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文化CULTURE

世界放浪 ~シヴァ神と仙人サドゥ~ Vol.8

世界放浪 ~シヴァ神と仙人サドゥ~ Vol.8

ベンガル・トラ通りを彷徨う


バラナシ・ジャンクション駅に着くと、コルカタ、ガヤと同様に駅の構内や駅前の道にびっしりと人が寝ている。鞄に頭を乗せたり、下に布を敷いたり、毛布を被ったり。家族連れも多い。深夜便や明け方の列車に乗るのだろうか。

駅からリキシャに乗ってベンガル・トラ通りへ。リキシャは入口までしか入れず、そこから先は人しか通れない細長く曲がりくねった道が延々と続く。バックパックを背負い直し、中に入っていく。道の両側は様々な形の岩の家が並んで壁は高く閉塞感があり、曲がった次に何が出てくるか分からないお楽しみがある。脳内BGMは絢香×コブクロの“WINDING ROAD”。Googleマップではガンジス河の沐浴場のすぐ近くにこのくねくね道があることを確認しているが、ガンジス河が近いのは感じられないし、地図に表現できないほどの入り組んだ道で、やはり実際に来ないとこの雰囲気は分からない。



陽が沈んだくねくね道は薄暗いがインド人が行き交っている。いくつか宿があるうち、シヴァ神の暗黒面の化身のひとつである暴風神の名前を冠しているという理由でルドラ・ゲストハウスにしようと決めているが、最早どこに続くか分からない道に入り込んでしまっている。でも、スペースのない暗い中で地図やスマホを出すのが面倒になり、暗いとは言えまだ夜7時台、そこまで危険でもなさそうな通りだし分からなくなったらインド人に聞けばいい、鉄道の中で確認した地図の記憶を辿って行けるところまで行ってみようと少し緊張しながら歩く。

この初めての場所のドキドキ感は恐らくこの初回だけ。しかもずっと憧れていたバラナシだ。滞在しているうちにこの道に慣れてしまう前に、全身でベンガル・トラ通りの空気をしっかり吸い込んでおきたかった。

♪まだ遠くて 見えなくても 一歩ずつ ただそれだけを


壁際に点々と出現し始めた日用雑貨の店の明かりが道を照らす。暗くても建物もサリーもカラフルなことが分かる。場所によっては向こうから来る人とすれ違うのもぎりぎりで、片方が壁にぎりぎりまで寄って道を開けて譲らねばならない。おっと、でかい牛が道を塞いでいる。これはお手上げ…。牛が向きを変えるのを待っていると、後ろから追い越してきたインド人が「ウァッウァッ!」と大声で牛を脅し、頭を無理矢理押しのけて通って行った。あ、牛って神聖って聞いていたけど、そういう扱いしていいのね…。慌てて後に続く。


急に道が開けて、左側にオープンカフェが現れた。欧米系のバックパッカーが談笑している。煙草を吸っている日本人らしき旅行者もいる。その右側には色とりどりのインドパンツ(股のところが分かれておらず、広げると三角形になるズボン)を沢山吊り下げて売っている店がある。安堵しながら、短い距離しか歩いてないだろうが、初体験だとやはり長く感じると独りごちる。ルドラの案内をする看板を見つけ、その方向に歩いて行く。


ルドラに着いて部屋の空きを確認。日本人が何人かまったりと受付周りに座っている。真ん中にいるのが、インド人サンちゃんの妻でこの宿を経営している日本人の晃子さんだ。

明朝、ガンジス河を舟で巡る宿泊者がいるというので同乗させてもらうことにする。


夕飯はエッグロールの屋台へ。出来上がりを待つ若いインド人にびっしりと囲まれた屋台には山と積まれた卵。リズミカルかつ高速で動く3人の兄さんたち。「ワンエッグ?トゥーエッグ?」と聞いてくる。もちろん「2」、値段は50ルピー(80円)。



鉄板に生地を丸く伸ばし、その上に卵を割り、焼きそばを乗せる。まるで広島風お好み焼き。粗切りにした野菜を乗せ、ソースをかけてくるくると丸めて出来上がり。「ノンスパイシー」と言えば辛さ控えめになる。

生野菜でも躊躇しなかったのは、インドに来てあまりにもカレーが多かったのでふと気づいたからだ。彼らは、衛生面からの消毒の意味でスパイスを大量に食べているのだろうと。今は生野菜でも上手に料理してありスパイスソースがかかっていたらある程度許容して食べられるようになった。食べた後でやばいなと思ったときはカレーも食べて消毒すれば良いと腹を括っている。

エッグロールは熱々で皮と麺の柔らかさにシャキシャキと生野菜の歯ごたえがあり最高に美味しい。屋台の美味しさとその街の人々の活力は比例する。

翌朝用に屋台でバナナを2本10ルピー(16円)で買ってルドラに帰る。




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徳田 和嘉子
徳田 和嘉子

徳田 和嘉子 WAKAKO TOKUDA

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自由業。CROSS FM元代表取締役社長、経営破綻寸前だった同社を再建。
2019年2~3月、仙人サドゥに会いたくてインドへ。昔は「東大生が教える!超暗記術」(ダイヤモンド社)を出版し、印税を使って52ヶ国世界一周ダンナ探しの旅をしていました(http://www.tokuwakako.com/)。