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長谷川和芳 | 転がる石のように名盤100枚斬り 第72回 #29 Led Zeppelin Ⅰ (1969) - LED ZEPPELIN 『レッド・ツェッペリン Ⅰ』 - レッド・ツェッペリン

長谷川和芳 | 転がる石のように名盤100枚斬り 第72回 #29 Led Zeppelin Ⅰ  (1969) - LED ZEPPELIN  『レッド・ツェッペリン Ⅰ』 - レッド・ツェッペリン

ここまで、ローリングストーン誌が選ぶ『史上最も偉大なアルバム』2003発表・2012改訂版の100位以内に、レッド・ツェッペリンのアルバムは3枚がランクインしていた。


79位の『レッド・ツェッペリン』、73位の『フィジカル・グラフィティ』、69位の『レッド・ツェッペリン』だ。天下のツェッペリンの最高傑作と言われる『』が60位台というのは、あまりに低いんじゃないかと、『』のレヴューの末尾に付け加えた。(転がる石のように名盤100枚斬り 第32回レッド・ツェッペリンⅣ - レッド・ツェッペリン)

このアルバムを超える傑作をローリング・ストーン誌が上位に推してくることを予想したのだ。


実は、この時「上にライヴ・アルバムが来るんじゃね?」というのが頭にあった。圧倒的なライヴ・パフォーマンスに定評がある4人だし、ありそうでしょ、



まさかデビュー盤『レッド・ツェッペリン』が『』よりも上に来るなんてねー。



ローリング・ストーン誌が『』のどんな側面を評価したのか、レビューに目を通してみよう。


  •  レッド・ツェッペリンのサウンドはまだ発展途上だが、ジミー・ペイジの抒情的なギター・プレイ、ロバート・プラントの痛烈な魂の咆哮、ジョン・ポール・ジョーンズとジョン・ボーナムのリズム隊がたたみかけるブギーは、驚くほど一つになっている。
  •  ギラギラしたロック””轟音を響かせるパワー・バラード””アシッド風味のフォーク・ブルースといった、1970年代にツェッペリンが生み出すことになるすべてのサウンドの雛形がここにある。


「デビュー・アルバムには、そのアーティストのすべてが詰まっている」ってやつですね。ペイジも「ファースト・アルバムにはすべてがあり、あとはそれをどのように発展させていくかの問題だった」と発言している。



』は、発売当時、全米チャートで最高10位、全英チャートで6位という、イギリスの新人バンドとしては、十分な滑り出しだったわけだけど、全米1位に輝き1300万枚を売り上げた『』と比べると、いささか見劣りする。


当時の評判を調べようとWikipediaのページに目を通したら、次の一文にぶつかった。


ローリング・ストーン誌は「このバンドが伝えている事は、3ヶ月前にジェフ・ベック・グループが表現していた事と変わらず、しかもそれより上手くない」とこき下ろした。


もしや、29位という『』への高評価は、発売当時にローリング・ストーン誌が酷評したことへの罪滅ぼしってこと? 



2020年に発表された『史上最も偉大なアルバム』最新版はどうかと言うと、ツェッペリンのアルバムの最高位は『』の58位。『』は72ランクダウンの101位。ちなみに『』は44ランクダウンの123位で、144位に沈んだ『フィジカル・グラフィティ』と順位が逆転した。


2020年版は白人ロック受難のランキングなので、『』以外は順位を落としているけど、『』が、『』や『フィジカル・グラフィティ』よりも高い評価を得ている状況は変わっていない。


ローリング・ストーン誌の『』に対する後ろめたさはさておき、2021年に『』がどんなふうに響くのか、実際に聴いてみようじゃないの。『』も『』同様、CDを持っているのだけども、一枚通して聞くのは、おそらく十数年ぶり。


9曲、収録時間44分ちょい。久々に聴いてみました。


で、悪くない。・・・・・・というか、結構好きかも。



』のレビューで』はブルース・ロックの進化形なんて、利いたふうな口をきいてしまったけど、このアルバムには、そんな範疇には収まらない魅力がある。(転がる石のように名盤100枚斬り 第22回レッド・ツェッペリンⅡ - レッド・ツェッペリン)


