土曜日の夜に 第21回 Ana Da Silva & Phew『ISLAND』Text by Masami Takashima
Wet Leg、The Linda Lindas、Tomberlin、Autmaticなど新緑の季節にリリースされたたくさんの新譜を聴いている。来日公演が発表されたバンドもあり、ふわりと新しさを運んでくれているようで嬉しい。The Linda Lindas結成のエピソードなどを読みながら、昨年末あたりに書店で面出しされていて手に取った2冊の音楽書籍を読み返した。
1冊は70年代以降、女性にフォーカスを合わせた膨大な情報量が掲載された音楽史。もう一冊はThe Raincoatsについて書かれた書籍である。
The Raincoatsを認識した経緯については詳しく覚えていないけど、New Order、Delta 5、The Pop Group、The Slits… などを聴いていた頃に辿り着いたのだと思う。以前当コラムでもピックアップしたYoung Marble Giantsと同じRough Trade Recordsから 1979年にリリースされたポスト・パンクの古典と名高い1st「The Raincoats」、そして個人的に大好きな2nd「Odyshape」はゲストにRobert Wyatt、Charles Haywardなどを迎え録音された実験的とも言える内容ではあるが、他者により作られた「形」「ジャンル」から離脱しようとするその静かなる情熱と決意のような強さを感じた。
2018年にリリースされた「Island」は音楽家PhewとThe RaincoatsのAna Da Silvaによる共作だ。
このコラボリリースを知った時はとてもとても驚いた。PhewはAunt Sallyのメンバーとして、それぞれの国でほぼ同時期に活動をスタートしたというレジェンドたちが時を経て共同制作した音の対話。バキバキに研ぎ澄まされていてとってもかっこいい。実験精神、積み重ねた経験の先にある音の対峙。「捉われない」ということを提示されたような気がした。
後追い世代の私はお二人の活動をスタートさせた頃の時代背景や空気感は書籍の中で読み知ることしかできないのだけど、先輩たちが今日までずっと表現し続けてきたこと改めて身に沁みて実感する。私たちは今、そしてこれから何ができるのだろう、この数年こういうことばかり考えている。
強い色が連なっていた沿道のツツジもすっかりやわらかい色に変わってきた。我が家の紫陽花は去年の倍の高さになり梅雨を迎える準備をしている。今年はプランターでゴーヤを育てているからそのうち食の恵みと涼しさを運ぶカーテンになってくれるだろう。夏を待つ日々が始まる。
1996年よりバンド活動をスタート。現在はニューウェイブ・アートポップトリオ miu mau(2006年〜)シンセベース・キーボーディスト。2004年よりソロワークを始動、ピアノ、シンセなどの演奏に加え、トラックメイクも自身で手掛けている。
ソロ・バンド共に作品多数。最新作はデジタル・シングル「Parallel World」熊本出身。
https://twin-ships.com/masamitakashima/
https://twin-ships.bandcamp.com