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山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.20〜アナログ盤というレジスタンス

山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.20〜アナログ盤というレジスタンス

 G.Yokoの夢はアナログ盤をリリースすることだった。それは叶えてやりたい、と思った。


 僕はアナログ盤をリリースした最後の世代。とはいえ、それはアマチュア時代の話で プロになってからの30年超はずっとCDだった。


 CDがその役目を終え、世はサブスクに移行していく。でもそこに対する興味はいまひとつ湧いてこない。搾取の構図としてヒドすぎるし、音も悪いし、イヤフォンと携帯で音楽を聴きたくない。制作する立場から言えば、アーティストに分配されるスズメの涙みたいな金で、とても音楽は創れない。では、儲けているのは誰か?それはいつもの図式。イマジンしてほしい。


 この状況が続けば、若者が音楽に携わることがもっと難しくなるだろう。つまり未来に於いて、音楽は死滅の道を辿る。


 トシをとると、酸いも甘いも理解できるようになる。便利の不便さが身に沁みてくる。そして不便なことが愛おしく感じられる。バイクやアナログ盤はそのツートップかな。笑


 こうやって30年ぶりに僕はアナログ盤の制作に復帰する。以前と違うのは、経験というスキルを身につけているということ。インディペンダントな人間として。それはデカい。


 溢れるほどの愛を注いだ。アナログ盤は円の中心に近づくほど音が劣化する。収録分数も限られる。だから、曲順を変え、マスタリングには1週間を費やし、カッティングは2度やりなおし、アートワークはアナログ独自のもの、プレスは信頼の日本製。やりたいことを全力でやった。NO REGRETS。


 ありったけの情熱を込めたものを、できるだけカジュアルな価格で提供したかった。アナログ盤は富裕層の道楽だけじゃないんだ。


 レジスタンスなんだ。誰も傷つけない。屈しないよ。

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山口洋
山口洋

山口洋 HIROSHI YAMAGUCHI

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ヴォーカリスト、ギタリスト、ソングライター、プロデューサー、そしてランナーにして、スノーボーダー。

1979年、福岡にてヒートウェイヴを結成。1990年、上京しメジャーデビュー。現メンバーは山口洋(vo.g)、池畑潤二(ds)、細海魚(key)。山口洋がソロツアーの旅で新たな曲をつくってバンドに持ち帰るというスタイルで、ほぼ全曲の作詞と作曲を担当する。1995年の阪神・淡路大震災後、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)と「満月の夕」を共作。2011年の東日本大震災直後からは「MY LIFE IS MY MESSAGE」プロジェクトのさまざまな活動により、福島県の相馬をピンポイントで応援し続けている。仲井戸麗市、佐野元春、遠藤ミチロウ、矢井田瞳ら国内のミュージシャン、ドーナル・ラニー、キーラらアイルランドを代表するミュージシャンとの共演も多い。
http://no-regrets.jp