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土曜日の夜に 第26回 Automatic「Excess」Text by Masami Takashima

土曜日の夜に 第26回 Automatic「Excess」Text by Masami Takashima

 LAのポストパンク/ニューウェイブバンドAutomaticが今年の6月にリリースしたセカンドアルバム『Excess』を改めて聞き返している。ドラムス、ベース、シンセによるギターレス編成で構成されたトリオで、2019年にMIND YOUR OWN BUSINESSが収録された7インチや、ファーストアルバムがLAの名門レーベルからのリリースされ話題になったことは記憶に新しい。ファーストアルバムは何度となく聞いていたので、新作の発表を個人的にはとても楽しみにしていた。

 コズミックで先鋭的な雰囲気のアートワークの今作。疎外と逃避、SF、消費や気候変動などのアルバムのテーマ、レトロフューチャーを落とし込んだMVからは身の回りに無数に派生する「過剰な」物事をどのように受け止めていくのか、過去からの離脱を問いかける一つのアート作品のようなメッセージを感じた。アルバム全体を通して聴き進めていくとミニマルに刻まれるビートとベース、冷たさ、メロディメイクなどAutomaticの存在感が存分に残ったまま、電子音が実験的な解釈でプラスされている。このシンセの鋭さやヒリヒリ感が個人的にはたまらない。ライブ会場での音を想像した。現在のサウスロンドンのサウンドが好きな人にも、KraftwerkやNEU!などクラウトロックファンにも、現行エクスペリメンタルファンにも、引っかかる「らしさ」があるのでないかと思った。










ライブといえば、先日リリースツアー中のthe hatchのライブに足を運んだ。最初は静かに体を揺らしていた人々もライブが進んでいくうちに、音楽の緩急が気持ちと結びついていき、発しない声の代わりに身体全部で音楽を受け止めながら音の一部になっていく一連の流れがあった。ハードコア、JAZZ、ラテン、ハウス、R&B、一般的にカテゴライズされた音楽を絶妙な尺度で取り入れながらもテンプレートから意識的に外れ新たな音を生み出そうとする探究者たちの演奏に、LAのシーンとの親和性を勝手に感じた。


秋を纏った金木犀の香りがどこからともなく漂う季節になってきた。少し先に未来の足音が近づいている。来日するアーティストの公演も増えてきているし、これからはますますライブが楽しみになっていくのだろう。









Masami Takashima
Masami Takashima

Masami Takashima Takashima Masami

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1996年よりバンド活動をスタート。現在はニューウェイブ・アートポップトリオ miu mau(2006年〜)シンセベース・キーボーディスト。2004年よりソロワークを始動、ピアノ、シンセなどの演奏に加え、トラックメイクも自身で手掛けている。
ソロ・バンド共に作品多数。最新作はデジタル・シングル「Parallel World」熊本出身。
https://twin-ships.com/masamitakashima/
https://twin-ships.bandcamp.com