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酒場SAKABA

ラーメン記者の謹製 快麺伝 Vol.4

ラーメン記者の謹製 快麺伝 Vol.4

福岡では身近すぎて屋台にいくことはあまりないけれど、店員やほかの客との距離の近さを含めた空気感は嫌いじゃない。


 だからなのか、よその土地を訪れて屋台なんぞを見つけてしまうと思わず入ってしまう。7、8年ほど前だろうか。大阪で偶然通りかかって以来、時間が合えば行くのが「とよ」。久しぶりに寄ってきました。


 最寄は京橋という駅で、飲み屋が立ち並ぶ賑やかな街。徒歩1、2分という駅チカの立地ながら、裏手に墓地があるなど、なんとも言えないディープな雰囲気の一画に店はある。


 屋台といっても福岡のそれとは全く違う。まず、立ち飲みだし、広さも福岡の屋台4、5軒分くらいある。電気を引いてるのはもちろんのこと、よく見ると厨房には冷蔵庫があるし、食洗機もある。さらに注意してみると、瞬間湯沸かし器まで。それだけじゃ無くて、トイレも併設している上に、それが水洗なんです。


 前にその理由を聞いたことがある。返ってきた答えは「屋台風の店舗だから」。公道上に一時的に仮設するのが福岡の屋台なら、こちらは私有地で設備などは常設されている。


 名物大将の筑元豊次さんが借りていた駐車場に軽トラを止めて営業したのが始まりで、徐々に規模を拡大していったという。



 メニューは海鮮もの中心。ただ一品あたりの量がやたらと多いのでマグロとイクラ、ウニが載ったやつと、マグロの炙りくらいしか頼んだことがないし、それだけで十分です。


 料理だけでなく、大将も豪快。この日は既に早上がりをしていたが、いつもよくしゃべり(何言っているかあまり聞き取れないけど)、ガスバーナーでマグロを炙るパフォーマンスで客を盛り上げる。関西の方かと思いきや、喜界島出身で、集団就職で大阪に出てきたというから九州人として妙に親近感も湧く。


 週4日の営業に限る。いつもあふれるくらいの客でにぎわってる。何かと量が多いので飲んでいると同じテーブルになった人からお裾分けもあるし、その逆もある。自然に会話が弾むのもいいし、味も良ければ、お値段も手頃。まさに庶民も味方である。


 瓶ビールを飲み干し、なみなみ注がれた焼酎ロック(喜界島の黒糖焼酎!)を何杯も空にした。酔いも回ったところでふと夜空を見上げると、40階はあろうかというタワーマンションが堂々とそびえていた。


 「大将はあそこの最上階に住んでるよ」。常連客が教えてくれた。


 そりゃ儲けてますよね~。



ラーメン記者、九州をすする!小川祥平著

小川 祥平
小川 祥平

小川 祥平 SHOHEY OGAWA

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1977年生まれ。ラーメン、うどん、カレー、酒場が好物。著書に「ラーメン記者、九州をすする!」。フリーペーパー「ぐらんざ」で「福岡麺人生」を連載中。KBCラジオ「小林徹夫のアサデス。ラジオ」内コーナーで月1回ラーメンを語る。