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転がる石のように名盤100枚斬り 第24回 バック・イン・ブラック - AC/DC

転がる石のように名盤100枚斬り 第24回 バック・イン・ブラック - AC/DC

#77 Back in Black (1980) - AC/DC

バック・イン・ブラック - AC/DC 



一般的な評価の高さはもちろん、その道の通も認めるクリエイターや作品が、個人的に、なぜかピンと来ないことがある。



たとえば、アメリカの映画監督、マイケル・マン。


テレビ・ドラマ『マイアミ・バイス』で頭角を表し、1990年代以降は劇場映画に進出。「スタイリッシュ」な映像と「ハード・ボイルド」な作風で人気を呼び、現在では「巨匠」と言っていいポジションを獲得している。


その評価は玄人の間でも高く、映画評論家であり東京大学総長も務めた、蓮實重彦が、彼の作品を大絶賛。『メメント』(2000年)、『ダークナイト』(2008年)、『ダンケルク』(2017年)と、数々の傑作をものにした鬼才、クリストファー・ノーラン監督にも影響を与えているらしい。



彼の代表作は『ヒート』(1995年)だろう。ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノという2大名優が競演し、話題を呼んだ。


マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの作者、荒木飛呂彦のオールタイム・ベスト映画らしい。ほかにも熱狂的なファンが多い作品。


困ったことに、これがまったくピンと来ないのだ。「?」と思い、DVDで繰り返し鑑賞したが、心の琴線、ピクリとも動かず。



以下、暴言。


「男の美学」が描かれているらしいけど、デ・ニーロは、インテリぶってるだけで、女好きなコソ泥に過ぎないし、パチーノは、妻の問題を見て見ぬし仕事に逃避する、ワガママなおっさんにしか見えない。


劇中の銃撃戦がリアルで臨場感が半端ないという評価もよく見るけど、ガンマニアじゃないので、よくわからない。少なくとも、該当する場面で映画的な興奮は覚えなかった。



蓮實先生が2000年代のベスト映画に挙げた、『コラテラル』(2004年)は劇場で観た。トム・クルーズが悪役を演じたのがウリの作品。トム贔屓としては見逃せない。LAの街をスタイリッシュに描く映像美も注目らしいぞ。



しかし



ストーリーは御都合主義に思えてならなかったし、映像は、どこが「スタイリッシュ」なのかわからなかった。暗いだけじゃん。舞台は夜だからね。肝心のトム演じる殺し屋は、仕事が雑だし、マヌケに見える。どうにもこうにも、この映画のどこがいいのか、まったくわからない。



この映画を観た後だ、マイケル・マンとの決別を心に決めたのは。もう、相性が悪いとしか言いようがない。


評価が定まっていて、興行収入も稼げて、熱心な支持者も少なくはない映画作家に対して、「わからない」なんて言うのは、正直憚られる。「そりゃ、お前の感性が鈍っとるのだ」と言われても仕方ない。



さて、今回のお題は、『ローリング・ストーンが選んだ史上最も偉大なアルバム』77位のAC/DC『バック・イン・ブラック』だ。


AC/DCをちゃんと聴くのは、なんと今回が初めて。でも、前々からその名は意識していた。なぜなら、いつのことかは忘れたけど、かの山下達郎が、AC/DCを絶賛していたからだ。



「達郎が絶賛したハードロック・バンド」



中高生のころから、僕にとってAC/DCと言えば、これに尽きる。


ずっと気にはなっていたのだけど、CDを購入するきっかけもなく、五十路前にようやくアルバムに向き合ったというわけ。だから、それなりにワクワクしながら、プレイ・ボタンを押した。



そして


気がつくと、アルバム1枚聴き終わっていた。



あれれ? よくわからないのでリピート再生。


あれれ? いつの間にか終わってる。リピート再生。



そんなこんなで、3回再生した後の感想は、「すっごい機能的な音楽だなぁ」だった。



ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルというシンプルなバンド編成で繰り出す演奏は、ハード・ロックの王道。印象に残るギター・リフといい、タイトなリズム隊といい、ワイルドなヴォーカルといい、世界中の人々が心に思い描く「ハード・ロック」を具現化したような音楽だ。


パーティにぴったり。ただし、80年代のプールサイドに限る。



アルバム・セールスの記録は、集計方法によって結果が異なるらしいのだけど、この『バック・イン・ブラック』は、間違いなく売上枚数トップ10に入っているようだ。なるほど。このアルバムが愛される理由はわかる。


ちゃんと聴くと、いい曲がそろっているし、演奏もカッコいい。聴き終わると爽快感が残る。何よりも音がクリーンで聴きやすい。ハード・ロックなのに、大音量でかけていても、仕事の邪魔にならない。



でも、これって褒めてないよね。



ハード・ロックとして過不足ないけど、過不足ないってことは、心に引っかかるものもないわけで。映画のBGMなんかで流れる分には、邪魔にならなくていい。しかし、あえて自分で聴こうと思うほどのインパクトは感じなかった。



何が達郎御大の心を動かしたんだろう? わからん。



リチャード・リンクスレイター監督の大傑作音楽映画『スクール・オブ・ロック』(2003年)の劇中で、ジャック・ブラック扮する教師と生徒たちがカバーしているのは、AC/DCの楽曲だそうだ。この映画、DVD持っているし、何回も観ているんだけど、どんな曲が流れたか、まったく思い出せない。悲しいかな、結局、AC/DCは、僕にはピンと来ないようだ。



でも、誰それが評価したから、自分も好きにならなきゃならないなんてことはないし、権威や格付けに自分が下した評価が左右されるなんてくだらない。たとえ「お前の感性が鈍っている」と言われても、潔く「わからんものはわからん」と言うべきなのだ。


この連載で追いかけている『ローリング・ストーンが選んだ史上最も偉大なアルバム』は、格付けの最たるものなんだけど、所詮は過去の名作を聴くきっかけにすぎないしね。と開き直ったところで・・・・・・




おっちゃん的名盤度(5つ星が満点):★★



長谷川 和芳
長谷川 和芳

長谷川 和芳 KAZUYOSHI HASEGAWA

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1969年、福岡県ディープエリア筑豊生まれ。開店休業中の雑誌編集者。九州ウォーカー、某弱小エアラインの機内誌の編集長を経て、なぜか今は京都の旅館の運営が業務の中心。あと染織作家である家人の話し相手など。