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転がる石のように名盤100枚斬り 第22回

転がる石のように名盤100枚斬り 第22回

#79 Led Zeppelin Ⅱ (1969) - LED ZEPPELIN

レッド・ツェッペリンⅡ - レッド・ツェッペリン


グレタ・ヴァン・フリートが、昨年、アメリカで若者の熱狂的な支持を集めたのには、ちょっと驚いた。だって、今時の子は、ヒップホップしか聴かないもんだと思っていたんだもん(偏見)。


「クラシック・ロックの救世主」「ロックの未来」なんてキャッチフレーズに加え、「彼らの音楽を通してのメッセージは平和、愛、団結を広めること」(UNIVERSAL MUSIC JAPANによるバイオグラフィーより)ですよ!! 


壮大や。そんな音楽が2018年の若者の心に刺さるなんて、想像もしてなかった。



評判を知って、五十路前のおっちゃんも聴いてみましたよ。



感想→「ロックやなぁ」



ネガティヴな意味ではない。ちゃんとしたロックを演奏していて、とても好感をもったのだった。


一部のロックおじさんからは「レッド・ツェッペリンのモノマネ・バンドだ」なんて揶揄する声も聞かれたけど、ツェッペリン以外のバンドからの影響も感じるし、個人的には「モノマネ」とは思わなかった。


ただ、確かに、ヴォーカルは、ロバート・プラントにクリソツ。でも、レッド・ツェッペリンにおけるロバート・プラントのヴォーカル・スタイルは、ハード・ロック~ヘヴィ・メタルのフォーミュラとして定着し、いろんなアーティストが影響を受けている。


だから、ハード・ロックを真剣にやろうと思ったら、ヴォーカルがロバート・プラント・スタイルになっちゃったってのは、仕方がないことなんじゃないかとも思う。



かく言う僕は、レッド・ツェッペリンにはさほど思い入れはない。ファーストとセカンド・アルバムは、大学生の時、CDを買った。好きだったからじゃなく、「やっぱ、聴いとかなきゃヤバい」という感じ。つまりロックの教養を高めるための「お勉強」として買ったのだ。



音楽ってのは、その時、本当に求めているものじゃないと、聴いてもまったく心に響かない。



案の定、「お勉強」として聴いたレッド・ツェッペリンには、「これがツェッペリンか、すごいねー」(棒読み)という、感想とさえ呼べないようなセリフしか浮かばなかった。すごいのはわかるけど、その頃の僕にはグッとは来なかった。


そんな僕の青春時代に比べれば、グレタ・ヴァン・フリートに熱狂する現代のティーンの方が健全だし、音楽を聴くという姿勢において圧倒的に正しい。



グレタ・ヴァン・フリートの真価が問われるのは、今年リリースされるという噂のセカンド・アルバムだろう。クラシック・ロックのフォーマットをなぞっただけのアルバムでは、ファースト・アルバム以上のインパクトは残せない。バンド・メンバーもそれは承知しているようで、型破りな作品にしようと試行錯誤しているみたい。



彼らが崇拝するレッド・ツェッペリンも、音楽的なブレイクスルーを遂げたのは、セカンド・アルバム『レッド・ツェッペリン』だ。『ローリング・ストーンが選んだ史上最も偉大なアルバム』では、79位に選ばれている。


レッド・ツェッペリンのファースト・アルバムも全米・全英でトップ10ヒットとなり、シーンにインパクトを与えたが、ブルース・ロックの進化形という受け止められ方だったんじゃないか。


でも、このセカンドは違う。このアルバムでツェッペリンは、「ハード・ロック」というジャンルを完成させる。



いきなり1曲目が「胸いっぱいの愛を Whole Lotta Love 」だもの。ジミー・ペイジのギター・リフはもちろん、間奏のジョン・ボーナムのドラムもジョン・ポール・ジョーンズのベースも、キレキレ。一方、ロバート・プラントは「君には俺の愛が必要なんだ」と粘着。明らかに体目当て。レーシングカーが目の前を走り抜けているような音が、さらに不安を掻き立てる。


この1曲で、好き嫌いは置いておいても、「こりゃフツーじゃないわ」と聴いた人は誰もが思うだろう。


3曲目の「The Lemon Song レモン・ソング」も最初はなんてこたぁないブルースかと思いきや、ロバート・プラントのヴォーカルのただならぬテンションに続き、ギター・ソロのパートでは、異様なグルーヴが炸裂。


ジミー・ペイジが気持ちよさそうにギターを弾きまくる「ハートブレイカー Heartbreaker」から、軽快なロックンロール「リヴィング・ラヴィング・メイド Livin' Lovin' Maid <She's Just A Woman> 」への流れは、スリリングかつ爽快。


ジョン・ボーナムのドラム・ソロをフィーチャーした「モビー・ディック Moby Dick」から、疾走感のあるハードロックをヘナチョコなブルース・パートで挟んだ「ブリング・イット・オン・ホーム Bring It on Home」への流れは、また違う意味で「フツーじゃない」。なんつーか、やりたい放題って感じ。



「バンドの化学反応」なんてよく言うけど、まさにそれってこれ?



このアルバムにつきまとう枕詞の一つに、「ザ・ビートルズの『アビー・ロード』をチャートの首位から引きずり下ろした」ってのがあるんだけど、確かに同じ年にリリースされたこの2枚のアルバムの間には、はっきりとした断絶が横たわっている。


『アビー・ロード』は、ザ・ビートルズのアルバムのなかでも一二を争う高い評価を得ているけど、『レッド・ツェッペリン』には、『アビー・ロード』にはない「新しさ」がある。レッド・ツェッペリンは、まさにロックの最新型、The Newest Modelだった。彼らは、このセカンド・アルバムで、見事に1960年代を葬り、70年代の扉を開けたのだった。 


レッド・ツェッペリンの前には、ジミ・ヘンドリクスもいた。クリームもいた。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドもいた。ジェフ・ベックもトラフィックもいた。

しかし、時代を塗り替えることを許されたのは、レッド・ツェッペリンだけだったわけだ。



ハード・ロックも、聴く人を選ぶ音楽ジャンルかもしれないけど、音楽好きなら、「お勉強」でもなんでもいいから、このアルバムは聴いた方がいいと思う。



でも、やっぱ、個人的には、五十路前になっても、グッとは来なかったんすけどね。その理由を探ると、長くなってしまうので、またの機会に。




おっちゃん的名盤度(5つ星が満点):★★★



グレタ・ヴァン・フリートもどうぞ。









長谷川 和芳
長谷川 和芳

長谷川 和芳 KAZUYOSHI HASEGAWA

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1969年、福岡県ディープエリア筑豊生まれ。開店休業中の雑誌編集者。九州ウォーカー、某弱小エアラインの機内誌の編集長を経て、なぜか今は京都の旅館の運営が業務の中心。あと染織作家である家人の話し相手など。