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転がる石のように名盤100枚斬り 第39回アぺタイト・フォー・ディストラクション - ガンズ・アンド・ローゼズ

転がる石のように名盤100枚斬り 第39回アぺタイト・フォー・ディストラクション - ガンズ・アンド・ローゼズ

#62 Appetite for Destruction (1987) - Guns N’ Roses

アぺタイト・フォー・ディストラクション - ガンズ・アンド・ローゼズ



思えば、僕の人生、ハード・ロックとは縁遠い50年だった。・・・・・・なんつって、つぶやいてみたけど、そうでもないような気がしてきた。たとえば、1980年代から90年代にかけてビッグ・ヒットを連発したアメリカン・ハード・ロックの代表格、ヴァン・ヘイレン。


オリジナル・アルバムは1枚も持っていないけど、2004年に発売されたベスト盤『The Best Of Both Worlds / ヴェリー・ベスト・オブ・ヴァン・ヘイレン』を購入してからは、繰り返し聴いている。2枚組全36曲の大ヴォリュームで、ファースト・アルバムから、1995年発表の10枚目のアルバム『バランス  Balance』までを網羅してて、とってもお得。


五十路のおっちゃんにとって、やっぱりこのバンドは、1984年の全米ナンバーワン・ヒット「ジャンプ Jump」に尽きる。


明るく正しいハード・ロック。イントロのいかにも80sなシンセ、デイヴ・リー・ロスのアッパーなヴォーカル、エディ・ヴァン・ヘイレンのさりげない「ライトハンド奏法」、そのすべてがタマらん。


実はこの曲は、ビルの屋上から飛び降り自殺しようとしている男に対して、「跳んじゃえよ!」とはやし立てる群集の残酷さを描いているという説がある。それを真に受けたロディ・フレイム(アズテック・カメラ)がカヴァーしてたけど、そういう文学的というか社会風刺的なのはいらない。


あくまでも能天気に「ジャァンプ!」と叫びたい。80年代は、そんな時代だったのだ。



さて、今回のお題は、ハード・ロックの最重要バンドの一つ、ガンズ・アンド・ローゼズのデビュー・アルバムである。ガンズは、ヴァン・ヘイレンと並んで、よく聴いたハード・ロック・バンドだ。このアルバムは『ローリング・ストーンが選んだ史上最も偉大なアルバム』62位だってんだから、かなりの高評価だなぁ。



ヴァン・ヘイレンとは違って、ガンズ・アンド・ローゼズのオリジナル・アルバムは何枚か持っている。CD棚には、このデビュー盤のほかに、1988年のミニ・アルバム『GN'R ライズ』、アメリカでは陽の目を見なかった『アペタイト~』のジャケットを流用した日本編集ライヴ盤『ライヴ・フロム・ザ・ジャングル』、2枚同時リリースという財布に優しくない1991年の「ユーズ・ユア・イリュージョン』ⅠとⅡが並んでいる。


これ見ると、大学生のころの自分は、かなり熱心にガンズを聴いていたみたい。



獅子舞みたいな髪型した、いかにもハードでロックなあんちゃんが、甲高い声で歌う姿は、従来のハード・ロック/ヘヴィー・メタル・バンドと変わりなかったんだけど、ストリートっぽいところが、決定的に違う。疾走感と切迫感がみなぎっている。デビュー当時、「パンクを通過したハード・ロック・バンド」とか評されていたけど、そういうとこなんだろう。


アルバムの冒頭を飾る「ウエルカム・トゥ・ザ・ジャングル Welcome To The Jungle」の冒頭、スラッシュのギターに、アクセル・ローズの咆哮が重なり、さらにドラムが加わって、緊張感が頂点に達したところで、「チャー!」という掛け声とともにファンキーなギターリフが炸裂。切れ味抜群。デビュー・アルバムのオープナーとして、理想的な一曲。いま聴いても十分熱い。



シャナナナナナ、ニー、ニー!



