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土曜日の夜に 第32回 Joyul「Earwitness」Text by Masami Takashima

土曜日の夜に 第32回 Joyul「Earwitness」Text by Masami Takashima

季節が移り変わる頃から週末の様々なイベントが増えてきた。賑やかさが懐かしくさえ思えた日々からそんなに時間は経過していないのに街の変化を実感する。数年振りに開催されたイベントでしばらく現場を離れていた友人知人を見かけて久しぶり!と言いながら再会を楽しんだ。そしてお互いに名前も知らないけれど音楽の現場に行けば挨拶を交わす方々がいつもの場所にいた。こういう日常の必要性を改めて思うことがとても増えた。そういえば私は10代の頃からライブハウスに通ってるんだった。ずっと大きい音が鳴る場所にいる。



以前もどこかで書いたかもしれないが、毎年この季節になると以前住んでいた家近くの神社の満開の桜を思い出す。肌に伝う空気の質感、街の匂い、天気、何も語らずただそこに悠々と存在する桜を見上げるだけのなんてことないその一瞬がずっと記憶の片隅に残り続けている。子供の頃住んでいた家のすぐ近くにある川沿いの公園は長く連なる桜並木があった。日中は菜の花とのグラデーション、日が沈むと水面に浮かぶように映る夜の光と仄暗く咲いている桜の幽玄さにいつもドキドキしていたことを思い出す。










先日来日していた韓国の音楽家Joyulが2021年にリリースしたアルバム『Earwitness』水の音、環境音と電子音との有機的な組み合わせで描かれるサウンドスケープがとてもいい。ギターは輪郭がなくなるほどにリバーヴに包まれていて、浮かぶような歌に全ての集中力を注ぐ。行ったことのない湖の辺りにいるような、巨大な建物の目の前にいるような、薄暗い喧騒の街中に佇む桜のような、無機質さと計り知れない大きさみたいなものが混在していてとても好きだ。韓国で彼女の街でライブを見たい。そう思った







Masami Takashima
Masami Takashima

Masami Takashima Takashima Masami

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1996年よりバンド活動をスタート。現在はニューウェイブ・アートポップトリオ miu mau(2006年〜)シンセベース・キーボーディスト。2004年よりソロワークを始動、ピアノ、シンセなどの演奏に加え、トラックメイクも自身で手掛けている。
ソロ・バンド共に作品多数。最新作はデジタル・シングル「Parallel World」熊本出身。
https://twin-ships.com/masamitakashima/
https://twin-ships.bandcamp.com