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『中洲産業大學音楽学部日高ゼミ』1時限目

『中洲産業大學音楽学部日高ゼミ』1時限目

ある時はPUNKバンドTHE STARBEMS(ザ・スターベムズ)、またある時はネオアコ的なソロUNIT、GALLOW(ガロウ)、そしてまたある時は中洲産業大學の音楽学部教授として熱弁をふるう日高央(ひだかとおる)の通信講座、他ではなかなか学べないマニアックな音楽知識を、諸君に授けていこうと思う……言っておくが就職に有利なことは一切ないし、異性にモテる要素も一切ないムダ知識かも知れんが、音楽は貴殿の人生を豊かにすることだけは断言する!


さて初回の講義内容は……先日、町田ナッティーズで行なった公開授業の様子をお知らせしよう……PUNKロックの歴史を個人的な観点で振り返ってみたので、生徒諸君も気になるところは各自メモるように!


まずPUNKを始めたのは誰だ?

え?ピストルズ?

そんな簡単な答えなわけないだろ!

え~時間もないので単刀直入に言おう。

Richard Hell(リチャード・ヘル)じゃ。

70年代にニューヨークで活動していた彼が最初に、つんのめるような演奏のロックンロール、そしてツンツン・ヘアとビリビリ・シャツを発明したと言われておる。それをセックス・ピストルズの悪徳かつ敏腕マネージャー、マルコム・マクラーレンがイギリスに持ち帰ってピストルズに伝授したというのが定説じゃ。
ピストルズだったジョン・ライドン(当時はジョニー・ロットン)は「金なかったから自分達で安全ピンで服をリメイクしてたんだ」とも主張しておるので、真偽は定かではないがな……ピンと来る主張を信じれば良い、お主がPUNXならばな……フォッフォッフォ。


どのみち当時はハードロックやプログレッシブ・ロックといった、1曲が10分近くの長尺なROCKバンド達がスタジアムで大観衆を集めて、いわゆるスタジアムROCKがメインストリームだったので、その反動でシンプルかつPOPな3ミニッツR&Rが世界同時多発的に巻き起こったというわけじゃな。日本に入ってきたのがピストルズを始めとする「オリジナルPUNK御三家」の方が早かったのも「PUNK=英国」なイメージを決定付けた要因であることも忘れずに。

おっと「PUNK御三家」を知らない人が普通になるのが令和じゃな、おそらく……軽くおさらいしよう、ここはテスト出るどころか基本中の基本常識として話が進んでいくのでメモを取るように!

まずド定番SEX PISTOLS(セックス・ピストルズ)……は有名過ぎるしワシが紹介するまでもないので割愛する!意外に思う生徒諸君も多いだろうが、活動期間はたった3年弱でオリジナル・アルバムもたったの1枚しか出ておらんから、CDでもサブスクでも直ぐに聴けるので確認しておくように。

それよりもピストルズに先駆けてアルバムを発売し、発言やファッションの過激さよりも、白塗りのゴスなイメージやユーモアを交えた楽曲とアティチュードで現在も活動を続けるTHE DAMNED(ザ・ダムド)が重要なので聴きたまえ。

ギターによるイントロ、バンドインした後の2ビート感、ウォ~ウォ~コーラスからの開けるサビまで完璧な1曲じゃろ!?ダムドは初期のアルバムに代表曲が多いし、特にミッシェル・ガン・エレファントがバンド名のモチーフにした3rdアルバムの方が注目されがちだが(もちろん必聴ではあるが)、個人的には英国人らしく一歩間違えばビートルズ?とも思えるPOPさに溢れた5thアルバム『ストロベリーズ』がオススメじゃ。

そしてPUNK御三家の中でも、レゲエやHIP HOPにも肉迫した独自のサウンドはもちろん、アルバムやライブの値段設定をキッズのために安く設定し続けたり、頑なに再結成を拒み続けたストイックなアティチュードで、もはや伝説の域に達しているのがTHE CLASH(ザ・クラッシュ)!

1stアルバムでは性急な8ビートと、市井の人々の哀しみを通じて保守的な政権を真っ向から批判するポリティカルな歌詞に溢れたストレートなPUNKアルバムじゃが(荒削りじゃがPOPで素晴らしい仕上がりなので確認しておくように)、続く2ndや名盤の誉れ高い3rd『ロンドン・コーリング』から、レベル・ミュージックとしてレゲエやHIP HOPに注目し、大胆にもそれを採り入れてPUNKバンドとしての新たな可能性を切り拓いたのじゃ!

そして溢れ出るアイデアを全て吐き出した3枚組の大作4th『サンディニスタ!』ではダブ・ミュージック(レゲエにおけるリミックス手法)にも接近し、紹介した『ロック・ザ・カスバ』収録の5th『コンバット・ロック』ではディスコ・サウンドを取り入れて、現在では当たり前になっているダンス・ミュージックとロックのクロスオーバー、いわゆるダンス・ロックやクラブ・ミュージックの先駆けを発明してもいるのじゃ……クラッシュがいなかったらプロディジーやケミカル・ブラザーズ等、ROCKリスナーとの親和性も高いダンス・アクトは存在しなかったかもしれんのじゃ!

おっと、リアルタイムでクラッシュ後期に間に合ってしまったワシとしては、思い入れが強過ぎてついつい長くなってしまう……この後PUNKロックがどのように発展していくかは、次回の講義に持ち越そう……課題は紹介したアーティストや楽曲を確認しておくこと!感想やレポートを提出したい学生は、このウェブサイト宛にメールするように!それでは生徒諸君、また来週。
(日高央/THE STARBEMS/GALLOW)


写真提供:福岡市

『中洲産業大學音楽学部日高ゼミ』2時限目

日高 央
日高 央

日高 央 TORU HIDAKA

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ザ・スターベムズ。アコUNITガロウや中洲産業大學教授、プロデュース業務も。THE STARBEMS. GALLOW(acoustic project), Nakasu Sangyo Univ professor, Producing & etc.
https://thestarbems.bandcamp.com