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山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.15〜40年目のWALK ON THE WILD SIDE 

山口洋(HEATWAVE) |博多今昔のブルース Vol.15〜40年目のWALK ON THE WILD SIDE 


 非常事態宣言ってやつになって、世界がささくれ立っていて、なんだかとても嫌だった。こんなときだからこそ、人を思いやれないものだろうか?つーか、我々はあの震災から何を学んだのか?


 散歩していれば、マスク警察のおばさんに逮捕され、スーパーでは自粛警察に教育的指導を受ける。


 どんなときでも「人を信じる」ことの方が先。あくまでもオレの中では。騙されたなら、そんな奴を見抜けなかったオレが間抜けなだけ。これは震災から学んだこと。57年の人生で培ったもので、その領域を訳のわからん正義でないがしろにはされたくなかった。


 な、わけで。


 ともだちのアーティストにインスピレーションをもらって、ひとりでレジスタンス(笑)を始めることにした。どこで誰が見てくれてるのかわからないけれど、宇宙空間にいいバイブスを放出するためのインスタライヴ。


 始まりは酒を飲んで、いい感じで家にあるアナログ・レコードをかけるだけ(それはそれでとっても良かった)だったのだが、著作権云々でAIに逮捕される。


 仕方がないから、自分で歌うことにしたが、稀に自分の曲を流しても著作権違反としてAIに最逮捕。おそるべしAI刑事(笑)。ま、奴らは波形でパトロールしてるんだろうから、文句を言っても無駄だ。


 プロジェクターを買って、映像を投影することを思いついた。これなら、AIも食いつけないはずだ。ところがどっこい、自分で撮影した映像ですら、著作権違反だとアラートがしょっちゅう出て、回線を切られるのだった。


 おそるべしSNS。


 続けているうちに、すっかりSNSが嫌いになったけれど、人間不信には陥らない。言いたいやつには言わせておけばいい。いつか真実がオレを自由にする日が来る。それも震災から学んだこと。


 できる限り、浮かんできたアイデアはすべてやってみた。居酒屋でやったりね。でもまぁ、大事なことはオレが愉しむことで、毎週末のオンエアに向けて、一週間いろいろ考えながら生きていたという意味では、これのおかげで正気を保っていたんだと思う。


 結論。なんのバイアスもかからない形で自分でメディアを持った方がいいってこと。俺は言いたいことを言って、歌いたいことを歌って死にたいだけ。


 でもね。どこかで誰かに会うたびに「やってくれて、ありがとう」と言われるのが励みだった。


 震災から10年を迎え、世界は未知のウイルスに振り回され、政府はオリンピックを開催するのに躍起。もはや、僕らはコントみたいな世界に暮らしていると思う。


 だから、WALK ON THE WILD SIDE。40年前に福岡のとある町で聞いたあの日から、なにも変わらず響いてくるものをオレは信じてる。


 3/7に緊急事態宣言は解除されるらしい。なんで、来週は最終回。思い切り好きなことをやってみることにするよ。


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山口洋
山口洋

山口洋 HIROSHI YAMAGUCHI

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ヴォーカリスト、ギタリスト、ソングライター、プロデューサー、そしてランナーにして、スノーボーダー。

1979年、福岡にてヒートウェイヴを結成。1990年、上京しメジャーデビュー。現メンバーは山口洋(vo.g)、池畑潤二(ds)、細海魚(key)。山口洋がソロツアーの旅で新たな曲をつくってバンドに持ち帰るというスタイルで、ほぼ全曲の作詞と作曲を担当する。1995年の阪神・淡路大震災後、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)と「満月の夕」を共作。2011年の東日本大震災直後からは「MY LIFE IS MY MESSAGE」プロジェクトのさまざまな活動により、福島県の相馬をピンポイントで応援し続けている。仲井戸麗市、佐野元春、遠藤ミチロウ、矢井田瞳ら国内のミュージシャン、ドーナル・ラニー、キーラらアイルランドを代表するミュージシャンとの共演も多い。
http://no-regrets.jp