音楽MUSIC
土曜日の夜に 第24回 Laura Nyro「Spread Your Wings and Fly: Live at the Filmore East, May 30, 1971」Text by Masami Takashima
蝉が鳴き始めるとふわっとある記憶が戻る時がある。その記憶というのは熱風に挟まれるような暑い日の、途切れなく蝉がわしゃわしゃと轟くように鳴いている(窓をあければ2倍に聞こえるほど)当時住んでいた家の近くの緑の多い公園のことだ。自分の年齢も思い出せないほどにいつ頃か内容も曖昧なものだけれど、熱風を纏た記憶の断片は現在進行形の蝉の鳴き声と並行するように一瞬重なっているように感じるのだ。公園は他の季節も桜や銀杏が彩るとても豊かな場所だったけれど、現在はすっかり別の姿になりその面影もたくさんの木々もなくなってしまって寂しい。暑さにすっかり気力を奪われているこの夏、この不確かでふわっとした記憶がなんだか優しいものになっていることに気がついた。
トロントのMaylee Todd「Maloo」、バンコクのKIKI「Metamorphosis」やGym and Swimのシングル「Say Hello」がとてもよい。気候の異なるふたつの街で生まれた音楽となぜか夏の我が街の風景、蝉の声、過去未来を繋ぐ心象風景と不思議な親和性を感じている。気持ちが穏やかな時はテクノやアンビエントはすごく響くしクタクタで動けないみたいな日に聴くギターの爆音は疲れが吹き飛ぶような気持ちよさがある。テクノもアンビエントもノイズも生活の中で必要に思う日があるように、どうしても歌が聴きたいと思う時がある。そんな感じでなんというか歌という存在が心身において必要に感じることが私にはたびたびあるのだけれど、それは歌詞うんぬんということではなく声の力によるものなんだと思う。先日のフジロックの配信で見たHiatus KaiyorteのNai Palmのパフォーマンス素晴らしかった。
歌を聴き心が動いたら感情が溢れることが以前より増えたとなと思う。
歌が聴きたい。そんな日に71年に行われたピアノ1本で歌うLaura Nyroのライブアルバムを。

1996年よりバンド活動をスタート。現在はニューウェイブ・アートポップトリオ miu mau(2006年〜)シンセベース・キーボーディスト。2004年よりソロワークを始動、ピアノ、シンセなどの演奏に加え、トラックメイクも自身で手掛けている。
ソロ・バンド共に作品多数。最新作はデジタル・シングル「Parallel World」熊本出身。
https://twin-ships.com/masamitakashima/
https://twin-ships.bandcamp.com
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