酒場SAKABA
山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.27〜おじいちゃん
帝国の主がこともあろうに核をちらつかせて隣国を脅すっつー、いったいいつの時代なんだよ、2022年。
結局のところ、ニンゲンの本質は愚かなままで、歴史から何かを学ぶこともなく、いつか自らの愚かさによって滅びるのも、それはしゃーないんじゃないかとこの頃思う。
我らはまだいい。好き勝手に生きてきたし。でも、未来を生きる子供たちになんと詫びたらいいのか、正直オレには言葉が見つからん。
そんなときは深夜に家を出て400キロ、クルマをぶっ飛ばして雪山の最深部に行く。サラサラの雪と山の主しかいない。誰とも話さないし、汚れた目を見ることもない。
自分のこころの声が聞こえてくるまで、ひたすら滑る。考えてたら間に合わないから感じるだけ。それがいい。とてもいい。
以前はね。宿に戻ってくるたび、自分の目が綺麗になっていくのを感じてた。でもこのところ、違う変化が現れる。
晴れた日は跳ね返りの紫外線を浴び、吹雪の日はマイナス10度を超える寒風を顔面で受けとめる。
すると、どうなるか。
出来損ないの植村直己さんを通り越して、顔がおじいちゃんになるのだった。加齢は怖いね。目はね、確かに綺麗にはなってるけど、肌がもはやついていかない。
さすがにこれじゃ人前に出れない、と。恥ずかしながらトリートメントを施してもらう。
生きてることは面倒くさいことの連続。でも、こういうのも面白がって、暮らしを美しくして、誰かを愉快にすることを心がけたいもんだよ。
いつも疑問に思うことがあってね。小学生みたいな発想だけど。もともと、土地なんて誰のものでもないわけじゃん。誰かが縄を張って、これはオレのものだと主張した。で、土地や領土を巡る争いが勃発。オレは思うんだよ。プーチン、それあんたのモノじゃないってば。手放したら、失うモノもないぜ。権力に固執してるあんたは世界で一番ダサい。イージー・ライダー観て、人生やり直すのも悪くないぜ。
不動産って言葉も嫌いだし、金を払って手に入れるって感覚もオレにはまったく理解できない。
亡くなったオレの友人が「誰のものでもない、私は土地を買わないだろう」って名曲を書いたんだけど、雪山でこれはカヴァーに値するな、と気がついたところ。
一回しかない人生。誰の指図も受けず、好きに生きてみるよ。LIFEは実験なんだから。
でね。雪山による自分のおじいちゃん顔を見て。若干エロ顔をしてるのを発見して、ちょっと嬉しかった。目の下にたるんだ目袋があってさ。目袋って英語で「アイバッグ」って言うんだぜ。そも右と左に名前をつけるなら「みくに・れんたろう」か「せるじゅ・げーんずぶる」だな。笑。
枯れるの嫌だし、エロスって生きる力じゃん。
スタジオにお返しします!

ヴォーカリスト、ギタリスト、ソングライター、プロデューサー、そしてランナーにして、スノーボーダー。
1979年、福岡にてヒートウェイヴを結成。1990年、上京しメジャーデビュー。現メンバーは山口洋(vo.g)、池畑潤二(ds)、細海魚(key)。山口洋がソロツアーの旅で新たな曲をつくってバンドに持ち帰るというスタイルで、ほぼ全曲の作詞と作曲を担当する。1995年の阪神・淡路大震災後、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)と「満月の夕」を共作。2011年の東日本大震災直後からは「MY LIFE IS MY MESSAGE」プロジェクトのさまざまな活動により、福島県の相馬をピンポイントで応援し続けている。仲井戸麗市、佐野元春、遠藤ミチロウ、矢井田瞳ら国内のミュージシャン、ドーナル・ラニー、キーラらアイルランドを代表するミュージシャンとの共演も多い。
http://no-regrets.jp