酒場SAKABA
ロケハンしときましたー! Vol.30 「宇ち多゛(うちだ)」東京・立石
巷のヴァイブス溢れる酒場を、皆さんに代わってわたくしナカムライダーが勝手にロケハンしてきました!
遠かったり用事なかったりで行く機会ないかもですけど、もしもの場合はぜひ参考にしてください。
見た目だけ整えたようなフニャちん酒場はスルーします。
30軒目 「宇ち多゛」東京・立石
「宇ち入り」って言葉、ご存知でしょうか?
討ち入りとは少し字が違いますけど、東京大衆酒場界のラスボスとも言えるここ立石の宇ち多゛に飲みに行くことを、店名の「宇」の字を使って「宇ち入り」と表現する人がいます。
ただ飲みに行くだけなのに、そのことをわざわざ忠臣蔵の討ち入りになぞらえて「宇ち入り」と言い表すのには相応の理由があると思うんですね。
つまり討ち入りに向かうかの如く、ある一定の覚悟が必要なんです。
宇ち多゛に入店するという覚悟。
宇ち多゛で酒を飲むという覚悟。
酒を飲みに行くだけなのに覚悟がいるだなんて、馬鹿げてますか?
でも、行けば気づいてもらえるはずです。
張り詰めたような独特な緊張感が、店内、さらには店の周囲にもうっすらと漂い、まさに宇ち入りと呼ばれる所以を実感いただけると思います。
↑の写真、これすでに開店して1時間半ぐらい経った後なんですが、まだまだ全然並んでます。
写ってませんけど向こうまでズラーっと並んでて、列が折り返してきてます。
この時はたしか30人目ぐらいに並んで、でも30分後くらいには入れたような気がします。
先頭のお客さんたちは、いざ宇ち入らん!と店内を睨みつけ、店員さんの出す合図を見逃さまいと懸命です(大げさ)。
開店は平日14時で、売り切れ等あれば早仕舞い、売り切れがなくても19時前後には閉まります。
昼飲みできます!って謳ってるお店がよくありますけど、こちら昼飲みしかできません。
昼飲みのみ!
↑これは1年半ぐらい前に行った時の写真です。
看板とこに貼られてるステッカーがまだ全然少ないですね。
この時は寒い時期だったので、並んでる間すごく凍えた記憶があるんですが、今回は暑い日でホント汗だくでした。
古い商店街の路地みたいな所に並ぶんですが、天井が明かり取りのために半透明の塩ビの波板みたいなのになってて、そこに日が当たって路地がサンルームみたいになってるわけです。
こんな感じ。
奥にみんな並んでます。
風は全然通らないし、場合によっては熱中症になる人も出てくるのでは?と心配になります。
まずは並ぶことにすら、多少の覚悟がいります。笑
京成立石駅のあたりは近年再開発されてしまってまして、雰囲気抜群だった呑んべ横丁をはじめ、江戸っ子・鳥房・蘭州などいくつもの名店が去年夏頃に店を閉じたり移転を余儀なくされました。
写真の立石駅通り商店街の方はまだ残ってますが、この写真を撮ってる背中側はもうズラッと無機質な防護壁。
嘘みたいに何も無くなって、ただ白い壁がツツーっと無表情に並んでるだけの景色に変わってました。
立石駅通り商店街を右に曲がると、宇ち多゛が並ぶ立石仲見世商店街です。
この令和の時代にほんとコレ本物ですか?って感じの面構えでたまりませんが、なんと大変残念な事に、こちらの仲見世商店街も2027年着工予定の再開発エリアとなってるんです。。
この商店街だけではありません。
京成立石駅南口西地区と呼ばれるこのあたり一帯には、写真に映ってるお惣菜屋のトリゼン、立喰い寿司の栄寿司、おでん種で人気の丸忠蒲鉾店、大衆酒場ときわ、もつ焼きミツワ、そしてもちろんこの宇ち多゛もその再開発エリアに入ってしまってるんです。
再開発の後、このあたりには駅直結のタワマンが建つそうです。
なにがタワマンだ!
1階から5階ぐらいまで、これまで立石を支えて来てくれた商店たちに明け渡せーっ!!!
ま、立石に特に何のゆかりもない、しかも福岡に住んでるただの酒場好きが文句言ったところで、何も誰にも響かないと思いますので、文句言うのはこれぐらいにしまして、さぁいざ宇ち入り!
列に並んで先頭が近づいてくると現れるこちらの注意書き、よく読んでから入店してくださいね。
特にふたつめの一文、熟読願います。
「既にアルコール類を飲まれた方 ご遠慮ください」
つまり、シラフで一軒目に来いって意味です。
一軒目を義務付けられてます。
最近巷でよく見掛ける一軒め酒場ってチェーン居酒屋ありますけど、あそこにだってそんなルール無いです。
ま、一軒め酒場にリアルに一軒目で行くことほぼ無いんですけど。
宇ち多゛にはシラフで入店というのがルールというか、いわゆる「掟」のひとつですので、どうぞ遵守なさって下さい。
僕はまだ見た事ないけど、実際に追い出されてるおじさんいるそうなので。
入店して席に座ると同時ぐらいに、飲み物のオーダーを聞かれます。
座って、えーっととか言って店内をキョロキョロしてると店員さん無視してどこか行ってしまいますので、入る前に決めておいて下さい。
僕はまず瓶ビールをいただきました。
生ビールはありません。
そして、ひとつ目のオーダーがこちら「オシンコショウガノッケテオス」です。
はい?
なんて?
