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転がる石のように名盤100枚斬り 第18回

転がる石のように名盤100枚斬り 第18回

#83 Axis: Bold as Love (1967) - The Jimi Hendrix Experience

アクシス:ボールド・アズ・ラヴ - ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス



中学生の頃は、ジミヘンの曲がラジオでかかると、友達と顔を見合わせ、なぜかニヤニヤしていた。要は、どう受け止めていいのかわからなかったんだろう。


80年代のシンセポップ全盛期に思春期を迎えた軽薄な僕らにとって、ジミ・ヘンドリクス=ジミヘンは、なんかドロドロした、得体の知れない音楽の代表だったのだ。


そういや、僕らが大学生の頃、『じみへん』なんてタイトルのギャグマンガが、ヒットし、僕も単行本を買った。このタイトルの由来は「地味」だけど「変」なマンガだかららしい。



ジミヘンの音楽は、「派手」で「変」な印象だった。



マンガ『じみへん』を愛読していた大学生の頃には、さすがにそっちのジミヘンのかっこよさにも目覚め、ファースト・アルバムの『アー・ユー・エクスペリエンスト? Are You Experienced』(1967年)、サード・アルバム『エレクトリック・レディランド Electric Ladyland』(1968年)を購入。


しかし、『ローリング・ストーンが選んだ史上最も偉大なアルバム』83位にランクインしているセカンド・アルバム『アクシス:ボールド・アズ・ラヴ』は、僕のCD棚にはないのだった。



なんでこのアルバムだけ、買わなかったのか? 



たぶん、ジャケットがヤバかったからだな。インドの神様を従えたジミヘンとその仲間たちがフィーチャーされたヴィジュアル。うさんくさすぎる。


さらに、「コンセプチュアルなアルバム」らしいし。「インドの神様」をコンセプトにしたジミヘンのアルバムとか・・・・・・難解そう。



で、ようやく五十路前に聴いてみましたよ。



1曲目の「EXP」は、邦題では頭に「放送局」とついていることからもわかるように、ラジオ・ショウを模している。とぼけた感じのインタビューがしばらく続いた後、ジミヘンのギターがうなり始める。


これって、もしや・・・・・・ギターで宇宙人襲来を表現しているのか!? いきなりのスネークマン・ショウ的な展開に意表をつかれました。



まさか、「インドの神様」ではなく、「宇宙人」がコンセプト?



この曲を皮切りに、アルバム全編にわたって、ジミヘンのギターは縦横無尽に音を紡ぎまくっているわけだけど、そのテクニックに加え、彼のソングライターとしての才能に、今更ながら圧倒される。


2曲目の「空より高くUp from the Sky」なんて、小粋なジャズっぽい曲(歌詞を読むと、まだ宇宙人のことを歌っているみたいだけど)。続く「スパニッシュ・キャッスル・マジック Spanish Castle Magic」はこれぞジミヘンて感じのロック。名曲と名高いバラード「リトル・ウイング Little Wing」はグッとくる(しかも短い)。「明日まで待って Wait Until Tomorrow」は、ジミヘンの軽やかなギター・ワークが堪能できる。「フローティング You Got Me Floatin’」もファンキーでカッコいい。


どこが「難解」やねん。名曲ぞろいではないか。しかも古びてないし。中学生の頃に感じた「ドロドロした、得体の知れない」要素なんてない。


ジミヘンてこんなんやったけ?と、改めてファースト『アー・ユー・エクスペリエンスト? 』も聴き直してみると、それなりに「ドロドロ」していた。


そのドロドロしたファーストから7か月後に発表したセカンド『アクシス:ボールド・アズ・ラヴ』で、この洗練。すごいスピードで進化していたんだなぁ。

サウンド的にはいろいろ実験しているけど、全体の印象がポップなのがすごい。で、やはり、それを支えているのは、ギターなのだった。



ジミヘンのギターはいつも歌っている。その音色は多彩。カラフル。


そして軽やか。



ジミヘンを聴いて「軽やか」なんて言葉が浮かぶなんて、中坊の頃には想像もつかなかった。



このアルバムが発表されたのは、1967年。ザ・ビートルズが『サージェント・ペッパー・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を発表した年だ。ロックが毎日のようにアップデイトされていった時代。『アクシス:ボールド・アズ・ラヴ』がその一翼を担うアルバムであったことは間違いない。



時代と天才の幸福な出会いを『アクシス:ボールド・アズ・ラヴ』に見た。



で、結局、宇宙人は、どうなったんだろう? マンガ「じみへん」の読後感にも似た、宙ぶらりんな感覚に気づいたところで・・・・・・



おっちゃん的名盤度(5つ星が満点):★★★★★






長谷川 和芳
長谷川 和芳

長谷川 和芳 KAZUYOSHI HASEGAWA

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1969年、福岡県ディープエリア筑豊生まれ。開店休業中の雑誌編集者。九州ウォーカー、某弱小エアラインの機内誌の編集長を経て、なぜか今は京都の旅館の運営が業務の中心。あと染織作家である家人の話し相手など。