対談INTERVIEW
【好きを仕事にしたひと vol.2 haruka nakamura-後編-】
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「旅は終わり、10年間の集大成へ」
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-いま、この状況が必然である。
好きな音楽をやって、いっさい曲げずにそれでご飯を食べられるという状況がくる前に、最初の10年間、ただつくるだけで表に出さなかったのも必然だし、音楽を世に出した後の10年も必然で、僕はずっと「今」を見たかった。最初の10年は苦しかった。15歳から25歳までの10年は本当に音楽で生活ができるなんて果てしなく遠かったし、インターネットで音楽を公開して実際にレーベルから声がかかる時代の夜明け前でした。生活のためにいろんなバイトをして、ずっと東京の中で右往左往していました。
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-そして、苦しかった時代を抜け出した。
その後の10年は好きに音楽をつくれる環境です。音楽に対して嫌なことは一切していないんです。これつくらなきゃとか。家に帰らずにずっと旅をしているから生活を忘れて音楽に入っていける状況がつくれたんだと思います。
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-それも10年前のきっかけがあったから。
まずはアルバムをつくって出す。それをしないと何も起こらない。作品をつくって世に問う。
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-「世に問う」意味は?
戦争の反対は平和ではなく芸術だと思うんです。言葉にしてしまうと安っぽくなってしまうけれど。光を求める行為を、精神を、その意思を突き詰めていこうとしていたものが「PIANO ENSEMBLE」(※3)でした。闇から光へ。そこに向かっていこうとしていた。「PIANO ENSEMBLE」でつくったアルバムはそれを世に問いかけているんです。
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-問いかけへの返事は?
返事は感じられるときも多くあるけど、問うことが作品の根源です。僕はそのあとも旅をしているからどんどん森の奥へ入っている。アルバムはひとつの句読点を打ったようなもの。でも、その後もまだ続いているんです。ここで終わっているわけじゃなくて。点を打って、次へ。
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-今まで音楽をやめたいと思ったことは?
やめようというか何もやれなかったときはありました。Nujabesさんが亡くなったとき、ただやれなかった。一緒にやろうっていういろんな計画があったし、いろんな道もあったから。二人でよくそんな話をしてた、夢とか。でもある日、それが全部なくなってしまった。
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-再び動き出したのは?
『Twilight』という曲があって。日が沈んでいく状況を曲にしたものです。それをなんということもなく逆再生をしたんです。何にもやる気が起きなくて、逆再生ならボタン一つでできるから。聞いてみたらすごくいいメロディが浮かびました。「これはつくらなきゃ」って思ってそれが『光』って曲になった。それからPIANO ENSEMBLEの『光』ってアルバムまで続いていくんです。ずっと地軸に。
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-次の目標は?
これからの10年を考えています。今まで完全にひとりのアルバムって一度もつくっていないんです。人とやるのが好きだから。常にアンサンブルをやってきて、この10年でいろんな人たちと出会ってきました。そして、みんなそれぞれの道に行き、だんだんと少なくなっていく。おそらくやがて、ソロになる。
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-ソロアルバムが次の目標。
いつか、これまでのすべてが集約されるようなピアノソロアルバムを作りたい。そのためには一枚ずつゆっくり、アルバムをつくっていこうと。それがこの10年間にやりたいことです。
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-そこに向けてもう歩き出している。
そのためには生活を変えなきゃいけないんです。毎日、ピアノを弾ける環境をつくって家でピアノと向き合う時間というのを人生にしていかなきゃいけない。そういう意味では旅は終わり。おそらく旅はフェイドアウトしていって、ピアノに向き合う時間をつくっていくんです。
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-harukaさんは「好きを仕事にしたひと」、それとも「しなかったひと」?
クライアントから依頼を受けてつくってそれが選ばれるか選ばれないかになる。それは職業的音楽というものがある。その仕事がプロだというなら僕はぜんぜんプロではなくて。でも、たまたま音楽で生活ができているし、そのたまたまが10年くらい続いている。でも、この先10年は分からない。
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-どちらとも言えない。
ぜんぶ必然だなって思っているんです、自分では。今の状態が最高だと思っているし、自分にぴったりなんです。好きな音楽をつくって、旅をして、生活も流れていく。好きなものを仕事にしてるとも言えるし、あえてしなかったとも言えます。
(2019 年11月 博多区「珈琲館」にて)
※3:PIANO ENSEMBLE ・・・・・・haruka nakamuraのピアノにサックス、パーカッション、ヴァイオリン、コーラスなどのメンバーとセッションし、楽曲制作や即興演奏を展開する活動・ユニット名。『音楽ある風景』(2014年)、『CURTAIN CALL』(2016年)、『光』(2017年)のアルバム3作をリリース。オンラインストア「雨と休日」(https://shop.ameto.biz/)で購入可能。
ピアノソロアルバム「スティルライフ」
CD発売中
https://www.harukanakamura.com/
古林咲子 SAKIKO KOBAYASHI
古林咲子
インタビュアー、ライター。俳優、経営者、アーティスト、職人、子どもなどあらゆるジャンルの人に話を聞き、取材人数は1000人以上。「好きを仕事にしたひと。好きを仕事にしなかったひと」をテーマとしたインタビューをライフワークにしている。
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