Bigmouth WEB MAGAZINE

音楽MUSIC

山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.29〜”遅れてきたイージーライダー”

山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.29〜”遅れてきたイージーライダー”

 コロナにヤラれっぱなしの音楽界。転んでもタダでは起きたくない。


 苦しんできた全国のハコからライヴのオファーが届き始めた。ようやく再開するからぜひ一本目はオレにやってほしい、と。


 んなこと云われたら燃えちゃうじゃんか。


 オレもね。さんざんコロナにはヤラれてきたから、なんだかスペシャルな感じにしたかったのよ。どーしても。


 バイクに荷物をくくりつけてツアーすることを考えてみた。ギターを背中にしょったら冴えないキカイダーだから、それは世界に誇る「宅急便」に任せることにして。


 オレは国外でスノーボードをするので、外国人のライダーにともだちがいる。そんな彼らが日本でスノーボードをして、何に感激したって、口を揃えてこういうんだよね。


 「 TAKKYU-BIN !!」って。雪質じゃないんかい。笑。


 あんなの日本じゃなきゃありえないって。正確無比、時間通りにたいせつに運んでくれる。そりゃ利用しない手はない。


 初日の札幌までは1200キロ。飛行機で行けば1時間半。フェリーで行く手もあるけど、敢えて自力で行くことを選ぶバカ。順調に行っても3日かかる。


 アメリカ大陸を1日に1600キロ走ってたことあるけど、それはクルマなんであって、演奏に差し支えないバイクの移動距離は400キロくらい。


 でもね。桜前線とともに北上してる感じだったんだよ。日本の多様性を肌で感じる。アメリカなんて1600キロ走ってもマクドナルドとデニーズが同じようにあるだけ。でも、この国は30キロも走れば言葉も文化も微妙に変わる。それを画一にしたのはNHKとチェーン店。標準語ってなんだよそれ。みんな訛ってて、それでいいじゃん。津軽とディープ沖縄の言葉は未だ100%わからない。最高だよ。


 新幹線に「のぞみ」が登場したとき。故どんと氏とそれに乗ってた。氏はオレにこう言ったんだよ。


 「これはオレには速すぎる。ニンゲンは単位時間あたりに移動していい距離ってもんがある」って。


 同感だね。名古屋のライヴなんて、東京から日帰りなんてよくある話。最近じゃ大阪の日帰りライヴってのもある。


 オレは嫌だね。


 その街で演奏することには意味がある。街には成り立ちってもんがある。世界じゅう旅してみればよくわかる。だいたい川が真ん中に流れていて、このあたりに飲み屋があって、このあたりはスノッブなエリア、このエリアはちょいと危険、とかね。


 だからできるだけ自力で近づきたいんだよ。簡便に利益だけかっさらって生きていく音楽が人のこころに響くとは思えないんだよ。


 ああ。ステージに立って、ほんとうに生の音楽を渇望していてくれたんだって、実感したよ。拍手の種類が前と違う。ある人にとっては音楽はワクチンよりも有効なんだよ、きっとね。


 そんな人のためにオレは生きる。遅れてきたイージー・ライダーとして。


博多今昔のブルース Vol.28〜”Unknown Pleasures”

山口洋
山口洋

山口洋 HIROSHI YAMAGUCHI

facebook instagram twitter

ヴォーカリスト、ギタリスト、ソングライター、プロデューサー、そしてランナーにして、スノーボーダー。

1979年、福岡にてヒートウェイヴを結成。1990年、上京しメジャーデビュー。現メンバーは山口洋(vo.g)、池畑潤二(ds)、細海魚(key)。山口洋がソロツアーの旅で新たな曲をつくってバンドに持ち帰るというスタイルで、ほぼ全曲の作詞と作曲を担当する。1995年の阪神・淡路大震災後、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)と「満月の夕」を共作。2011年の東日本大震災直後からは「MY LIFE IS MY MESSAGE」プロジェクトのさまざまな活動により、福島県の相馬をピンポイントで応援し続けている。仲井戸麗市、佐野元春、遠藤ミチロウ、矢井田瞳ら国内のミュージシャン、ドーナル・ラニー、キーラらアイルランドを代表するミュージシャンとの共演も多い。
http://no-regrets.jp