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転がる石のように名盤100枚斬り 第42回#59 Chronicle, Vol. 1 (1976) - CREEDECE CLEARWATER REVIVAL クロニクル - クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル

転がる石のように名盤100枚斬り 第42回#59 Chronicle, Vol. 1 (1976) - CREEDECE CLEARWATER REVIVAL クロニクル - クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル

今回のお題はC.C.R.である。「C.C.R.」すなわち「クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル」。中学生の頃、これをソラで言えたとき、なんだか嬉しかったことを覚えている。


とは言っても、このバンドのことはほとんど知らない。僕がもっている知識は、ジョン・フォガティって人が中心メンバーだってことと、「雨を見たかい Have You Ever Seen The Rain?」が代表曲ってことくらい。



「雨を見たかい」は、本当にいい曲だなぁ。昔から大好きだった。


昔むかし、ある人が教えてくれた

嵐の前の静けさについて

そうだね、たまにそんなことがあるよね


聞いた話だと、静かな時間が過ぎると、

晴れた空から雨が落ちてくるだろうって

そうだね、キラキラ輝きながら降ってくるよね


教えてよ、雨を見たことあるかい?

教えてよ、雨を見たことあるかい?

晴れた日に降る注ぐ雨を



他愛もないと言えばそうなんだけど、ゆったりとしたカントリーな曲調と相まって、何回聴いてもグッと来る。キラキラ光る雨が、目に見えるようだ。



ところが、ここで歌われている「雨」は、ベトナム戦争で使用されたナパーム弾のメタファーだっつーんだから驚いた。ジョン・フォガティーは否定しているけど、一説によると「反戦歌だとわかると、ラジオで放送禁止になるからごまかしたのだ」そうだ。


で、実際にアメリカでは放送禁止になっている。


ジョン・フォガティが上記の解釈を否定したのは1997年なんだから、「放送禁止を避けるため」なわけはなく、本人たちはまったく反戦歌なんてつもりはなかったんだろう。


それなのに、放送禁止になり、いまだに上記の解釈が流布されている。曲が作者の手を離れて完全に独り歩きしてしまった。こんなこともあるんだなぁ。



ローリング・ストーン誌が『史上最も偉大なアルバム』59位にC.C.R.をセレクトしたということで、今までちゃんと聴いていない彼らのどんな名盤と出会えるのかと思ったら、これがベスト盤の『クロニクル』。


「偉大なアルバム」の100位以内にベスト盤をランク・インさせるとは、どないなっとんねんという話は、61位のスライ&ザ・ファミリーストーンのベスト盤の回でしたばかりだ。



C.C.R.って『バイヨー・カントリー』とか、名盤がいっぱいあんじゃないの? 「なんでベスト盤なのよ?」と今回も思ったんだけど、『ローリング・ストーン』誌のレヴューを読んで納得した。


C.C.R.1968年から1972年初頭までの期間に、なんと13曲のトップ40ヒットを放った。これはアメリカのバンドでは特筆すべき記録なんだって。


1960年代後半から70年代前半って、アルバム・アーティストが多かったイメージがあるけど(レッド・ツェッペリンはイギリスで2枚しかシングルを発売してない)、C.C.R.はシングル・チャートの常連だった。シングルを集めたベスト盤を紹介する意義はあるわけだ。


カントリー・ロックは、アメリカ中西部の田舎にあるバーのジュークボックスから流れてくるイメージがあるし、C.C.R.がシングルを切りまくったのも、そういう需要を狙ったのかななどと、勝手に想像しながら『クロニクル』を聴き始めました。



1曲目は「スージーQ Suzie Q」。全然、カントリーじゃない。これってブルース・ロック。ザ・ローリング・ストーンズもカヴァーしたロカビリーのカヴァーなのだった。


続く「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー I Put A Spell On You」なんて、原曲は、映画『ストレンジャー・ザン・パラダイス Stranger Than Paradise』(1984年)でおなじみの、スクーリーミン・ジェイ・ホーキンスの悪魔的な名曲。



C.C.R.がカントリー・ロックのバンドだなんて、誰が言ったのか?



