山口洋(HEATWAVE) | 博多今昔のブルース Vol.6〜身体に稲妻が走った日 / Still life with my GTR
身体に稲妻が走った日 / Still life with my GTR
1977年12月26日、14歳の誕生日。その日を境にすべてが変わる。
僕は東区にあるともだちの家にいた。僕はそれまで絵を描いていて、奴はギターを弾いていた。奴が小椋佳さんの「さらば青春」って曲を教えてくれて、最初のコード「G」を弾いた瞬間、身体じゅうに稲妻が走って、大げさな話じゃなくて、宇宙が見えた。
探し続けていたのはこれだったんだと、直感で理解した。それまで野球、ラジコン、絵、漫画、いろんなことに夢中になったけれど、モノになるとは到底思えなかったからほんとうに興奮した。
その日のうちに1曲をモノにして、翌日から家にある父親のガットギターに鉄の弦を張って猛練習を始める。長いこと弾いていたのに、ちっとも上達しない父親が「お前、いつからギター始めたんだ?」、「昨日だよ」。まったく信じてくれなかった。
ちなみにともだちとは才能が交錯して、僕はミュージシャンに、奴は絵描きになった。互いの才能を見て、それまでにやっていたことへのやる気を完全に失くしてしまった。でも、結果的に見れば、素晴らしい出会いだったと思う。奴の個展に行けば、会わなかった間のことがだいたい理解できる。僕が作った音楽もきっとそうだろう。
僕らの時代はメソッドがなかったのがよかった。教則DVDもyoutubeもない。だから、ギターを弾いている人を探して徹底的に盗む。定期的にギター演奏者を見ることができるのは土曜日のドリフのバックバンドだったりするから、瞬きもせずに注視した。
なにせ必死だったのだ。ここで溺れたら、僕にもう未来はない。もちろんギターが好きだったけれど、正確にはギターや音楽にしがみついた、という方が正しいと思う。
最初のギターは岩田屋で買ってもらった。モーリスW-20。スーパースターも夢じゃないってやつ。笑。それで猛練習を積んで、大丸の地下にあった中華屋でバイトをして貯めたお金でグレコのEGF-850とアンプを買った。懐かしや、KBC名曲堂。15歳だったかな。
なんにせよ、ギターは僕と世界を繋ぐ希望の糸で、そこにしかひかりをみいだせなかった。授業中はガールフレンドのことを考えるか、脳内でアルバムを一枚再生するか。机の下で運指やドラムの練習をするか。
そんな頃、ルー・リードがヴェルヴェト・アンダーグラウンドでグレッチ・カントリー・ジェントルマンを弾いている写真を見た。
直感、ふたたび。生涯を共にするギターはこれだ、と。
18歳になったある日。ともだちから電話がかかってきた。「ヒロシ、カントリー・ジェントルマンがベスト電気に売っとーじぇ!」。
その夜、妄想で眠れなかった。徹夜して、朝イチでベスト電気に電話をかけた。「それ、買います!」。見てもないのに。急いで店に駆けつける。恋焦がれたギターが目の前にある。しかも生まれて初めて見た実物。たぶん1万円も持っていなかったのに、60回払いで買った。例えるなら今の僕がフェラーリを買う感じかな。笑。
それから40年近く経過して、メインギターであり続けるグレッチ。僕の相棒。ベスト電気で買ったってところが妙に誇らしい。
Still life with my GTR。
Photo by 三浦麻旅子
HEATWAVE
「無観客生配信ライブ"Blink"」決定!
昨年結成40周年を迎えたHEATWAVEの無観客生配信ライブが決定!
以下のサイトより配信チケットをご購入いただくと、PC・スマホ・タブレット端末等で視聴可能です。
http://no-regrets.jp/news/2020/0620_live_blink/
配信予定日時 : 2020年6月20日(土) 20:00~21:30
配信サイト
ツイキャス・プレミア配信
https://twitcasting.tv/rds_era/shopcart/6193
配信チケット
4,000円(税込)
※クレジットカード、ネット銀行、ペイジー、コンビニ支払い、Amazon Pay対応
※紙チケットは発行されません
録画配信
生配信終了後から7月4日(土)まで
※この期間内で配信チケット購入可能
[購入方法・視聴方法はこちら]
https://twitcasting.tv/helpcenter.php?pid=HELP_PREMIER_LIVE_BUY
博多今昔のブルース Vol.5〜ジュークレコードとボーダーライン
ヴォーカリスト、ギタリスト、ソングライター、プロデューサー、そしてランナーにして、スノーボーダー。
1979年、福岡にてヒートウェイヴを結成。1990年、上京しメジャーデビュー。現メンバーは山口洋(vo.g)、池畑潤二(ds)、細海魚(key)。山口洋がソロツアーの旅で新たな曲をつくってバンドに持ち帰るというスタイルで、ほぼ全曲の作詞と作曲を担当する。1995年の阪神・淡路大震災後、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)と「満月の夕」を共作。2011年の東日本大震災直後からは「MY LIFE IS MY MESSAGE」プロジェクトのさまざまな活動により、福島県の相馬をピンポイントで応援し続けている。仲井戸麗市、佐野元春、遠藤ミチロウ、矢井田瞳ら国内のミュージシャン、ドーナル・ラニー、キーラらアイルランドを代表するミュージシャンとの共演も多い。
http://no-regrets.jp