って感じの方もいらっしゃるとは思いますが、こちらのメニューは「オシンコショウガノッケテオス」と言うと出てきます。
分かりやすく表記すると「お新香生姜乗っけてお酢」となります。
でも「お新香生姜乗っけてお酢」って感じの言い方じゃないんですよねぇ。。
「はい、オシンコショウガノッケテオスーッ!!」みたいな呪文が早口で飛び交ってるイメージ。
きゅうりがいらない場合は「ダイコンショウガノッケテオス」で、きゅうり無くなります。
たぶんきゅうりの方だけではオーダー出来ないんだと思います。
「ショウガノッケテ」を言うと、通常より紅生姜が多めに乗るんですが、まったく紅生姜がいらない場合は何てオーダーするのか分かりません。
「ショウガナシデ」とか言うのかな。
ま、細かく言い出すとすごく多岐に渡るので、おおまかにご紹介しますね。
そして「煮込み」。
これは普通に意味分かりますね、あの煮込みです。笑
東京五大煮込みにも数えられるこちらの煮込みは、甘みが少なく酒のアテに特化した感じで名物の梅割りによく合います。
こちらがその「梅割り」。
25度の宝焼酎をコップなみなみ注いで、そこに黄金色の梅シロップをチュッと差した飲み物で、ほぼ宝焼酎の生(き)だと思って下さい。
色が付いてる分すこーし梅の甘みがあるような気もしますが、ほぼ宝焼酎です。
店内ほとんどの方がこの梅割りを飲んでるイメージですが、葡萄割りって種類もあります。
こちらは「タンナマ」。
まぁナマとは言ってもボイルされてます。
醤油タレがかかってて歯ごたえも良くって、すごく美味しい。
「タンナマアカイトコロ」っていう赤い部分多めの通っぽいオーダーもあるんですが、僕みたいなひよっ子にはそんなオーダー出来ません。
つづいて「カシラタレヨクヤキ」。
ヨクヤキってのはまぁお分かりでしょうが、よく焼いてって事です。
ウェルダン。
では、逆にあまり焼かないでってのは何と言うでしょう!?
アマヤキ(あまり焼かないで)?
カルヤキ(軽めに焼いて)?
スコヤキ(少しだけ焼いて)?
正解は、ワカヤキ(若焼き)でしたー。
選択肢に入ってなくてスイマセン。
串に刺さった黒いグネッた物体が見えると思いますが、僕はこれがたまらなく大好きです。
ううーーーまいッッ!!!
こちら「シロタレヨクヤキ」です。
シロをタレでよく焼いたもの。
シロってのは大腸で、もつ焼き屋とか焼肉屋でも見ると思いますけど、なんかグニャってしてて臭みもあったりしてどうなの?って方も多いですよね。
宇ち多゛のシロはホントに臭みも無くってサクッと噛み切れるし、マジ美味い。
サイコー。
「ハツシオ」です。
ハツは焼き鳥屋でも普通に見ますけど、これは鳥じゃなくって豚ハツ。
サイズもさることながら肉感がすごくって、噛むと中からジュウジュウと肉汁が溢れ出てきます。
あ、普通の焼き加減でよければ、ヨクヤキとかワカヤキって言わなくって大丈夫です。
2杯目の梅割り。
焼酎には杯数制限があって、トータル5杯半までです。
でも制限に達してなくても、明らかに酔ってたり喋り声が大きかったりすると店員さんから「はい、もう次半分ねー」みたいに言われて、強制終了させられます。
半分ってのはすこし少なめに注がれる最後の一杯で、もうおかわりはできません。
ちなみに食べ終わったお皿は、お会計時に枚数を数えられますので下げられずテーブルに残ったままです。
皿が増えると元々狭いテーブルがさらに狭くなるので、空いたら重ねておかないと怒られます。
あと、テーブルに余計な物を置いたり肘をついてると、テーブルが狭くなるので怒られます。
飲んでると気分良くなって、つい大声を出して喋っちゃいますけど、すると店員さんに「注文聞こえないから静かにして!」と怒られます。
入店時にカバンは肩から外して前に持って入らないと「カバン肩から外して!」と大声で怒られます。
続いて「カシラスヤキオス」です。
もうお分かりかもですが「カシラ素焼きお酢」ですね。
素焼きは塩でもタレでもなく、そのまま焼いて醤油だれをかけて出てきますので、それにお酢をかけると少しポン酢っぽい風味で食べられます。
普通より軽めに焼いて欲しい時は「カシラスヤキワカヤキオス」となります。
さ、結構食べたので、ラスト一品何食べよー?と考えましたが、やっぱり好きなもの食べたいし。。
2皿目の「シロタレヨクヤキ」。
あー、やっぱ最高。
この焦げが香ばしくって芳しくってサクッとしててたまらんのです。
はぁ〜、飲みこみたくない。
ずっと噛んでたい。。。
カシラ食べてる時におかわりした3杯目の梅割りをキュッと飲んで、さぁお会計。
実は、はじめに頼んだ瓶ビールを除き、「オシンコショウガノッケテオス」からラストの「シロタレヨクヤキ」まで、梅割りも何でも全品250円均一なんです。
串1本につきじゃないですよ、一皿でですよ。
ちょっと前までは、なんと全品200円均一だったんです!
この味でこの安さ、とんでもないコストパフォーマンスです。
外に出たら、まだ10人ほど並んでました。
すごい人気。
でも、あの美味さでこの安さなら、そりゃ並びますよねぇ。
次第に品切れも出てくるだろうけど、並びも短くなってくるし遅めの宇ち入りってのもアリかもなぁ。
さて、まだぜんぜん日も高いけど、二軒目どこ行こうかなぁ。
立石楽しんじゃおー。
宇ち多゛
住 所:東京都葛飾区立石1-18-8仲見世商店街
最寄駅:京成押上線 京成立石駅
営業時間:14:00~19:00(売り切れ次第終了)
定休日:日・祝