音楽MUSIC
土曜日の夜に 第17回 Small Circle of Friends『Cell』Text by Masami Takashima
蜜柑が美味しい季節になった。スーパーや産直でも種類豊富な蜜柑が店先に並んでいる。いただくことも多く食卓では器から溢れてしまったことを理由についつい1つ、2つと食べてしまう。そんな蜜柑たちと同じ頃、我が家に届いたsmall circle of friendsの新作「Cell」を何度も聴いている。
(栗田編集長の「栗田善太郎的2021音楽回顧 #2 ~邦楽ベストアルバム30枚~」(https://bigmouth.co.jp/music/1114.html)でもピックアップされています)
九州の先輩であるサツキさん、アズマさんのお二人と初めて共演させていただいたのもそういえば数年前の12月だった。ライブでは名曲「波よせて」でフロアは大合唱。会場が多幸感でいっぱいになりながらみんなが体を揺らしたとても良い時間だったことを思い出す。楽屋でお二人と福岡のことをお話しできたことも嬉しかったし、私のライブ機材を見て普段制作で使っている少し珍しいDAW(音楽制作ソフト)が何か認識してくださったのは後にも先にもアズマさんお一人だけである。
「seasons change」で始まり、「NewType」でラストを迎える全11曲。12月に配信と限定CDでリリースされた。Hip Hop/Jazz/Electronicのサウンドにまっすぐなサツキさんの歌と軽やかなアズマさんのラップが呼応する。ミックス、マスタリングもビニールをできるだけ使わない特別仕様のCDのシルクスクリーンによるジャケット印刷もお二人の拠点であるアトリエで行われているとのこと。「clap song」を聴きながらフットステップとハンドクラップを鳴らし暮らしがゆっくり進んでいったこの一年を考えた。お二人がアトリエから積極的に制作や日々のことを発信されていることが優しくも冷静に未来を考えるメッセージとなってそのままこのアルバムに収められているように感じた。窓を開けてお白湯を飲み、蜜柑を食べ、迷い悩み意欲的に楽しく考えていく。そんな気付きと潤いをこのアルバムが与えてくれるような気がした。
変わらないもの、変わってしまったもの、現在進行中のもの。目まぐるしい日常の中でもひとつひとつアップデートしながら私なりの音を積み重ねたい、改めてそう思った。2022年のはじまりに。
1996年よりバンド活動をスタート。現在はニューウェイブ・アートポップトリオ miu mau(2006年〜)シンセベース・キーボーディスト。2004年よりソロワークを始動、ピアノ、シンセなどの演奏に加え、トラックメイクも自身で手掛けている。
ソロ・バンド共に作品多数。最新作はデジタル・シングル「Parallel World」熊本出身。
https://twin-ships.com/masamitakashima/
https://twin-ships.bandcamp.com