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山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.26〜元気だしていこう!

山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.26〜元気だしていこう!

ある日の日記から


 「超個人的」な想いを書くけど、パブリックな道に通じることを読者が好きに取捨選択してくれれば。


 オレは南の育ちだから雪山に行く人はみんなブルジョアだと思ってた。バブル期のスキーブームなんてまるで関係なかったしね。


 でも、それはオレが間違ってた。いつ、それを知ったかは後述するとして。


 雪山に行くなら。


 危険が伴うのを覚悟した上で、一人がいい。安易には勧めないけど、一人がいい。まれにそういう人、見かけるけど(昨日若い女性でいたな)、同じ匂い(臭い、かも)がするから放っておきます。


 一人って独りではないのよ。ぜんぜん独りじゃない。


 朝早くでかけて、空いた道を走っていくうちにいい音楽と相まってこころが澄んでくる。この時点ですでに、澱みたいなものはアースされていく感覚がある。


 運営と経営に理念があって、ウインタースポーツに敬意を払ってる山がいい。違う言い方で書くなら、「主」がいるところ。山にもれっきとした「主」が居て、ヴァイブスがあって、自分にあったところを探すのがいい。


 J-POPが流れてる山に「主」がいるのを感じたことがない。わかりやすい。それが悪いとは言わないけど、こころの声を聴きに来てるのにどうして音楽を山に流さなければならないのか。とっても判別しやすいポイント。


 つい先日のことだけど、面白そうだなと思っている山があってね。でもなんとなく遠くから眺めてみて「来るな」と言われてる気がした。行こうとした前日に、興味を持っていたセクションで雪崩で人が亡くなった。近寄らなかった。これはメッセージ。亡くなった人が命をかけて教えてくれたこと。


 あっという間に天候とヴァイブスが変わる。昨日は4つのヴァイブスを受けとった。同じ瞬間は2度とない。さっきゴキゲンだったところにすぐに舞い戻っても、あの感覚は2度とやってこない。それがいい。ライヴと同じ。


 どこをどう行くのか。天気を十分に調べて、自分の能力と照らし合わせて熟考して判断する必要があるけど、そこに居させてもらっているときは考えない方がいい。感じてみる。大げさに言えば運命を創っていく感じ。


 帰り道、ものすごい疲労(いい意味でのね)の中で、今日1日を振り返ってみる。どうしてここを選択し、どんな経験をしたのか。そうすると、運命が必然だったことがわかってくる。


 音楽は近未来を予知する能力が必要。考えていたら間に合わない。近未来を予測して、人の音を聞いて無意識に反応する。自分の器は空っぽ。そうしておけば、相手の音が勝手に入ってくる。滑ってる感じはそれによく似てる。思惑は良い結果を産まないことが多い。地球とのセッション。ありとあらゆる雪面との。空っぽにしてたら、たくさんメッセージが送られてくる。


 昨日はパウダー。死ぬほど気持ちよかった。でも、たぶんそれは自分の技量が上がったのではなく、雪質がよかっただけ。でも、確実に「いいイメージ」が身体に刻まれるので、もっと上を目指したくなって、雪のジャンキーが生まれる。


 運動とともに得られるインスピレーションはだいたい正しい。ランニング中、スノーボード中に湧いてきたアイデアはたいていイケてる。なぜって、考えていないから。思考ではなく、インスピレーションとインスピレーションの頂を誰かが(オレもか)勝手に繋ぎ合わせて得られるインスピレーションだから。思考だけではとうていたどり着けない。


 山に着いたら、まずビールを一杯。酔うためではなく、こころと身体をリラックスさせるため。身体も思考も硬くて固いから、ユルませるのにはちょうど良い。


 スキー、45歳。スノーボード、50歳。スケートボード、56歳。大型バイク、56歳。


 アンテナ張って生きてたら、それはたいてい向こうからやってきてくれた。確かに一回見事に骨折したけど、それもまた今となってはいいメッセージだったと思う。


 山にいること。


 たとえば、日本海側と太平洋側がこんなに天候が違うのかって。山陽とか山陰とか。その気候風土の違い。その多様性は素晴らしい。


 もっと言うなら、東京が日本の中心だなんてバカが考えることで、いちばんクソなのはマスコミだけれど、んなもん、自分がいるところが中心だよ。思い上がりではなくね。そこから自分のモノの見方で周りを見渡してみればいい。そうすりゃ、行動に責任が伴ってくる。


 国のせいではない(バカだけど)、政治家のせいではない(無責任だけど)、制度のせいでもない(ヒドいけど)。すべて自分のせいだってこと。自分がどう宇宙に働きかけたかってこと。


 マスコミがどれだけ恐怖を煽って商売しているか、その背後にスポンサーと広告代理店がいて。自然とともに生きてる人の目を見たあとに、政治家の目をテレビで見てみると、なにを志しているのか、すぐわかるよ。


 恐怖はともだちになるべきもので、それに操られちゃいけない。いったい誰が恐怖を撒き散らし、コントロールしているのか判断すべし。


 こっちは山で研ぎ澄まされてるわけだから。


 なにが自分に必要で不要か、瞬時にわかる。これがオレのオミクロンとの向き合い方。正しいかどうか不明だけど、役立ててくれたら嬉しい。ひとつのアイデアとして。


 あ、あとね。たいせつなこと。


 こじれてしまった人間関係。


 誰にでもあると思う。こじらせたかったわけじゃないけど、こじれてしまった関係。こじらせた場合は責任はほとんど自分にある。これは相手のタイミングを尊重して謝罪する。でも、どうにもならないことはこの世にはある。相手はクソ面倒くさいニンゲンだからね(自分もね)。そういう判断ができることもある。とつぜん、だけど、山にいると。


 もうひとつ。


 相撲はぜんぜん詳しくないけど、たとえば「黒姫山」なんて実物を見たときに、あの富士額の「黒姫山」を思い出すんだよね。笑。力士に郷土の山の四股名がついてるのっていいなぁ、とか。


 オレはふてぶてしいくらい強かった「北の湖」と「輪島」、あとがぶり寄りの「荒勢」が好きだったなぁ。大学のとき、友達の家で寝転がって新聞のラテ欄を見てたらワイドショーのところに「荒勢、愛のがぶり寄り」って。好きだったなぁ。


 まぁ、そんな感じです。今夜はたっぷりと降りそうなので、明日最深部に行って帰ります。


 元気だしていこう!


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山口洋
山口洋

山口洋 HIROSHI YAMAGUCHI

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ヴォーカリスト、ギタリスト、ソングライター、プロデューサー、そしてランナーにして、スノーボーダー。

1979年、福岡にてヒートウェイヴを結成。1990年、上京しメジャーデビュー。現メンバーは山口洋(vo.g)、池畑潤二(ds)、細海魚(key)。山口洋がソロツアーの旅で新たな曲をつくってバンドに持ち帰るというスタイルで、ほぼ全曲の作詞と作曲を担当する。1995年の阪神・淡路大震災後、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)と「満月の夕」を共作。2011年の東日本大震災直後からは「MY LIFE IS MY MESSAGE」プロジェクトのさまざまな活動により、福島県の相馬をピンポイントで応援し続けている。仲井戸麗市、佐野元春、遠藤ミチロウ、矢井田瞳ら国内のミュージシャン、ドーナル・ラニー、キーラらアイルランドを代表するミュージシャンとの共演も多い。
http://no-regrets.jp