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転がる石のように名盤100枚斬り 第3回

転がる石のように名盤100枚斬り 第3回

#98 This Year’s Model - Elvis Costello (1978)

『ディス・イヤーズ・モデル』- エルビス・コステロ


201904/05、福岡が生んだ超期待のバンド、Attractionsの凱旋ライブ。詳細は栗善氏のレポートに譲るとして、その日、Drum Be-1に僕もいた。ライブに足を運ぶことなんて滅多にないのに、珍しく「こりゃ、行かなきゃ」という心境になったきっかけは、昨年12月のとある忘年会でのこと。知人女性Tちゃんが話しかけてきた。


Attractionsって知ってます?」「知ってるけど、なんで?」「周りで話題になってて」


驚いた。Attractionsは、デビューEPAppleMusicがプッシュしていたこともあり注目していたけど、特に音楽ファンでもないTちゃんの口からその名前が出てくるとは思わなかった。福岡には素晴らしいミュージシャンがたくさんいるが、盛り上がっているのは一部のコアな音楽ファンだけだったりする。Tちゃんみたいな一般の人の間でも話題になっているってのは、なんかすごいことが起きているんじゃないかと、その時思ったのだ。ちょうど、フルアルバム『DISTANCE』がリリースされたばかりだったので、聴き込みました。なんてったって楽曲がキャッチー。サウンドが耳に残る。それをライブで演るんだから、盛り上がらないわけない。キラーチューン連発。思わず踊ってしまい、翌朝、腰が固まってしまった五十路前。そして、改めて思ったんだけど、Attractionsみたいに、ティーンも大学生諸君もOLさんも、僕のような50前のおっちゃんも聴けるバンドが福岡にいるってのは、すばらしい。


『ローリング・ストーンが選んだ史上最も偉大なアルバム』98位は、このAttractionsがエルビス・コステロと初めて組んだアルバム。


嘘です。こっちの「Attractions」は「The」が付く。「ジ・」アトラクションズ。


しかし、連載3回目にしてこのメガネおじさん(この当時はあんちゃんか)が登場しようとは・・・・・・。先に告白しておくと、このメガネのおじさんは、中高大学生のころの僕にとって、アイドルのような存在だった。高校に入学した時、コステロを真似て黒縁のメガネを買ったほど(友人はメガネをかけた僕を見て「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」と言った=昭和ネタ)、一時期の僕はコステロを「崇拝」していたのです。冷静なレビューなんて無理なのだ。


初期のコステロは、「パンク」「ニューウェーブ」分類されるけど、僕は純粋に「ロックンロール」として楽しんできた。トップを飾る「No Action」の疾走感、景気のいいアッパーな曲かと思いきやどうやら自慰行為を歌っているらしい「Pump It Up」、キーボードがファンキーな「You Belong To Me」、これぞコステロ節なバラード「Littele Triggers」と、名曲ぞろい! バックを固めるジ・アトラクションズもノリノリ。「今年の最新モデル」というアルバム・タイトルもカッコいい。コステロの全アルバムのなかでも五指に入る傑作である。


さて、ヘッダーの画像は、大学生のころに買った、このアルバムのCDと、AppleMusicのページ。お気づきだろうか? ジャケの写真が違う。実は、このCDはアメリカ盤。当時はタワーレコードを利用していたんだけど、アメリカ盤しか流通してなかった(はず)。


改めてAppleMusicで聴いてみると、CDには収録されていなかった「(I Don’t Want To Go To) Chelsea」が入っとる! 最後に収録されていた「Radio Radio」が入ってない! 「五指に入る傑作」とか言いながら、実は長年、オリジナルではなく編集された音源を聴いてきたわけだ。ラジオを除くと、CDやレコードといったフィジカルでしか、音楽を聴く手段がなかった時代、国によって収録曲が一部異なることはよくあることだったんだけど、それを調べる術がなかった。インターネットなんてないし。


タイムスリップして、大学生の自分の肩を優しくたたいて言ってあげたい。「イギリス盤を買え」


なにはともあれ、「(I Don’t Want To Go To) Chelsea」が入っていても入っていなくても、僕の青春を彩った傑作アルバムであることは間違いない。ということで・・・・・・




おっちゃん的名盤度(5つ星が満点):★★★★★


Attractions~DISTANCE RELEASE TOUR@福岡(栗田善太郎氏によるライブレポ)






長谷川 和芳
長谷川 和芳

長谷川 和芳 KAZUYOSHI HASEGAWA

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1969年、福岡県ディープエリア筑豊生まれ。開店休業中の雑誌編集者。九州ウォーカー、某弱小エアラインの機内誌の編集長を経て、なぜか今は京都の旅館の運営が業務の中心。あと染織作家である家人の話し相手など。