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転がる石のように名盤100枚斬り 第1回

転がる石のように名盤100枚斬り 第1回

#100 Odessey and Oracle (1968) - THE ZOMBIES

『オデッセイ・アンド・オラクル』 - ゾンビーズ


20196月公開予定の映画『WE ARE LITTLE ZOMBIES』(監督:長久允)は、 日本映画で初めて、サンダンス国際映画祭の審査員特別賞およびオリジナル賞を受賞したことで話題を呼んだ。両親の死により感情を失った4人の子供達(=ゾンビ)が、”LITTLLE ZOMBIES”という名のバンドを結成し、音楽を通して成長していくというお話。福岡ではおなじみ、個性的な肖像画を描く少年画家、モンドくん(奥村門土)も、4人のうちの一人として出演している。

さて、『ローリング・ストーンが選んだ史上最も偉大なアルバム』1枚目は100位にランクインした、イギリスのバンド、ゾンビーズ(The Zombies)のセカンド・アルバムにしてラスト・アルバムだ。

映画に登場するバンド”LITTLE ZOMBIES”の命名の理由はわかるけど、なんでこのイギリス人達が「ゾンビ」を名乗ったのかはよくわからない。一説によると「ゾンビーズなんてひどいネーミングなら、ほかのバンドとカブらないだろう」という思惑だったとか。投げやり。アルバム2枚で解散したのもうなずけるエピソードだ(2004年に一部メンバーで再結成してるみたいだけど、死んだのに生き返ったって、それってホントにゾンビ)。

このアルバムからは「Time Of The Season ふたりのシーズン」というヒット曲が生まれており、数年前には日本でクルマのテレビ・コマーシャルにも使われた。

さて、アルバムのトップを飾るナンバー「Care of Cell 44」。ポップで軽快な出だし。ん? この曲知ってる。あれだ、マシュー・スイートとスザンナ・ホフスが、カバーしてたわ(『Under The Covers, Vol. 1』)。サビのスザンナのボーカルがグッとくるんだなぁ。オリジナルはボーカルも柔らかくて、ソフト・ロックぽいおしゃれな感じ。素敵なラブ・ソングやんと思い、邦題を確認すると「独房44」。え?

2曲目以降も良質なポップ・ソングが並ぶ。ミディアム調の端整な印象のナンバーが多く、メロディはいいしアレンジも凝っている。「Changes」なんて曲はコーラスがビーチ・ボーイズみたいで面白い。それに続く「I Want Her To Want Me」「This Will Be Our Years」は、いかにもブリティシュ・テイストのメロディが冴える。しかしだ。確かに聴いてると気持ちいいんだけど、「!?」と耳を引く瞬間はない。

そんな中で、ラストに置かれた「Time Of The Season ふたりのシーズン」は、イントロから異色。ドラムから静かに入ってコーラスが「あ~」(テレビ・コマーシャルでも使われたパート)。怪しい。だいたい「Time Of The Season」、要は「季節の時」ってなん?と怪訝に思い、歌詞に目を通すと「It’s the time of season for loving」ということで、「愛を交わす季節だよ~」ということらしい。ついでにそのフレーズの前に入る「君の名前は?/君のお父さんは誰?/お父さんも僕みたいにお金持ちなん?」とかいう歌詞が目に入る。怪しい。こいつ、絶対金持ちじゃないでしょう。

イギリス人だけあって、歌詞にまで踏み込むと、一筋縄ではいかないようだけど、サウンドは実にウエルメイドなポップス。

歴史的な文脈では、1968年発表でメロトロン(磁気テープを使ったアナログのサンプリング・マシン)を使っていることから、ザ・ビートルズの『サージェント・ペッパー・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(1967年)の影響を強く受けていると評される。でも、2018年に聴くと、革新的な印象はゼロ。よくできたポップ・アルバムだなぁという感想しか、50前のおっちゃんからは出て来ない。『サージェント・ペッパー~』が、革命的云々以前にとても良質なロック・アルバムであることと同様なので、けなしているのではなく、褒めている。つまりは普遍性があるということだ。

良曲揃いなんで、若いポップス好きも満足できるはず。ただし、「名盤」と呼ぶには軽量級の感は否めない。ということで・・・・・・


おっちゃん的名盤度(5つ星が満点):★★★







長谷川 和芳
長谷川 和芳

長谷川 和芳 KAZUYOSHI HASEGAWA

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1969年、福岡県ディープエリア筑豊生まれ。開店休業中の雑誌編集者。九州ウォーカー、某弱小エアラインの機内誌の編集長を経て、なぜか今は京都の旅館の運営が業務の中心。あと染織作家である家人の話し相手など。