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山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.31〜歌には旅をさせよう
歌を書いて、リリースする。
すると、歌は不特定多数の人のこころという大海に漕ぎ出していく。その先にどんな運命が待っているのか、それは誰にもわからない。
多くは旅の途中で消えてなくなるけれど、稀に思ってもみなかった歌が成長して還ってくることもある。
遅れてきた新人G.Yokoには2つの夢があった。ひとつはアナログ盤をリリースすること。もうひとつはツアーをすること。
叶えてやりたかった。歌には旅をさせた方がいいから。
たった3本、されど3本。
ライヴを重ねるたびに歌は磨かれていった。傍で観ていて、存在の重心も低くなっていった。でも、中空には短編映画のようにあの独特の歌の世界が描かれる。それをオーディエンスが愉しんでいる。素敵な眺めだった。
なによりも。書いた歌が人々の暮らしの中で必要とされていて、自分が直に届けにいくことで、大きな円環を描き始めたことを実感すること。
これはネットではできない。旅することだって労力が必要。来てくれる人たちだって、時間は有限。そうそう福岡公演ではこのサイトの主宰者クリゼンが自ら物販を買ってでてくれてたっけ。
素晴らしい経験を歌に与えてくれて、僕は感謝しかない。かくいう自分だって、デビューした頃はなんの自信もなく、ただ、がむしゃらに取り組んでいただけだったから。
あるときこんな経験をする。
老人福祉施設で働いていたファンが休憩時間に、趣味で僕の歌を歌っていた。いつしかお年寄りたちが歌を覚えてしまった。「いい歌を書いてくれてありがとう」とお年寄りたちが僕の歌を歌うヴィデオが事務所に送られてきたのだった。
人が生きていけるのは「誰かに必要とされていること」が実感できるかどうかにかかっている。その経験はどんな賞よりもアルバムのセールスよりも、僕を励ました。
今の僕があるのは経験のおかげ。
G.Yokoの歌を世界に送り出そうと思ったのは、そうなることがわかっていたからだ。彼女の歌にはその力がある。未知の名曲を書く力もじゅうぶんにある。
多くの人のこころに触れて、きっといろんなことを感じただろう。この先にどんな風景を描いてくれるのか、愉しみにしている。
やっぱり旅はいいね。
ヴォーカリスト、ギタリスト、ソングライター、プロデューサー、そしてランナーにして、スノーボーダー。
1979年、福岡にてヒートウェイヴを結成。1990年、上京しメジャーデビュー。現メンバーは山口洋(vo.g)、池畑潤二(ds)、細海魚(key)。山口洋がソロツアーの旅で新たな曲をつくってバンドに持ち帰るというスタイルで、ほぼ全曲の作詞と作曲を担当する。1995年の阪神・淡路大震災後、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)と「満月の夕」を共作。2011年の東日本大震災直後からは「MY LIFE IS MY MESSAGE」プロジェクトのさまざまな活動により、福島県の相馬をピンポイントで応援し続けている。仲井戸麗市、佐野元春、遠藤ミチロウ、矢井田瞳ら国内のミュージシャン、ドーナル・ラニー、キーラらアイルランドを代表するミュージシャンとの共演も多い。
http://no-regrets.jp
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