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転がる石のように名盤100枚斬り 第2回

転がる石のように名盤100枚斬り 第2回

#99 There’s A Riot Goin’ On (1971) - SLY & THE FAMILY STONE

『暴動』- スライ&ザ・ファミリー・ストーン


『ローリング・ストーンが選んだ史上最も偉大なアルバム』を100位からカウントダウンしてレビューする連載。

前回、100位のゾンビーズ『オデッセイ・アンド・オラクル』を指して「軽量級」などと口を滑らせてしまったけど、いきなり99位に来ましたよ、重量級。

このアルバムはCDを持っている。なんで買ったかは覚えていないけど、プリンスが『Sign Of The Times サイン・オブ・ザ・タイムス』をリリースした際に、スライの影響が取り沙汰されたことがきっかけのような気がする。

今では「プリンスの影響が大」なんて文句に惹かれて、ディアンジェロやジャネール・モネイの音源に手を伸ばす。歳はとったけど成長していない証拠か。

プリンスについては、いずれ触れることになると思うので、『暴動』の話に戻ろう。タイトルから公民権運動に関するポリティカルなアルバムみたいな印象をなんとなく持っていたんだけど、発表された1971年は、「暴動」の代名詞とも言えるワッツ暴動(1965年)から6年が、キング牧師暗殺(1968年)から3年が経過しており、話はそう簡単ではない(1970年、シカゴで彼らがフリー・コンサートを主催した際に起こった「暴動」を指すという説も)。

実際に聴いてみると、「暴動」というタイトルにふさわしい「熱さ」「熱狂」は全く感じられない。むしろ冷めた印象。同じ汗でも、振り上げた拳から飛び散る汗ではなく、背中を伝う冷たい汗を思わせる。実はこのアルバムは、スライが一人で多重録音で作り上げたもので、ローファイの元祖とも言われている。その背景にあるのが、スライの麻薬問題。このアルバムを制作する直前には、ドラッグの影響で精神的にもヤバい状況に陥っており、バンドの面々に愛想を尽かされたため、一人で制作せざるを得なかったのだ。麻薬問題がベースにあると考えると、音から感じる「冷たい汗」という印象は、間違っていないかもしれない。まさに禁断症状を彷彿とさせる(麻薬やったことないので、知らんけど)。

音はどうかというと、重い。いや、軽い。サウンド・プロダクションは至極シンプルで、隙間だらけ。ドラムボックスもポコポコ言ってる。そいう意味では軽い。でも、音と行間に緊張感がみなぎっているような。たまに溢れてくるスライのしゃがれたシャウトとか、変哲ものないキーボードの音色とか、切り込んでくるギターのカッティングとかに、不穏なものを感じてしまう。だから通して聴くと「お、重かった」となる。

4曲目の「Family Affair」は、ヒットチャートで1位を獲得した、彼らの代表作だけど、スライのボーカルは「歌」というよりも「ぼやき」。詞の内容も「家庭の事情はそれぞれ/しんどいよね」って感じで、音同様、閉塞感が強い。開放感はゼロ。

Runnin’ Away」は、キャッチーでかわいらしいチューンだけれども、途中に入る「アハアハ」「イヒイヒ」が、なーんか笑っているように聴こえない。詞を読むと、どうも借金取りから逃げているようだ。そりゃ、笑えない。

1曲前に収録されている「Spaced Cowboy」はタイトル通りの曲。「Space Cowboy」だと、ジャミロクワイの曲名か、デジタル・ロックで人気を博したイギリスのDJのことだけど、「Space」に「d」がつくと「クスリでラリってるカウボーイ」という意味になる。出だしはクールなファンクかと思いきや、途中でヨーデル歌いだしちゃうのもむべなるかな。曲も演奏のテンションも変だけど、スライはジャンキーの滑稽さを自覚していたということか。

こんなアルバムなので、BGMとして気楽に聴く気には、なかなかならない。でも、一旦聴聴き始めると、密室的なファンクにハマってしまう。この中毒性は、スライ&ファミリーストーンのアルバムでもピカイチ。それってやはり最終的にはスライが破滅する要因となった、ドラッグの影響なんだろうか。

とっつきやすいとはいえないけれど、聴くほどに味が出る、まさに「名盤」にふさわしい一枚。ということで・・・・・・


おっちゃん的名盤度(5つ星が最高):★★★★★







長谷川 和芳
長谷川 和芳

長谷川 和芳 KAZUYOSHI HASEGAWA

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1969年、福岡県ディープエリア筑豊生まれ。開店休業中の雑誌編集者。九州ウォーカー、某弱小エアラインの機内誌の編集長を経て、なぜか今は京都の旅館の運営が業務の中心。あと染織作家である家人の話し相手など。