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土曜日の夜に 第38回 Text by Masami Takashima

土曜日の夜に 第38回 Text by Masami Takashima

「間隙(かんげき)」という言葉がある。隙間と意味はほぼ同じだが、ものとものの間、空間的、時間的なすきま。めったに使う言葉ではないけれど、猛暑のまま9月が通り過ぎて季節のすきまが失われたようにさえ感じたて、この言葉を思い出した。

先日の別府湾をつなぐ移動中、9月の新譜をゆっくり聴くことができた。

Loraine James、Laurel Halo、James Blake、Kiefer、Uma、Carlos Niño & Friends、Teenage Fanclub、Slowdiveなど。機材を持っての移動に疲れ果てていたけれど、海沿いと山々の間を走る車窓からの眺めがとても新鮮で、季節の間隙を縫って入ってきた新しい音に全身を委ねるように集中し満たされた。集中する時間というのは尊い。良い休息の時間になった。特に良かったのはバルセロナのUma、ビートとギターの距離感、音符の隙間、The XXなど00年代後半のUKインディーの空気も感じられてとても良かった。







移動中に見えた高速道路が交差するジャンクションを横目に、好きな映画のことを思い出した。先日友人と話をしていて一番好きなミュージシャンは?と質問されたけれど、一番というの簡単に決めることができなくて、映画であれば古い映画が好きみたいと伝えた。私が生まれるより前の作品に興味を持つことはとても多い。


68年の映画「Bullitt」は冒頭のオープニングから一瞬で釘付けになった。映像と音楽のかっこよさ、大好きな映画になった。寡黙なハードボイルド。そもそも私はハードボイルド的な作品が好きというのをはっきり認識したのはこの映画なのかもしれないと思った。存在感のある音楽、セリフの少なさと相反する迫力あるカメラワークでストーリーが展開していく。サンフランシスコの急斜面、空港でのシーン、ミッドセンチュリー的なインテリアや60年代のファッション、どの部分を切り取ってもかっこよく、後から知ったけれど、芸術性を高く評価されアメリカ国立フィルム登録簿に登録されたそうだ。少し前にスクリーンで観る機会がありそれはとても特別で嬉しい思い出になった。音楽はアルゼンチン出身の音楽家ラロ・シフリンによるものでオルガンとフルートの掛け合い、エキゾチックなムード、うねるベース、聴き手に問いかけるようなスリリングさがとても素晴らしい。サウンドトラックといえば少し前に放送されたアニメ「平家物語」の音楽がとてもよかった。琵琶監修をした薩摩琵琶奏者、後藤幸浩の演奏や牛尾 憲輔が担当した電子音との融合が美しかった。









映画やドラマという枠を超えて人生に深く残っていくもの。

好きな映画はありますか?


Masami Takashima
Masami Takashima

Masami Takashima Takashima Masami

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1996年よりバンド活動をスタート。現在はニューウェイブ・アートポップトリオ miu mau(2006年〜)シンセベース・キーボーディスト。2004年よりソロワークを始動、ピアノ、シンセなどの演奏に加え、トラックメイクも自身で手掛けている。
ソロ・バンド共に作品多数。最新作はデジタル・シングル「Parallel World」熊本出身。
https://twin-ships.com/masamitakashima/
https://twin-ships.bandcamp.com