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転がる石のように名盤100枚斬り 第32回レッド・ツェッペリンⅣ - レッド・ツェッペリン

転がる石のように名盤100枚斬り 第32回レッド・ツェッペリンⅣ - レッド・ツェッペリン

#69 Led Zeppelin Ⅳ (1971) - LED ZEPPELIN

レッド・ツェッペリンⅣ - レッド・ツェッペリン



どんなアーティストにも「最高傑作」がある。



たとえ一発屋でも例外ではない。


たとえば、セックス・ピストルズは、『勝手にしやがれ!! Never Mind the Bollocks, Here's the Sex Pistols』を聴けばいい。名曲「マイ・シャローナ My Sharona」で名高い一発屋の代表格、ザ・ナックも、デビュー・アルバム『ゲット・ザ・ナック Get the Knack』は、間違いなく傑作。全米アルバム・チャートで5種連続1位を記録している。



それが、名作を何枚も生み出しているアーティストだと、こうは簡単にいかない。


この連載でも紹介したニール・ヤングの最高傑作は、『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』と『ハーヴェスト』で意見が分かれる。ルー・リードの最高傑作は『トランスフォーマー Transformer』か、それとも『ベルリン Berlin』か? ローリング・ストーンズなら『メイン・ストリートのならず者 Exile on Main St.』? 『スティッキー・フィンガーズ Sticky Fingers』? 『べガーズ・バンケット Beggars Banquet』?



さらに厄介なのが、キャリアを追うごとに進化・発展していったアーティストだ。


たとえば、ジミ・ヘンドリクス。アルバムごとに新たな世界観を獲得していった彼の最高傑作は?


たとえば、ザ・ビートルズ。『サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』は、その革新性によって、彼らの最高傑作と評価されてるけど、中期の名盤『リヴォルヴァー Revolver』、最後期の『アビー・ロード Abbey Road』を推す声も根強い。


映画も含めたポップ・カルチャーに与えたインパクトを考えると『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! A Hard Day’s Night』が最高だという見方も可能だし、メンバー4名の個性がせめぎ合う『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム) The Beatles』を最高傑作とする評価する声も、最近、散見されるようになった。



 このクラスのアーティストの「最高傑作」は、時代によって変わっていくのかもしれない。



そこで、今回のお題、『レッド・ツェッペリン』である。ツェッペリンの最高傑作と名高い一枚。『ローリング・ストーンが選んだ史上最も偉大なアルバム』では69位にランクイン。


『レッド・ツェッペリン』(1969年・79位)、『フィジカル・グラフィティ』(1975年・73位)と、ここまで聴いてきたわけだけど、レッド・ツェッペリンもまた、ビートルズのように、アルバムごとに進化を遂げてきたバンドだろう。


『レッド・ツェッペリン』は、その名の通り彼らの4作目のアルバムだ(本当はタイトルがなく、『レッド・ツェッペリン』ってのは便宜上のものらしい)。彼らが残したスタジオ録音盤は全部で9枚なので、キャリアの前半に分類できる。



この作品が本当に彼らの「最高傑作」なのか? 参考までにWEBで「レッド・ツェッペリン 最高傑作」と検索してみた。すると、これまた、ひと筋縄ではいかないことがわかる。


もちろん『』を挙げる人が圧倒的に多いけど、『』(1969年)、『プレゼンス Presence』(1976年)への支持も熱い。


  Yahoo!知恵袋』では、2013年に「Led Zeppelinのアルバムで最高傑作は?」というスバリなお題が出されている。そこには、9件の回答が寄せられているが、見事に意見が割れている。『』『』『フィジカル・グラフィティ』が2票ずつ、『』『プレゼンス』『聖なる館 House of The Holy』(1973年)が1票ずつ。


 どの作品が最高傑作なのかはわからんかったけど、みんながツェッペリン大好きなことはわかった。



』の評価で多いのは、「ツェッペリン初心者にピッタリ」というものだが、これは、やはり「天国への階段 Stairway to Heaven」「ロックン・ロール Rock and Roll」という2大代表曲が収録されているからだろう。


ツェッペリン・ファンじゃない僕でも、この2曲はなじみ深い。逆に言うと、この2曲以外の『』の曲は、聴いたことがない。五十路に突入する直前に聴いてみた。



ツェッペリンらしさが詰まったハード・ロック・ナンバー「ブラック・ドッグ Black Dog」で幕を開け、続く「ロックン・ロール」で疾走感を増し、テンションがググッと上がったところで、アイルランド民謡みたいな「限りなき戦い The Battle of Evermore」が入りクールダウン。そして超名曲「天国への階段」へ雪崩れ込むという


流れ。


完璧。


できすぎ。


言葉は悪いけど、あざとい。



レコードだと、ここまでがA面。もうお腹いっぱいという感じだけど、AppleMusicは、そんなことお構いなし。インターバルなしで次の曲に突入。


「天国の階段」で感極まった後なので、地味な印象を受けるけど、実は残りの4曲も味わい深い。


「ミスティ・マウンテン・ポップ Misty Mountain Hop」は、なんかクセになるメロディとリズムをもったミディアム・ロック。キーボードが変なグルーヴを生む。


「フォア・スティックス Four Sticks」は、独特のリズムがカッコいい。タイトルは、ジョン・ボーナムが片手に2本ずつスティックを握って、4本(「フォア」つーか「フォー」なのね)のスティックでドラムを叩いたことに由来するんだって。カンフーの使い手か。


「カリフォルニア Going to California」は、マンドリンがのどかな雰囲気を醸し出しているけど、ジョニ・ミッチェルに捧げた曲らしい。そう言われれば、まんまジョニ・ミッチェル風味。


ラストの「レヴィー・ブレイク When the Levee Breaks 」は、ハーモニカをフィーチャーしたブルージーなナンバーだが、1920年代の楽曲のカバー。こういう渋いチョイスもまたツェッペリンらしい。



このアルバムは、前半と後半のバランスが悪い気もするけど、それがかえって、聴き込むほどに味が出る懐の深さにつながっているんじゃないだろうか。「傑作」なのは間違いない。



問題は「最高」なのかどうかというところ。


ミュージック・シーンに与えたインパクトでは『』に軍配が上がるし、ツェッペリンのストレンジさが存分に発揮されたのは、『フィジカル・グラフィティ』じゃないだろうか。



しかし、完成度の高さと「天国への階段」効果で、『』は、この2枚に比べても、頭ひとつ抜けている。「最高傑作」認定。



となると、69位という『ローリング・ストーンが選んだ史上最も偉大なアルバム』での順位が引っかかる。


史上最大のロック・バンドの一つ、レッド・ツェッペリンの最高傑作ですよ。『ローリング・ストーン』誌によるレヴューでも「70年代ハード・ロックの頂点」と絶賛。それなのに69位。順位、低すぎないか?


もしかしたら、『ローリング・ストーン』が、『』以上に高い評価を与えたツェッペリンのアルバムが存在するんだろうか?



その可能性も捨てきれないので、ひとまず「最高傑作」認定は保留としておこう。



おっちゃん的名盤度(5つ星が満点):★★★★★









長谷川 和芳
長谷川 和芳

長谷川 和芳 KAZUYOSHI HASEGAWA

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1969年、福岡県ディープエリア筑豊生まれ。開店休業中の雑誌編集者。九州ウォーカー、某弱小エアラインの機内誌の編集長を経て、なぜか今は京都の旅館の運営が業務の中心。あと染織作家である家人の話し相手など。