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転がる石のように名盤100枚斬り 第23回 オーティス・ブルー - オーティス・レディング

転がる石のように名盤100枚斬り 第23回 オーティス・ブルー - オーティス・レディング

#78 Otis Blue (1965) - OTIS REDDING

オーティス・ブルー - オーティス・レディング



クールなギター・カッティング、表情豊かなベースライン、華やかなホーン・セクション、キメのヴォーカルのシャウト。

僕はファンクが好きだ。


オリジネイター、JBことジェームス・ブラウンはもちろん、スライ&ザ・ファミリーストーン、アイズレー・ブラザーズ、Pファンク、スティーヴィ・ワンダー、プリンス、クレイジー・ケン・バンドなどなど。



……なんか偏ってるなぁ。すみません。



音楽が人を活性化する力を持っているのは間違いないけど、さらに、ファンクは、心の深いところから、人をポジティヴにする効能があると思う。

グルーヴに身を委ねていると、気持ちがフツフツと沸いてきて、ゆっくりと希望が頭をもたげる感じ。


僕の場合は、たとえそれが、JBの畳み掛けるような熱いライヴでもグワーッ!とは来ない。いつもフツフツと来て、ムックリ。



それって、五十路前の性的衝動・・・・・・?



それはさておき、なにが言いたいかというと、僕を一番前向きにしてくれる音楽ジャンルはファンクだということだ。


そして、今回のお題であるオーティス・レディングの『オーティス・ブルー』を聴いた時、まさにファンクを聴いた時と同じように、フツフツときてムックリ来た。


このアルバムは、『ローリング・ストーンが選んだ史上最も偉大なアルバム』では、78位に選ばれている。



バックの演奏は、オーソドックスなソウルのスタイルで、殊更にグルーヴを強調しているわけでもない。収録された11曲のうち、オリジナル曲は3曲のみで、残りはカヴァー。オーティスのソングライターとしての側面は薄く、特にメッセージ性は感じられない。でも、聴いていくと、すごく前向きになる。


結局、それは、オーティスの「声」に尽きる。和田アキ子風にいうと「希望のにおいがする」のだ。



「チェンジ・ゴナ・カム Change Gonna Come」は、アレサ・フランクリンも採り上げた、サム・クックのウルトラ名曲だが、オーティスが唄うと「時代はいい方に変わっていく。明日はいい日になる」と自然に思える。


このアルバムに収録された3曲のサム・クックのカヴァーは、どれも秀逸だ。


アップテンポな「シェイク Shake」も楽しいけど、わかりやすくフツフツムクムク来るのは、「ワンダフル・ワールド Wonderful World」。


内容は「ぼかぁ、勉強はできんけど、キミのことが大好きだし、キミがぼくのこと好きになってくれたら、それだけで、世界はワンダフル」という、小っ恥ずかしくなるくらい他愛のないものなんだけど、うん、うん、とうなずいている自分がいるのだった。



アレサ・フランクリンのヴァージョンが、フェミニストのテーマ曲認定されてしまった、オーティス作の「リスペクト Respect」も聴きどころの一つ。


オーティスの有名な発明に「ガッタ、ガッタ、ガッタ Gotta Gotta Gotta」というフレーズを繰り返すってのがあるんだけど(のちに忌野清志郎が継承)、この曲でも最後の方で「ガッタ、ガッタ」言っている。


曲の内容からすると、駄々をこねているようにしか、聴こえないんだけも。


この曲は、バックの演奏といい、オーティスのヴォーカルといい、ファンキーと言っていいくらい、カッコいい。



さらに、誰もが知ってる2曲「マイ・ガール My Girl」「サティスファクション Satisfaction (I Can’t Get No)」をカヴァーするというサービス満点ぷり。特に「サティスファクション」は、原曲以上にワイルドでファンキーな、反則と言いたくなるような仕上がり。



聴きどころたっぷり。どんな曲でも唄いこなすオーティスのヴォーカルが堪能できる。そして、聴き終わると、人生悪くないと思う。まさに名盤。



聴くたびに、その声でおっちゃんの心に希望を灯してくれるオーティス・レディングだけど、不慮の飛行機墜落事故でその生涯を終えてしまったという事実が、ひたすら悲しい。享年26歳。


全米ナンバーワンを記録した畢生の名曲「ドック・オブ・ベイ Doc of Bay」が録音されたのは、事故の3日前だった。


悲しい。


世界は「ワンダフル」なことばかりじゃない。それでも、生きていかねばならぬ僕らは、残されたオーティスの唄声を聴いて、前を向くのだ。


悲しさを乗り越える力がオーティスの声にはあると思うぞ、ってことで・・・・・・



おっちゃん的名盤度(5つ星が満点):★★★★★







長谷川 和芳
長谷川 和芳

長谷川 和芳 KAZUYOSHI HASEGAWA

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1969年、福岡県ディープエリア筑豊生まれ。開店休業中の雑誌編集者。九州ウォーカー、某弱小エアラインの機内誌の編集長を経て、なぜか今は京都の旅館の運営が業務の中心。あと染織作家である家人の話し相手など。