・・・・・・はい。誰もそんなこと言ってない。「雨を見たかい」のイメージが強すぎて勝手に僕がそう思っていただけでした。「クリアウォーター・リヴァイヴァル=澄んだ水が復活した」なんてバンド名も、自然派カントリーって感じでいいなぁとか思っていた。



実際、3曲目の「プラウド・メアリー Proud Mary」から、段々カントリー風味が増してくる。「バッド・ムーン・ライジング Bad Moon Rising」「ルッキン・アウト・マイ・バック・ドア Lookin’ Out My Back Door」なんてモロ、カントリー。


かと思えば、「グリーン・リヴァー Green River」「ロング・アズ・アイ・キャン・シー・ザ・ライト Down As I Can See The Light」なんかはやはりブルース色が濃いし、「ダウン・オン・ザ・コーナー Down On The Corner」も、黒っぽいコーラスが特長。「アップ・アラウンド・ザ・バンド Up Around The Band」は、手拍子が楽しいストレートなロック・ナンバー。


共通しているのは、アメリカらしいグッド・ミュージックだということだ。通して聴くと、彼らのシングルがヒットしたのもうなずける。全体的にキャッチーで、カー・ステレオで流すのにピッタリ。



「ん?」と立ち止まったのは、1970年の「ラン・スルー・ザ・ジャングル Run Thorough The Jungle」。どこかで聴いた覚えがあると思ったら、ベン・スティーラー主演の映画『トロピック・サンダー/史上最低の作戦  Tropic Thunder』(2008年)で流れていた。


ベトナム戦争に題をとった映画を撮影しているつもりが、実は、麻薬組織が支配する、本当の戦闘地帯に迷い込んでいたという設定のコメディ映画で、「ラン・スルー・ザ・ジャングル」は、映画のキャストがジャングルを進むシーンで使われている。


コメディ映画の一場面で使われるということは、アメリカでは、世間一般にベトナム戦争関連ソングとして浸透していたということだろう。人々が「雨を見たかい」にベトナム戦争を無理にでも重ねようとする伏線がここにあった。



C.C.R.は、「ラン・スルー・ザ・ジャングル」で、戦争に放り込まれた兵士の過酷な現実を告発している。でも、それだけでは、ファンの気持ちは収まらなかったんだろうな。


C.C.R.は俺たちの代表なんだから、俺たちと同様、ベトナム戦争反対の旗幟をより鮮明にすべき。もっと反戦ソングを!!」


なんてことを当時のアメリカの若者は考えていたんじゃないのかな。1970年にリリースされた「フー・ウイル・ストップ・ザ・レイン Who Will Stop The Rain」も聴く人が聴けば反戦歌らしい。僕の耳には耳ざわりのいいフォーク・ロックとしてしか響かないんだけど。そして雨つながりで「雨を見たかい」も、ファンによって反戦ソング認定されてしまった。



でも、見方を変えると、それだけC.C.R.とその音楽を、当時の若者が熱狂的に支持していたということなんだろう。きっとファンは自分たちとC.C.R.を同一視していたんだと思う。


ファンダムの功罪が問われるのは、いまに始まったことではなかったか。



C.C.R.は、5年間の活動ののち、1972年の10月に解散してしまう。そして、アメリカ軍がベトナムから完全撤退したのは、翌年、1973年の1月のことだった。


まったくの偶然だけど、その偶然は、バンドにとって必ずしも幸福なことではなかったんじゃないかと、個人的には思う。ベトナム戦争のおかげで、彼らの真意が当時のリスナーには、正しく届かなかった。


もちろん、リスナーには曲を自分なりに解釈する自由はある。でも、結果的にその曲が放送禁止になるとなると、話は別だろう。



幸い、彼らが産んだグッド・ミュージックは、時代を超えて生き残っている。まずは先入観をなくし、音楽に向き合ってみることをおすすめしたい。



おっちゃん的名盤度(5つ星が満点):★★★










長谷川 和芳
長谷川 和芳

長谷川 和芳 KAZUYOSHI HASEGAWA

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1969年、福岡県ディープエリア筑豊生まれ。開店休業中の雑誌編集者。九州ウォーカー、某弱小エアラインの機内誌の編集長を経て、なぜか今は京都の旅館の運営が業務の中心。あと染織作家である家人の話し相手など。