いわゆるブルース・ロックは、3曲目の「ユー・シュック・ミー You Shook Me」と9曲目の「君から離れられない I Can't Quit You Baby」。いずれも古いブルースのカバーだ。この2曲以外は、なんだかヘンテコ。一筋縄じゃいかない。



1曲目の「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ Good Times Bad Times」は、肩慣らしみたいなものか。リラックスした雰囲気だけど、演奏はタダモノではない。特にリズム隊。僕は楽器やらないのでよくわからんが、アマチュアではまともに演奏できないくらいの難易度らしい。


そして、2曲目、アルバムは唐突にクライマックスを迎える。「ゴナ・リーヴ・ユー Babe I'm Gonna Leave You」。ドラマティック。ペイジのギターとボーナムのドラムが絡み合って奈落へと落ちていく。


元はフォーク・ソングで、ジョーン・バエズがカヴァーしたヴァージョンをペイジとプラントが聴いて、「これ俺らもカヴァーしよう」と意気投合したというエピソードがある。


知らんかった。


バエズのヴァージョンもYouTubeで聴いてみた。確かにスパニッシュ風味は共通しているけど、なんてこたぁない湿っぽいフォークでした。これがツェッペリンの手にかかると、似ても似つかぬヘヴィなロック・ナンバーになるんだから驚く。


ブルース・ナンバーを挟んで、唐突に始まるのが、サイケ調で狂気を帯びた雰囲気をもつ「幻惑されて Dazed and Confused」。ドラッグの影響なのか、スリリングで複雑な構成を持つナンバーだ。ステージではこの曲をやり出すと止まらず、最長で40分演奏が続くこともあったそうな。そりゃ、勘弁だな。


レコードだと、ここまでがA面。


B面は明るいコーラスが印象的な「時が来たりて Your Time is Gonna Come」から。ハモンド・オルガンがちょっとおしゃれ。曲の内容は、君が輝く日がいつか来るってことかと思いきや、俺をひでぇ目に合わせやがって、そのうちテメェも同じ目に遭うぜってことらしい。ちょっと病んでるね。


この後は怒涛の展開。唐突にインド、アラブ風味のナンバー「ブラック・マウンテン・サイド Black Mountain Side」に突入したかと思えば、切れ味のいいギターのリフとともに、唐突にもろパンクな「コミュニケイション・ブレイクダウン Communication Breakdown」に煽られ、ブルースのカヴァーで一服した後は、唐突にブギーな「ハウ・メニー・モア・タイムズ How Many More Times」が始まる。これまた、切り貼り感があふれるヘンテコな曲で、まとまりがないまま延々と8分半演奏が続き、割と普通のブルース・ロックに着地しフィニッシュ。



要は、アルバムとしての統一感とか世界観なんてものはないのだ。曲の配置も適当ぽいので、曲が切り替わるたびに「唐突感」が付きまとう。


なんだかそれがいい。もちろん『』ほどの完成度も『』ほどの斬新さにも欠けているんだけど、ファースト・アルバムならではの「おもしろみ」というか「愛嬌」がある。


ヤードバーズで行き詰まっていたジミー・ペイジが、ロバート・プラント、ジョン・ポール・ジョーンズ、ジョン・ボーナムという強力なメンバーと出会って、「あんなこともやりたい、こんなこともやりたい」と夢を膨らませている姿が目に浮かぶ。そして、そのすべてをレコーディングにぶっ込んでできたのが『』なんだろう。


そのギラギラした感じは、後年のどんな傑作にも見られないものだ。


トップ30の評価は、絶対に高過ぎると思うけど、聴く価値は十分。




おっちゃん的名盤度(5つ星が満点):★★★★







長谷川 和芳
長谷川 和芳

長谷川 和芳 KAZUYOSHI HASEGAWA

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1969年、福岡県ディープエリア筑豊生まれ。開店休業中の雑誌編集者。九州ウォーカー、某弱小エアラインの機内誌の編集長を経て、なぜか今は京都の旅館の運営が業務の中心。あと染織作家である家人の話し相手など。