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山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.23〜Still Life with my GTR 

山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.23〜Still Life with my GTR 

 ミュージシャンに限った話じゃないけど、コロナにはじゅうぶんに苦しめられた。なんてたって、こっちは旅と蜜が主な仕事だから。足をもがれたバッタのようだった。


 バイクに乗ったり、スケボーに乗ったり、いろんな反撃は試みたけれど、コロナの特質はいいインスピレーションを与えてくれないところにあって、人々を分断し続ける。そして、それは言葉が浮かばなくなるという症状でオレにも現れ始める。


 うーん。どうしたもんだか。


 ところが。


 オレにはギターという武器があった。14歳で始めて43年。この流木にしがみついて生きてきた。年季が違う。


 なにも考えず、湧いてきたものをギターを使って録音することにした。作業を開始したのが昨年の11月4日。ほぼ一年の間に録音された断片、無数。敢えて個々にタイトルはつけない。ファイルには日付が記されているだけ。


 決めたことがいくつかある。決して歌わない、最大2分、ドラムは叩かない。そのくらいの縛りがなければ、習性で完璧なものを創ろうとしてしまう。未完成ゆえの余白には、オーディエンスが自身の暮らしやヴィジョンを重ねることができるはずだ。


 自分の主張を消すっていう新しい作業だった。オレは時代の受信機。ただ受信しているだけだとBADすぎるから、ポジティヴなものに脳内で変換する作業。


 コロナに少しだけ明るい兆しが見えてきて、そろそろ作業を中断しようと思った。もう十分に要素はあるし、次のHEATWAVEの源は音楽で満ちている。ならば次に進もう。


 影も形もないときから、タイトルと、もっと言えばジャケットまで決まっていた不思議なアルバム。その名も「Still Life with my GTR」。


 ギターによるコロナの日々の記録。みんなの日々のサウンドトラックになったなら、こんなに嬉しいことはない。


HEATWAVE LIVE 2021 "Still Life with my GTR"

日程:2021年12月26日(日)
時間:OPEN 18:15 / START 19:00
会場:渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
チケット:全自由・整理番号付き・¥7,000(D代別)
発売日:12月04日(土)昼12:00

本公演に関するお問い合わせ
SOGO TOKYO 電話 03-3405-9999


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山口洋
山口洋

山口洋 HIROSHI YAMAGUCHI

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ヴォーカリスト、ギタリスト、ソングライター、プロデューサー、そしてランナーにして、スノーボーダー。

1979年、福岡にてヒートウェイヴを結成。1990年、上京しメジャーデビュー。現メンバーは山口洋(vo.g)、池畑潤二(ds)、細海魚(key)。山口洋がソロツアーの旅で新たな曲をつくってバンドに持ち帰るというスタイルで、ほぼ全曲の作詞と作曲を担当する。1995年の阪神・淡路大震災後、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)と「満月の夕」を共作。2011年の東日本大震災直後からは「MY LIFE IS MY MESSAGE」プロジェクトのさまざまな活動により、福島県の相馬をピンポイントで応援し続けている。仲井戸麗市、佐野元春、遠藤ミチロウ、矢井田瞳ら国内のミュージシャン、ドーナル・ラニー、キーラらアイルランドを代表するミュージシャンとの共演も多い。
http://no-regrets.jp