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酒場SAKABA

ラーメン記者の謹製 快麺伝 Vol.5

ラーメン記者の謹製 快麺伝 Vol.5

久しぶりに出くわしました。入店するなり「勝手に注文してくる系」の店! しかもビール、もちろん瓶。席に着くなり「まずビールいきましょか?」とくる。当然二つ返事ですよ。「お願いします」って。


 今回の店は大阪の「豚足のかどや」です。場所は難波駅から歩いて数分のところ。繁華街から一歩入るだけで猥雑とした一画があらわれます。かどやという屋号は日本に数多くあれど、角にないかどやは初めてでした。




 通せんぼするかのように、ビールケースが高く積まれた入り口から入ると店は大盛況。カウンター席に座って、バッグを床に置こうかとしましたが、床は灰皿兼用だったので膝に置きます。そこで冒頭の「まずビールでいきましょか?」


 しばし待ってビールとともにやって来たのはキャベツ、辛味噌にネギが載った小皿、そしてピンク色のおしぼり(これは豚足を食べる時のお手拭きだと後でわかりました)。


 まずはと生センマイと串(ハラミ)を頼んでビールをあおります。センマイはコリコリした食感が心地よく、ハラミは柔らかくてジューシー。肉の合間にネギタレにつけたキャベツをかじっていると、あっという間に瓶が空に。一級酒(350円)の燗つけに移行です。(ちなみに二級酒は300円、50円贅沢します)


 酒がなくなる頃に追加の酒(また一級酒!)と、いよいよメーンディッシュの豚足を注文しました。


 九州では焼き豚足ばかりですが、ここは茹で豚足です。運ばれてきた豚足は熱々で、こちらもネギタレにつけつつガブリといきます。やわやわ、ほろほろの食感がたまりません。冷えると残念なので、おしぼりで手を拭きつつ一気に食べ尽くしましょう。


 振り返ると、初めて出会った「勝手に注文してくる系」の店は、学生の頃に行った横浜・野毛の「三陽」だったでしょうか。そこは入るなり、昼間だろうがなんだろうが餃子とビールを勧めてきます。当然、昼だろうがなんだろうが餃子とビールを注文します。


 断っておきますが、どんな店でも勝手に注文されてオーケーな訳ではありません。「勝手に注文してきても許される系」と言った方がいいでしょうか。その共通点を考えてみると、店のキャラクターですかね。ちなみに三陽の店構えはこんな感じ!



 よくよく思い起こせば、昔の「元祖長浜屋」も「勝手に注文してくる系」でした。一人で入店すれば「一杯!」、カップルは「二杯!」と、店員の兄さんの勢いあるかけ声が忘れられません。


 食べ物メニューが一つしかないので当然といえば当然ですが、ラーメン食べずに、替え肉つつきながら焼酎あおっている客もいるから全員が入店と同時にラーメンを注文されるわけではなかったのでしょう。


 懐かしいな~。そういえば当時の元祖も床が灰皿だったし、半替え玉したら、一玉茹でて、半分をおもむろに床に捨ててたな~。いろいろおもしろい元祖、この前行ったら、子供用の器まで用意されていました。しかも大人用のミニチュア版で有田焼! 妙なところにこだわるのも、愛すべき店のキャラクターなんです。




ラーメン記者、九州をすする!小川祥平著

小川 祥平
小川 祥平

小川 祥平 SHOHEY OGAWA

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1977年生まれ。ラーメン、うどん、カレー、酒場が好物。著書に「ラーメン記者、九州をすする!」。フリーペーパー「ぐらんざ」で「福岡麺人生」を連載中。KBCラジオ「小林徹夫のアサデス。ラジオ」内コーナーで月1回ラーメンを語る。