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土曜日の夜に 第20回 Sam Wilkes『One Theme & Subsequent Improvisation』Text by Masami Takashima

土曜日の夜に 第20回 Sam Wilkes『One Theme & Subsequent Improvisation』Text by Masami Takashima

「最近何聴いてる?」音楽の場所でばったり会う様々な世代のミュージシャンやトラックメイカーの方々と互いに聞いている音楽をシェアするというのが定番化している。ちょっとした挨拶みたいな感じでその場でスマホを取り出して、さささっと履歴をみながらその時の気分で伝える。説明も解説もなし。サブスクが主流になりアルゴリズムでおすすめされた情報は入ってくるけれどどうしても偏ってしまう。シェアしたトラックは記憶に残るし新しい音楽を知るのは楽しい。そういえば先日ライブでご一緒したDJさんがかけていたLee Fielsがとっても良かった。


音楽をシェアする方々との間でもたびたび話題にあがるのがLAの新しいジャズシーンだ。中でもコンポーザーでサックス奏者Sam Gendelは2021年も怒涛のリリースを続けてそれを耳にした方も多かったのではないかと思う。ジャズではあるのだがR&Bやヒップホップ、ニューウェーブなども見え隠れする。荒野に突き放されたようなふしぎで多彩でとても新しい。折坂悠太、笹久保伸などとの共演、共作もあり、日本でも色々なところで紹介されているよう。まったくの余談だが私は学生の頃の部活でサックスを演奏していたからか、はじめてきちんと聴いたジャズはArt Pepperだったことをふと思い出す。


そんな人気のSam Gendelとの素晴らしいコラボ作品「Music for Saxofone and Bass Guitar」を生み出したもう一人のSam、コンポーザー、ベーシストのSam Wilkesがすごい。昨年末にLeaving Records/astrollageよりリリースしたアルバム「One Theme & Subsequent Improvisation」を今年は本当によく聴いている。LAシーンから発表される作品のいたるところでお名前を見かける実力派ベーシストだがソロ名義でのフルアルバムはまだ2作目。ひとつのテーマに即興を取り入れながら一枚のアルバムに展開させていく演奏は圧巻だ。ベースやドラムスの音像の中で主旋律はアンビエント、エレクトロ、ダブ、サイケデリックなどいくつかの部屋を行き来する。私は冷静さをもってその行方を耳で追いかける。海面に浮かぶ水草の動きをずっと見ているようなそんな感覚にも近いかもしれない。独特の低音の音作りからも感じられるが、適度にほっといてくれて、でもすぐ近くにいるようなそういう距離感が心地よいのかもしれない。


なんだか眠れそうにない。生活や環境の変化が起こり得るこの時期にはこういう夜がたまにある。もう少しだけ音楽を聴いていようと思う。






Masami Takashima
Masami Takashima

Masami Takashima Takashima Masami

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1996年よりバンド活動をスタート。現在はニューウェイブ・アートポップトリオ miu mau(2006年〜)シンセベース・キーボーディスト。2004年よりソロワークを始動、ピアノ、シンセなどの演奏に加え、トラックメイクも自身で手掛けている。
ソロ・バンド共に作品多数。最新作はデジタル・シングル「Parallel World」熊本出身。
https://twin-ships.com/masamitakashima/
https://twin-ships.bandcamp.com