この曲だけではなく、「イッツ・ソー・イージー It’s So Easy」「ミスター・ブラウンストーン Mr. Brownstone」などなど、次々とキャッチーなロックン・ロールが繰り出される。加えて「パラダイス・シティ Paradise City」「スイート・チャイルド・オブ・マイン Sweet Chile O’ Mine」という名曲も控えているという充実ぶり。テンションの高さは、「本番」の音声が入るという曰く付きの「ロケット・クイーン Rocket Queen」まで衰えることはない。最後の最後まで躁状態が続く。


ハード・ロックやヘビメタは聴かないけど、ガンズは好きという人が、僕も含めて、当時は結構いたんじゃないか。彼らが登場した1987年は、バブル景気によって日本全国が浮かれ始めたころで、このアルバムの高揚感が時代の空気にピッタリ合った。



そういうわけで、一時期は、かなり熱心に聴いていたけど、不思議なことに『ユーズ~』がリリースされた1991年以降は、すっかりガンズ・アンド・ローゼズに対する興味を失ってしまった。


バブル景気が弾けたのが、まさにその1991年だったんだけど、別にそんなことを意識してガンズを聴かなくなったわけではない。思い返すと、この年の秋、あるアルバムがリリースされたことが大きい。


そう、ニルヴァーナのセカンド・アルバムにして歴史に残る超名盤『ネヴァーマインド Nevermind』だ。1991年9月に全米で発売。その直後、日本のショップにも輸入盤が並んだ。


『ネヴァーマインド』の1曲目「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット Smells Like Teen Spirits」を初めて聴いたとき、バブルな浮かれ気分はブッ飛んだ。喉に血をにじませるようなカート・コバーンのシャウトに撃ち抜かれた。圧倒的にリアルだった。切実だった。


1991年くらいには、「こんな浮ついたな時代、いつまでも続くわけない」とみんな、薄々は感じていた。でも、そんな漠然とした不安から、目をそらしていたんだろう。『ネヴァーマインド』を聴いて、僕らは、ようやく、現実に向き合う時が来たことに気づかされた。


そして、その時、ガンズ・アンド・ローゼズというバンドは僕の中で色あせてしまったのだった。


シャナナナナナ、ニー、ニー!とか言ってる時代は終わったのだ。



でも、2020年から振り返ってみると、バブル時代は、音楽を楽しむには悪い時代ではなかった気がする。今ほど音楽ファンは細分化されておらず、よりボーダレスに、いろんなジャンルの音楽が世の中で鳴っていた。


その後、ニルヴァーナのブレイクに伴って、等身大なオルタナティヴ・ロックが全盛を迎える。それはそれで胸に迫ってくるものがあったけど、言ってみれば、あまりに現実的で夢も希望もない音楽だった。逆にバブル時代は、現実と乖離した「夢と希望」しかない、薄っぺらな時代だったのかもしれんけど、音楽がもっとキラキラしていたように思う。


ヴァン・ヘイレンのエディ・ヴァン・ヘイレンが、マイケル・ジャクソンの「今夜はビート・イット Beat It」でギター・ソロを披露したのが1982年。ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュが、同じくマイケルの「ブラック・オア・ホワイト Black or White」のイントロで軽やかにギターをかき鳴らしたのが1991年。


この2つのシングルの間に横たわる、およそ10年間が、80年代育ちのおっちゃんの青春時代だったのかもしれないな。


そのど真ん中に投下されたガンズ・アンド・ローゼズのデビュー盤が、おっちゃんにとってあの時代を象徴する大切な一枚であることは間違いない。



おっちゃん的名盤度(5つ星が満点):★★★★★








長谷川 和芳
長谷川 和芳

長谷川 和芳 KAZUYOSHI HASEGAWA

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1969年、福岡県ディープエリア筑豊生まれ。開店休業中の雑誌編集者。九州ウォーカー、某弱小エアラインの機内誌の編集長を経て、なぜか今は京都の旅館の運営が業務の中心。あと染織作家である家人の話し相手など。