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山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.30〜「シェイン 世界が愛する厄介者のうた」

山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.30〜「シェイン 世界が愛する厄介者のうた」


 あと一杯ってところで家に帰るのがプロの酔っ払いだって。ともだちが言ってた。


 そんな意味じゃ、シェインもオレも永遠のアマチュア。笑。ゼロかゲロか、そのどちらかしかできない。


 でもシェインは実のところ、とてつもなくナイーブ。頭の回転が速く、文学的才能と、イギリスに移民せざるを得なかったからこその深いアイリッシュネスと、パンクの多大な影響、そして酒とドラッグが渾然一体となってあの素晴らしい曲の数々を生み出していく。


 混沌とデッドパン。シニカルさに隠れた深い人間愛。


 NYに夢を求めて移民した夫婦が、夢破れ、やがて罵り合う名曲「「ニューヨークの夢」Fairytale of New York)」。たぶん、あの曲を知らないアイリッシュはいない。シェインが深く本国で愛されていることに、僕はかの国の懐の深さを見る。


 その国はイングランドによって熾烈なまでに酷い目に遭わされてきた。おまけに飢饉。移民以外に生きのびる方法はなかった。でも彼らはその苦しみや悲しみを、酒を通じて、文学や音楽に転化した。


 そこが僕がアイリッシュネスに惹かれたいちばんの理由だと、かの国に渡ってから理解した。えっと、目には目を、ではなく酒を、だな。笑。


 ヴァン・モリソンとチーフタンズが作ったアルバム「Irish Heartbeat」をきっかけに僕がその国に渡ったように、ポーグスからアイルランドに興味を持った人もいるだろう。


 そんな意味で、この映画では深い「アイリッシュネス」が描かれている。自堕落で自暴自棄で無茶苦茶なシェインを面白おかしく描いた映画ではない。少なくとも僕にとっては。


 なにか惹かれるものがある人はぜひ、映画館へ。




© The Gift Film Limited 2020



『シェイン 世界が愛する厄介者のうた』

 

公開日:63()、渋谷CINE QUINTOほか全国順次公開

 福岡: KBCシネマにて6月24日(金)公開予定

配給:ロングライド

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2020/アメリカ・イギリス・アイルランド/英語/130/1.85ビスタ/カラー/5.1ch 英題:Crock of Gold: A Few Rounds with Shane MacGowan/日本語字幕:髙内朝子/字幕監修:ピーター・バラカン R18

© The Gift Film Limited 2020

配給:ロングライド

 

製作:ジョニー・デップ

監督:ジュリアン・テンプル

出演:シェイン・マガウアン、ジョニー・デップ、ボビー・ギレスピー、モーリス・マガウアン、シヴォーン・マガウアン、ヴィクトリア・メアリー・クラーク、ジェリー・アダムズ、ボノ他

シェイン 世界が愛する厄介者のうた HP


山口洋 (HEATWAVE) solo tour “Still Life with my GTR 2022”


日時 2022年6月17日(金)

会場 福岡ROOMS

前売¥4,500(整理番号付)/当日¥5,000

税込・1ドリンク代別途必要

開場18:00 開演18:30


一般発売2022年4月9日(土)12:00~

ぴあ・ローソン・イープラス


お問合せ SCARLETT PROMOTION

TEL/092-717-7630

https://scarlett.jp 


博多今昔のブルース Vol.29〜”遅れてきたイージーライダー”

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山口洋
山口洋

山口洋 HIROSHI YAMAGUCHI

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ヴォーカリスト、ギタリスト、ソングライター、プロデューサー、そしてランナーにして、スノーボーダー。

1979年、福岡にてヒートウェイヴを結成。1990年、上京しメジャーデビュー。現メンバーは山口洋(vo.g)、池畑潤二(ds)、細海魚(key)。山口洋がソロツアーの旅で新たな曲をつくってバンドに持ち帰るというスタイルで、ほぼ全曲の作詞と作曲を担当する。1995年の阪神・淡路大震災後、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)と「満月の夕」を共作。2011年の東日本大震災直後からは「MY LIFE IS MY MESSAGE」プロジェクトのさまざまな活動により、福島県の相馬をピンポイントで応援し続けている。仲井戸麗市、佐野元春、遠藤ミチロウ、矢井田瞳ら国内のミュージシャン、ドーナル・ラニー、キーラらアイルランドを代表するミュージシャンとの共演も多い。
http://no-regrets.jp