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土曜日の夜に 第28回 Sam Prekop and John McEntire「Sons Of」Text by Masami Takashima

土曜日の夜に 第28回 Sam Prekop and John McEntire「Sons Of」Text by Masami Takashima


窓の外、山々は色付いて冬を告げる霧がかかっていた。先日自宅から車で1時間ほどの美術館への道すがら、山に囲まれた車中は久しぶりにThe Beatlesの「Revolver」を聴いていた。かつてツアーの移動中に追いかけるように正面に見えた大きい月や、路肩に咲く彼岸花とか、そういう断片的なことがなんとなくふわっと目の前にやってきて、あの場所はどこだったかな?と久留米とか荒尾とかそのへんあたりの記憶。移動中のBGMとして一生分ほどThe Beatlesを聴いたはずなのにそれでも新しい発見があり知れば知るほど豊かな気持ちになるものだ。





夜が長くなりこんな時は電子音がとてもいい。rRoxymore「PERPETUAL NOW」、Eden Samara「Sophie」、CARLA DAL FORNO「Come Around」。そして、60年~70年代のポップス、ソフトロックへ思いが巡るWeyes Blood「And in the Darkness」など秋深い今月は良作のリリースが多かった!



振り返ると今年はアンビエントやニューエイジを取り入れた作品がとても多かったように思うのだけれど、ギターやベースを持ち替えてモジュラー・シンセを用いた活動するミュージシャンも増えている。近年モジュラー・シンセシストとしても活動しているThe Sea and CakeのフロントマンSam PrekopとTortoiseのドラマーでサウンドエンジアのJohn McEntireというベテランの二組によるデュオ名義の電子組曲「Sons Of」が今年発表されたのでピックアップしたい。アルペジオ、繰り返されるシンセのフレーズ、4つ打ちはテクノやハウスとは異なるもので丁寧に作り込まれたサウンドスケープだ。洗練されたポップミュージックのようでもあり、リスニングとしても、フロアでも踊れるこのサウンドは木枯らしが吹くような夜にも優しくて良い。個人的にはJohn McEntireの作るサウンドに影響を受けた一人だけれど、こうやって今でも次々と新しいアプローチのリリースを聴かせてくれることがとても嬉しい。








2023年が近づいている。日常で聴いている数々の音楽をこうやってコラムとして言葉に残すという作業は私自身に新たな発見が生まれる良い機会になっている。何よりピックアップしている音楽家へのリスペクトの表明でもある。それからここがきっかけで新たな音楽沼の入り口へ誰かをお誘いできたとしたらとても嬉しい。


いつも読んでくれてありがとうございます。良いお年を!


Masami Takashima
Masami Takashima

Masami Takashima Takashima Masami

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1996年よりバンド活動をスタート。現在はニューウェイブ・アートポップトリオ miu mau(2006年〜)シンセベース・キーボーディスト。2004年よりソロワークを始動、ピアノ、シンセなどの演奏に加え、トラックメイクも自身で手掛けている。
ソロ・バンド共に作品多数。最新作はデジタル・シングル「Parallel World」熊本出身。
https://twin-ships.com/masamitakashima/
https://twin-ships.bandcamp.com