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土曜日の夜に 第18回 Young Marble Giants『Colossal Youth』Text by Masami Takashima

土曜日の夜に 第18回 Young Marble Giants『Colossal Youth』Text by Masami Takashima



冬が大の苦手な私は毎年静かに季節が変わっていくのを待っている。マスクをつけていても顔の上半分ではつうんと感じる冷たさは残るものの、このところ日差しが変わってきたなと感じることも多くなってきた。2月の始まりは嬉しい。

今年早々よりリリースされたFKA twigs、Cat Power、BURIALなどのいくつかの新譜など聴きながら、年始にたびたび見かけた干支のイラストがふと頭によぎり自宅の棚をガサガサと探した。ああこれだったと見つけたThe Concretesのジャケットに描かれていたのは虎ではなく豹だったけれど、そのまま色々聴き進めているうちにWeekendで歌うアリソン・スタットンの声に導かれるようにやっぱり聴きたくなってYoung Marble Giantsのレコードに針を置いた。



1978年にウェールズで結成されたYoung Marble Giantsのファーストアルバム「Colossal Youth」(1980年)は現在進行形で今も聴き続けられているポストパンクの名盤。EPとこのアルバム1枚を発表した後すぐに解散している。このアルバムの発売40年を記念してここ1、2年は記念盤などの再発が続いていて現在のご本人たちのインタビューなども見ることができ、バンドの活動期あたりに生まれた私としてはとても嬉しい機会になっている。オルガン、ギター、リズムボックス、ベース。モノクロのジャケットが象徴するように圧倒的にミニマルで鋭いサウンドだ。クラウトロックのようでもあり、話すように歌うボーカルと融合し静寂の冷たさと内面の熱さを感じ取れる。このあとに脈々と続くビートボックスやリズムマシンを用いながら制作し発表している世界中の音楽家たちにも大きな影響を与えているはずだ。かくいう私もそのひとり。アイデアとカウンター精神に溢れていていつ聞いてもちょっとだけ奇妙で新しい発見がある。そういえば初めて(偶然に)このアルバムの音を聞いた際にThe Velvet Undergroundの未聴のアルバムなのかと一瞬勘違いしてしまったことを思い出した。



10年後、もっと先のことはわかるはずはないのだけれど、世の中の音楽が様変わりしていたとしても、Young Marble Giantsは私のようなファンをまだまだ増やしていくのだろうと思う。このままずっと聴き継がれて欲しいと40年前に生まれた「大」名盤を前にそう思う。







Masami Takashima
Masami Takashima

Masami Takashima Takashima Masami

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1996年よりバンド活動をスタート。現在はニューウェイブ・アートポップトリオ miu mau(2006年〜)シンセベース・キーボーディスト。2004年よりソロワークを始動、ピアノ、シンセなどの演奏に加え、トラックメイクも自身で手掛けている。
ソロ・バンド共に作品多数。最新作はデジタル・シングル「Parallel World」熊本出身。
https://twin-ships.com/masamitakashima/
https://twin-ships.bandcamp.com