冷え込む日が続き雪も多く極寒の2月だったなと振り返る。冬野菜はたいへんに美味しくてたくさんいただいた蕪や白菜などをいつもの2倍ほどの量で毎食ありがたくいただく日々。制作を中心に過ごしていたこともありほとんど出歩かずに過ごしていたが、日常では無音を「聴く」ような時間が多かったかもしれない。

よくよく考えると私にはずっと聞き続けているアルバムってあまり多くないことに気づくのだが、そんな中でもCat Powerの作品が好きだ。メンフィスで長く活躍する楽器の名手を迎え録音されたアルバムをはじめ、新旧関係なくよく聴いている。最小限の音数を活かし大事にしたサウンドメイクがすごく好みだ。カントリー、ブルースなどのルーツを感じさせる凛とした音楽はサッドコアと評されることが多いけれど、苦悩や悲しみを抱えた誰かにとって連帯という形で希望にも思えるだろうと思う。今年リリースされたアルバム「Cover」は「Jukebox」などに続く3枚目のカバーアルバムになるそうだ。名門Dominoからリリースされている。これまでオリジナルアルバムににゲストボーカルとして迎えたことのあるIggy PopやLana Del Reyをはじめ、Frank Ocean、Nico、Billie Holiday（ “I’ll Be Seeing You”）などのカバー曲が収録されている。

言葉にできないようなものを掬い上げてくれる体験を誰もが得てきただろうと思う。音楽を聴いて堪えきれず心で泣いてしてしまったことは一度や二度ではないはずだ。歌う人の覚悟や決意のようなものを受け取った時、音楽そのものが内包した悲しみや希望をその時共有したような感覚に思わず貰い泣きしてしまうのかもしれない。

穏やかに季節が変わるはずだったのに、過酷な現実は明け方に見た悪夢の続きなのかと思いたくなる。どうか世界中の人々が身近な大事な人たちと穏やかな朝を迎えられるようにと思いを寄せながら。