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「ロックンロールハート(スティル・ゴーズオン)」Vol.2

「ロックンロールハート(スティル・ゴーズオン)」Vol.2


「I Am One / Smashing Pumpkins」


10代の私の音楽遍歴をザックリ言いますと、小学6年頃に姉の影響で洋楽を聴き始め(ビルボードTOP10常連さんのマイケルジャクソンやマドンナやデュランデュランやカルチャークラブや)、中学に上がるとメタル旋風(モトリー・クルーとかRATTとか)、高校生でバンドを始めるとパンクやダーティーなロックンロール(自分でギター弾けるヤツ)にドップリ浸かり、どんどんロックが生活の中心となっていきました。

そして晴れて大学生となり、これから最低4年の執行猶予期間のうちになんとかバンドでプロデビューしてやらんと鼻息荒くする百々少年の元に、その後の音楽人生の指針となるよなビッグウエーブがアメリカからやってきます。


それがオルタナティブ、グランジムーブメントでした。


90年代初頭の日本のロックシーンといえば、バンドブームの狂騒はまさにバブルのように数年で泡と消え、ライブハウスから見上げるメジャーの壁は以前より一層高く、より強固なモノとしてそびえ立っておりました。

メジャーの音楽業界から見れば、ライブハウス上がりのロックバンドなんて「言うこと聞かないわ、演奏テキトーだわ、すぐ揉めて解散するわ」で問題物件だらけだと懲りたんでしょう。

「魂売らずにバンドでメシ食えるようになるのは無理かもなぁ」なんて、ちょいとシリアスにならざるを得ない状況でした。


91年、私は大学入学と同時に軽音楽部に入り、嗜好が一気に広がります。

ドアーズ、デビッドボウイ、イギーポップ、ヴェルヴェットアンダーグラウンドなど60’s、70’sのロックレジェンドに傾倒し始めたのもこの頃。

そんなある日の部室で、先輩が買ってきたばかりのCDのビニール封を解き、ラジカセにセットしてプレイボタンを押した。

「なんすかコレ! めっちゃカッコイイ!」

イントロのファズギターが炸裂した瞬間に打ちのめされました。それがリリースされたばかりのスマッシングパンプキンズの1stアルバム『gish』、曲は「I Am One」。

改めて現在の耳でこのアルバムを聴けば暗く淀んでてまだまだ楽曲も洗練されておらず、実際彼らが大ブレイクを果たすのも2nd『Siamese Dream』リリースまで待たねばならんのですが、パンクもメタルもフォークもサイケもプログレもごった煮でぶち込まれたサウンドと、ビリーコーガンの呪術的なささやき声から絶唱シャウトまでエモーショナルに行き来するボーカルは、私のハートに革命を起こすには十分でした。

「オレもこんなバンド組んでやる!」

そう固く誓った18歳の春。


それにしても1991年という年はスマパンの『gish』は出るわ、ニルヴァーナ『Never Mind』は出るわ、レッチリ『ブラッドシュガー・セックスマジック』は出るわで、形骸化していたアメリカのロックバンドシーンが再び息を吹き返す記念すべき年でもありました。英国ではマイブラの『Loveless』も91年リリースすね。

私なんか毎月ロッキンオンやクロスビートなど音楽誌と睨めっこしてはバイト代のほとんどをCD代につぎ込んで大概ビンボーだったなぁ。

それまで古いロックばかり聴くようになっていた私にとっては「同時代に海外ではこんな凄いバンドがどんどん生まれてる!」というワクワクの方がデカかったのです。


そうそう、オルタナやグランジという言葉が一般的になったのはニルヴァーナが社会現象になるほどブレイクした後で、最初、ロッキンオン誌ではアメリカのインディーズシーンから飛び出してきたその辺のバンドを一括りに「殺伐系」と呼んでいました。当時の編集長山崎洋一郎は中でもダイナソーJr.をイチオシしてた。

そして私の記憶が確かならば、『ネヴァーマインド』レコード評の叩き文句は「売れそな殺伐」でした。「なんやねんそれ」と笑いながらアルバムを聴いたら、ささくれ立っとるけどギターリフもメロもシンプルかつ絶妙にキャッチーで「確かにコレは売れそう」と妙に納得させられ。ま、まさかあんなに売れるとは思わなんだが。

それでも私はニルヴァーナよりスマパン派だったんですね。初期スマパンのメロウネスとサイケ風味が大好きで。


ちなみにですが、私がモーサムの前、93年頃に組んだバンドの名前を「SIVA」と言いまして、そのバンドの代表曲のタイトルが「I Am One」でした。

実はコレ、どちらもスマパンの曲のタイトルなんです。

「オマエどんだけスマパンになりたかったんや」って話ですね、お恥ずかしい。(もちろん曲は全く別で一切パクってません)


ちなみついでにもう一つ。当時、SIVAのライブを毎回観に来てくれる10代の可愛らしい女学生3人組がいたんですが、その1人が後のナンバーガールのギター、田渕ひさ子その人でした。

そしてつい先日知ったんですが、彼女が初めてナンバーガールのスタジオリハーサルに顔を出したその日、リハを終えたその足で向かったのもDRUM Be-1で行われたSIVAのライブだったそうで。

私、思い出しました。いつものように原チャリに乗ってBe-1にやって来たヒチャコ(と呼んでました)がこの日はギター持参だったもんで問いかけると、別の友達が「ヒチャコ、ナンバーガールってバンドに入ったんですよ!」と言う。

「お、ギャルバンかー。なら今度ライブ観に行くわ」とニヤつく私にヒチャコは「すいません、ガールは私1人だけなんです」と困った顔で。チャンチャン。


さてさて、話がずいぶん逸れてしまったのでこの辺で終わりにしますが、タイミング良いことに来たる6月21日(金)19:30より清川UTEROにて私主催の「Rock,Talk,Smoke…Drunk?」というトーク&弾き語りツアーの福岡公演がありまして、その日のゲストがあら奇遇、田渕ひさ子さんです。

2人であの頃福岡時代の思い出話を沢山しようと思いますので、興味のある方はぜひ会場へお越しください。あ、ナンバガ再結成のウラ話も根掘り葉掘り掘り下げねばね。イヤがるだろけど無理くりで。

もちろんライブもセッションもバッチリやります。なんか嬉しい乱入者も現れそな予感。お楽しみに。


Rock, Talk, Smoke….Drunk? FUKUOKA詳細







「ロックンロールハート(スティル・ゴーズオン)」Vol.1


百々 和宏
百々 和宏

百々 和宏 KAZUHIRO MOMO

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1972年福岡市生まれ
’97年福岡で結成した真正ロックバンドMO’SOME TONEBENDERのG/Vo。普段は安酒場をローリングする泥酔イスト。酒場紀行文を集めた「泥酔ジャーナル」の著者としてもカルトな人気を誇る。

2012年からソロ活動を開始。3枚のソロアルバムをリリースし、同時にyukihiro(Dr / L’Arc-en-Ciel)、345(Vo, B / 凛として時雨)との新たなバンドgeek sleep sheepを結成。
2018年末からThe eROCKERSにGt.で加入。http://momokazuhiro.com