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土曜日の夜に 第14回 Nite Jewel 『No Sun』Text by Masami Takashima
夏の名残のままで出掛けてしまうと着る服を間違えたと我に返る。一日の寒暖の差に羽織るものがないと落ち着かなくなってきた。日中の日差しの先の路肩には秋の虫と花が賑やかだ。もうしばらくするとアウターも薄手からしっかりした厚みのものが必要になってくるだろうけれど、今頃は窓をあけるとちょうどよく、SNSからもしばらく離れて読みたかった本をまとめ読み。そんな感じで過ごしているので、夏の終わりにリリースされていたNite Jewelのニューアルバム情報をすっかり見逃していた。ストリーミングでThe Marias、Park Hye Jin、Men I Trust、Low、Buffalo Daughterなどなど最近リリースされた作品も一緒に聴いた。そういえば新譜とはいつ頃までを指すのだろう。往年の名盤に出会える喜びとは少し違って、活動を続けるアーティストの新譜が届く時、同じ時代に暮らしているという喜びや感慨深さがある。今年は九州発リリースも続いていて、福岡在住のバンドSACOYANSも2nd album「Gasoline Rainbow」が10月にリリースとのこと。友人知人のリリースが続いているのも嬉しい。
話が前後してしまったが、DāM-FunKとの共作の発表などでも話題となったLAのアーティストNite Jewelの新作「No Sun」は4年ぶりのリリースとのこと。このアルバムにはSun Raのカバーも収録されている。全体を通して実験的なサウンドスケープが仕掛けられている。これまでの作品にはドリーミーな歌声の印象のあったRamona Gonzalezの声はより存在感を増し、刻むシンセのビートがヒリヒリとした緊張感を連れてくる。Nite Jewelはこの10年ほど1stからずっとリリースを追いかけているアーティスト。各作さまざまな実験要素が取り込まれている。個人的には2枚目「One Second of Love 」が一番好きだったけれど、今作はあっという間に好きが超えてしまった。私は作り手の感情のようなものを聴き手として共有するのではなく作り手から生まれる表現への希望のような部分に強く惹かれる。静寂の中に身を置いてただただ延々と音楽を堪能する。そんな素直な気持ちで何度か聴いた後、いくつかのインタビューを読んだ。このアルバムは別れを素材に、学術的な要素も含まれているのだそう。とても現実的でまとわりつく不安とかそういうものをふわっと手放せる冷静さもある。明かりもなく夜がどこまでも深い場所、はたまた夜の野外ステージで聴きたい。そう思った。またいつか来日してほしい。心から待っている。

1996年よりバンド活動をスタート。現在はニューウェイブ・アートポップトリオ miu mau(2006年〜)シンセベース・キーボーディスト。2004年よりソロワークを始動、ピアノ、シンセなどの演奏に加え、トラックメイクも自身で手掛けている。
ソロ・バンド共に作品多数。最新作はデジタル・シングル「Parallel World」熊本出身。
https://twin-ships.com/masamitakashima/
https://twin-ships.bandcamp.com
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