダンスから感じる万能感にも居心地の悪さを感じた。躁鬱ぽいし、映像はおもしろいけど唐突で説得力がない。


劇中、自身もアルコール依存症のおじさんが出てくる。彼曰く、この依存症は完全に治癒することはない。ロナの不自然にポジティヴな振る舞いは、この事実から目を逸らすためのようにも思える。


自分が依存症だと診断されたから、厳しめに観てしまうのかもしれないけど、モヤモヤが晴れないまま劇場をあとにしたのでした。


もう一点減点なのは邦題。ロナは「おくびょう鳥」に執着しているわけではない。たまたま、研究対象だっただけ。そして、ラストにたまたま邂逅するだけ。観る前はいいタイトルだと思ったけど、観客のミスリードを誘うという点でNGだと思う。



2月はこの映画に賭ける!】

公開日は福岡県基準です。


海外では昨年公開済みの話題作がチラホラ。 まずは1月に積み残した作品から。


⚫︎ ランニング・マン

原作はスティーヴン・キング(リチャード・バックマン名義)で、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の1987年作品『バトルランナー』も同じ話。今回の監督はエドガー・ライト、主演は話題作が続くグレン・パウエルなので間違いないはずなんだけど、評価はバラツキが。まぁ、バカ映画でしょうからね。130日(金)公開。





2月も1月に続いてちょっと地味目のラインナップ。まずは鬼才の新作。韓国映画のリメイクだそうです。


⚫︎ ブゴニア

ヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンの顔合わせはこれで5作目ですって。『哀れなるものたち』『憐れみの3章』と奇怪な映画が多いけど、今作は陰謀論者の話らしいので、おそらくまた独特の世界観が展開されるはず。213日(金)公開。


78回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作はスウェーデン映画。


⚫︎ センチメンタル・バリュー

父は映画監督、娘は俳優。二人の間には解決できないわだかまりが横たわっている。映画によって二人は和解するのかな? 父親役のステラン・スカルスガルドはゴールデン・グローブ賞で助演男優賞を獲得している。220日(金)公開。


次は予告編を観て知った作品なんだけど、結構おもしろそう。


⚫︎ クライム101

クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、バリー・コーガンら、なかなかに豪華な顔ぶれがそろったクライム・サスペンス。なんとなく韓国ノワールの趣があるけど、原作はアメリカ人の犯罪小説の巨匠によるものだそうです。213日(金)公開。


アクション映画で最近目立っているのがインド映画。


⚫︎ ANIMAL

「アニマル」と言えば、阪急ブレーブスで活躍したピッチャーだよね。引退後はたけし軍団に入るというワケのわからなさ。ちょうどこの映画の主人公のような風貌だったな。今作はインドで大ヒットしたヴァイオレンス。やはり上映時間3時間越えです。213日(金)公開。


アニマルはホラー・ムーヴィーでも大活躍。舞台はハワイの森の中。


⚫︎ おさるのベン

家族の一員であったはずのチンパンジー、ベンが突如として人間を襲い始める。で、タネ明かしをすると「狂犬病」のせいみたい。ここまでネタが割れているにもかかわらず、おもしろく作れたらたいしたものだけど、たぶん出来はC級。220日(金)公開。


アニマルつながりでドキュメンタリーを1本ご紹介。


⚫︎ パンダのすごい世界

日本国内でパンダが見られなくなるタイミングでぶつけてくるのがニクい。中国国内に点在するパンダ保護・研究センターに密着し撮影。「パンダ界のトップスター、ファーファ」も登場するそうな。でも、パンダって、そんなに見た目が違うんだっけ? 26日(金)公開。


音楽ドキュメンタリーも。こちらはエリック・クラプトンも移籍したスーパー・グループが主役。


⚫︎ クリーム フェアウェル・コンサート1968

こういうおじさん(ワタクシよりもやや上)向けの音楽映画が最近多いような。今作はクリームのラスト・ライヴのドキュメンタリー。個人的には好きでも嫌いでもないバンドなので、モチベーションは低め。26日(金)公開。


・・・・・・パンダとチンパンジーを入れてもまだ10本に満たない。2月はこれが限界か。



2月の2本★ 期待度は5点満点


決めました。あまり意外性はないけど。


最近娯楽作を観ていないので、ここらで一発!

ランニング・マン

期待度 ★★★1/2

Rotten Tomatoes 支持率:評論家 63% 観客 78%

20260130日(金)公開

2025年製作/アメリカ映画/上映時間133

監督:エドガー・ライト

出演: グレン・パウエル、ジョシュ・ブローリン ほか

公式サイト:https://the-runningman-movie.jp




顔ぶれからして、ケッタイだけど笑える映画でしょう

ブゴニア

期待度 ★★★★

Rotten Tomatoes 支持率:評論家 88% 観客 84%

20260213日(金)公開

2025年製作/アイルランド・イギリス・カナダ・韓国・アメリカ合作映画/上映時間118

監督:ヨルゴス・ランティモス

出演: エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス ほか

公式サイト:https://gaga.ne.jp/bugonia/




吉と出るか凶と出るかは、来月のお楽しみ!


第35回 2025年12月 『WEAPONS ウェポンズ』『みんなおしゃべり!』

長谷川 和芳 KAZUYOSHI HASEGAWA

1969年、福岡県のディープエリア筑豊生まれの編集者・ライター。414Factory代表。メインの業務は染織作家の家人の話し相手。